たかが初恋?されど初恋?







「「…ハ、ハァ?!片想い?!」」

『そうなの。清田くんカッコよかったでしょ?準優勝したんだよ。』

「…何があったんなまえ、変な薬でも飲まされたんか?」

「肩が重いてなまえ、それ多分俺の生き霊やわ。肩に乗ってんねん。」

『南くんそれ本気で笑えないから、やめて?』


「肩が重いわけじゃなくて片想いね、恋の方」なんてわざわざ言うなや。わかっとるけどわかりたくないそれを強調すななまえのアホンダラ!俺の渾身のボケを真顔で若干イラつきながら返すのやめや。傷付くやろが。


「い、いつからなん?今ならまだやり直せるかもしれへんで。」

「そやそや!今ならまだ間に合うやんか。俺にしとき?大切な人はすぐそばにおる言うしな。」

『すぐそばにいるからこそ清田くんなんだな。』


あなたにとって大切な人ほどすぐそばにいるんやなかったの?!


なまえ勘弁してくれ…なんやその何かを思い出して顔を赤く染める感じ…信じられへん、こんなんまるでコイスルオトメやんか。ありえへん、俺のなまえはどうしてこうも土屋とかキヨタとか、バスケしてる奴を選ぶん?俺にしとけばええやんな?


あ、あれか…?近すぎて気付けないっちゅーやつか?あぁ、距離が近すぎてな。逆にね。なるほどなるほど。気付くまでに時間が必要なやつやわ。


「ほんまにセンスないわ。初恋はあんの土屋で次はキヨタ?ありえへん。イヌコロやったやんか。」

『待った実理くん、私の初恋は土屋くんじゃないよ?』

「…は?他におったか?…あぁ、俺か。」


…ちょっ、なんやなんやなんやて?!初恋が土屋じゃないやと?そして岸本だと?!ありえへんやんか、それこそ信じられへんやろ!意味わからん、アレ初恋とちゃうんか?その前に誰かと出会ってたっちゅーわけか?!


『違うよ。そもそも土屋くんには恋っていうより憧れみたいなものだったし。』

「そや、そうやんなぁ?!誰や初恋の相手が土屋だとか言い出したんわ。あ、俺か。」


そや。お前や。岸本。…待てや、そうなれば本物の初恋相手は誰やっちゅー話や。え、まさか、清田?


『また適当なこと言ってたな?私の初恋は当然南くんだよ?』

「そや、当然南…み、?みなみってこのミナミか?」

『そうだよ。』


ん?ミナミって…


「…えぇ、ええ?!お、俺?!」

『うん、普通に好きだったよ。バスケ上手だしカッコよかったし。』

「な、何なん今までの告白断ってたのは照れ隠しやったんか?お、俺はいつでも構わへんよ。おいでなまえ、俺の彼女に…」


唖然として固まっている岸本をよそに俺は両腕を広げてなまえに近づいた。ニコニコ笑っている。えぇ…こんな展開ある?!逆告白やん!そうならそうと言ってくれたらよかったやんか。ほんなら俺いつだって髪も切って心の準備しておいたわ。


『ならないよ、南くん。あくまでも昔の話。』

「…む?昔っていつや?俺らまだ十年ちょっとしか生きてへんやんか。そのうちの昔て、いつやねん?」

『見てる世界が狭かったの。隣には実理くんと南くんしかいなかったから。でも今は違うよ。』


でも 今は 違うよ


浮かれていた俺にグサッとナイフみたいに刺さったその言葉。あげるだけあげておいてのこの仕打ち…なんですの?ええ加減にせえよ?にしても、なんやねんその寂しそうな顔は。ハァ、もう俺にどうしてほしいねんなまえはー…


「ほんで、なんでキヨタなん?南はもうええとして今の話や!」

「なんやねん岸本。終わったヤツ扱いすんな。初恋が再熱なんてよくあることやんか。なめとったらヤケドすんで?」

「それはお前や南。勝手にひとりで焦げとけドアホ。」


…ムカツクわほんまに、岸本のやつ…誰がこげカスやねん、まだ焼かれてもないわ。


『清田くんね、あの身長でダンクするの。かっこいいよね?』

「なんやその不純な動機は!」

『不純かな…初めはその程度だったけど、たまたま犬の散歩してるところを見かけたことがあって。』

「なんやなまえ、犬の散歩してる男が好きなんか?」

『違うよ実理くん。ニコニコわんちゃんに話しかけててさ。なんかすっごい可愛くて…母性本能がこう…ね。』


な、なんや…母性本能て…年下やから?あの犬っぽい感じか?どっちにしろ俺にはなさそうや…


結局のところ自分から好きになり、そしてそれに簡単に靡かない清田に余計惹かれたそうだ。振り向かないのなら振り向かせてみせようホトトギス、のやつやな…


なんだか俺は泣けてきたわ。あぁ、なまえ、追われるのに疲れたんやね…昔っからそこにいるだけで男が寄ってきてたもんな。俺とか、俺とか、…俺とか。他にもたくさんおったけど、やっぱりうんざりしてたんやな。好きになるんなら自分から追いかけたい的なやつやろそれ。あぁもう、信じられへんなんで俺やないの…


「キヨタはなまえに想われてることわかっとんのやろ?それなのに進展ないんか?」

『無いよ。最近少しだけ距離が近くなったような気もするけど、誰にでも優しいから。』


嘘やん。こんな可愛い子に想われて喜ばへん男がいるんか?ありえん…キヨタありえへんお前、なんて羨ましいんや。俺も人生やり直して犬の散歩してバスケしてなまえに惚れられたい。


「ふぅん、片想いね。まぁ言わんとしてることはわからんでもないわ。昔から男が寄ってきて大変やったもんな。」

『実理くん、ありがとう。清田くんすごくいい子なんだ。付き合えたらいいけど今は話したり会えたりするだけで嬉しいの。』


だから応援しろってか。黙って見守ってろってか。


「おい、なまえ。キヨタはまぁええけど俺の気持ち考えてくれ。いつかわからへんけど昔なまえと両想いだったって知った俺の気持ちは?」

『南くん、私はバスケが大好きで楽しそうにコートを駆け回る南くんが好きだったの。卑怯なことする人は大嫌いだよ。』














トドメのダイキライ


(キライに大がついた…嘘やん…初恋やろ?な、なんでやぁ!!!)
(生まれ変わって出直してこい、エースキラー)
(…おん。そうするわ。)













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