彼女のフリをしてくれと頼まれたので全力で演じてみる大作戦



▽ もしもの話 全員と同じ高校だったら...番外編。





「頼むよ、その日だけでいいんだ」
『なんでそんな見栄張っただけの嘘に私が付き合わなきゃいけないんだ...』
「なまえしかいねーだろうが!」


何その俺にはお前しか見えない的な告白じみた叫びは。無駄にドキドキさせるな三井さんのくせに〜〜ッ!仕方ないから報酬は何かと問えばどんな願いでも1つだけ叶えてやるって言われた。うーんそれっていいのかな?でも変に決められてるよりもいいかもしれないよね!


『わかりましたよ、やりますよ』
「サンキュー!助かるぜ」


武石中時代の友人達が今度のうちの学園祭に遊びにくるらしいんだけど、どうやらみんな揃って彼女と来るらしく...見栄張って自分にも飛びっきり美人な彼女がいるんだと嘘をついた三井さん本当に呆れるわ...しかも1つ年下でバスケ部のマネージャーしてて敵が多い中俺が射止めたんだと作り話したとか言ってるし...美人がどうかは知らないけれどそれ確実に私じゃないかぁぁああ!


『宮城と沢北と彩子と時間合わせて自由時間に回るつもりだったのでその時抜けて三井さんのとこ来ますね』
「おう助かるぜ、しっかしいつも沢北達といんのな、お前」
『何でですか?悪いですか?』
「いいや別に?他に友達いねーのかと思って」
『うっるさいなぁ!!彼女なんかやらないから』
「何言ってんだよ冗談だろ〜〜」


ガシガシと乱暴に頭を撫でられた。ムカツク本当に〜〜ッ!イライラしてたら頼むよなまえ様なんてニッと笑って三井さんは自分の教室へと戻って行った。あぁもう!私は花形さんに宿題のこと聞こうと思って3年生の階に来たってのに無駄に時間使ったわぁ...


「何してるピョン」
『うぉあっ?!どこから出てきたのピョン吉...』
「なまえ、いい加減そのピョン吉ってのやめるピョン」
『ヒィィィ!すみませんでしたぁあ!』


普通にサラッと言っちゃったよ本人の前で。いやいつも言ってるんだけどあまりの深津さんの怒りのオーラに急いで階段駆け下りる私一体何してるんだよ...もう...





学園祭当日、私のクラスはみんなで冷やしパイン売ってるんだけれどもなんとも売れ行きが良くてこりゃ完売しそうだなぁ〜〜とルンルンで店番してた。沢北がちょいちょいつまみ食いしてるから監視しつつ一緒にモグモグしてたら彩子に怒られたし...厳しいんだからアヤちゃんったら!


「ほら、自由時間になったわよ、行きましょう」
「ヤッター!アヤちゃんと回れるなんて俺...!」
『そんな言い方されたら私と沢北邪魔者みたいじゃんね』
「本当だよなぁ?じゃあ俺らは俺らで別行動する?」
『いいや、断る』
「なんだよなまえ!この流れはそうする!って言うところだろ」


ワーワーうるさいんだ沢北の中途半端坊主め。彩子の隣をメロメロで歩く宮城に呆れつつ片っ端から屋台を回っていく。うわぁ!流川のクラス超人気じゃんと思ったらちょうど流川が店番中でチョコバナナ売ってた。そりゃ人が集まるわ。


「よぉ流川、忙しそうだな」
「...るせーっす」
「人気者は大変ね、クラスのためよ頑張りなさい」
「...うす」


中学の先輩である彩子の声にコクリと頷いた従順な流川。可愛い。フリフリ手を振ると軽く右手をあげて答えてくれた。エイプリルフール共同作戦以降少し距離が縮まったように思います。クフフ。


「あ、三井サンとこの屋台だ」
『大ちゃ〜ん!買いに来たよ〜』
「なまえ!何味にする?奢るよ!」


一生懸命かき氷機を手動で回す大ちゃん、頭にタオル巻いててカッコイイじゃないかぁ!隣で三井さんもガリガリ氷削ってる。ふぅ〜イケメン2人組〜!ブルーハワイでお願いしたらシロップだらけでほぼ青!って感じのかき氷が私の手元に。タダにしてくれたの嬉しいけど隣の沢北に2つ分お金請求してるのバレバレだよ諸星よ...


「結局俺が払うんじゃんか」
『悪いね沢北、ゴチになるよ』
「なまえの分ならいいけどよ、諸星さん俺イチゴにして」
「あ?沢北には全シロップかけてやるから」
「えぇ?!ちょっと!やめて!」


結局めちゃくちゃな色に染まった氷。半泣きの沢北だけどこれはこれで食えるとかいいながら食べてた。ちなみに宮城は彩子と2人で1つにするとか言って本気で断られてたよ。ククク。


「おい、あと10分で俺抜けるから」
『わかりましたよ〜〜そこのトイレの前に集合で』
「おう、頼むぜ」


コソッと三井さんに耳打ちされて了承した。10分後、トイレに行くと3人に告げて私は本当にトイレの前に来たわけだ。汗だくだったはずなのに綺麗さっぱりスッキリとした表情の三井さんが既にウロウロしていた。


「よう。悪いな付き合わせて」
『いいですよ、行きましょう?』


早速武石中の友達が集まってるというところへ行ってみる。途中途中バスケ部のみんながウロウロしてるのを発見して隠れながら向かう私たち忍者か何かなの?


「よーみっちゃん!久しぶり!」
「みっちゃん、元気だったー?」
「おーお前ら!来てくれてサンキューな」


中庭の隅の方で固まってモグモグしてる集団。三井さんに挨拶したあと決まってみんなして私をジッと見る。みんな隣にはどこかの制服を着た彼女を連れているけれどその彼女さんたちまでジッと見てくるからなんだか落ち着かないなぁ。


「あぁ紹介する、俺の彼女。なまえ」
『こんにちは、なまえです』
「どうも...みっちゃんの彼女さん、やばいね」
「うんうん、やばいよ...こりゃすごい」


何がやばいの?!と思っていたらみんなしてさすがみっちゃん!レベル高い!とかなんとか拍手まで起きる事態。普通自分の彼氏が友達の彼女褒めてたら嫌じゃない?でも連れて来られた彼女さん達まで最高に可愛い!とか言って褒めてくれる始末。なにこれ...もう帰りたいよぉ...


「ハハハ、だろ?」
「さすがだよ、美男美女すぎて驚いた」
「こんなに美人がマネージャーなんてやる気に繋がるよな」
「しかも自分の彼女...最高じゃんか」


みんな褒めすぎだから...次々に出てくるお褒めの言葉にそんなに褒められることに慣れていない私は頭が狂いそうだった。だっていつも宗ちゃんに残念な顔だとかもっと上品に笑えとか言われてるんだよ私!!


「ねーねー?みっちゃん知ってる?この噂」
「あ?何だよ?」
「ここの学校さ、学園祭の日に恋人と回ってその後チャペルに行ってキスすると永遠に結ばれるって噂があるんだよ」
「みっちゃん知らないの?まぁでも結構これ一部の人しか知らないんだよね」


な、なんですと?!
確かにうちの学校には奥にチャペルがあるけれども...なんだそれ聞いたことないぞ?!三井さんも初耳らしく顔を赤く染めてポリポリ頭をかいている。


「き、聞いたことねーな...」
「じゃあちょうどよかった、俺ら今から行く所だからみっちゃんも行こうよ!」
「え?!俺も?!」
「ほら、彼女さんも!永遠誓いに行こう?」


うっ、嘘でしょー?!断る理由が思い浮かばなくてグイグイ背中を押されてやってきましたチャペル。確かにカップルが何組か出てきてるし...うわぁ?!マジで言ってるんですかぁ!!


「順番に入っていこう?」
「確かにキスしてんの見られたくねーしな」
「俺は別に平気だけど?」
「俺らは見たくねーよお前のキス!」


ガハハと笑う友達たちをよそに三井さんは深刻そうな顔で悪いと呟いてきた。


「面倒なことになっちまったな...」
『別に大丈夫ですよ、永遠誓ったフリして出てきましょう』
「あ、あぁ...」


みんなしてニヤニヤしてチャペルから出てくるからなんだかもう...!!


「ほら最後、みっちゃん行ってきて」
「あぁ、なまえ、行くぞ」
『う、うん...』


若干の気まずさを感じながらも中には誰もいない。少し奥まで進むと途中で三井さんが立ち止まった。


「お前、永遠誓うなら誰とがいい?」
『誰と...?いや、別にそういう人はいないけど...』
「...俺とだったら、嫌か?」
『三井さん、そんな本気にしなくても、フリでいいんじゃ...』
「せっかくだから、いいだろ」


何がいいのかわからないうちに三井さんの顔がグググンと近付いてきて慌てる私。うわぁ?!ちょっと待った何する気だよ...!!


『み、三井さん...あの...』
「目閉じろ、早く」
『え...いや、あの、...』


ぐっと目を閉じて背中を後ろまで反らせていたら控えめにおでこにフニャッと柔らかい感覚が...ヒィィィ!待て待てこの間はエイプリルフールとか言って流川と宗ちゃんに両頬にキスされたんだぞ!新たな場所にするんじゃないよ!


「...いいだろこれくらい」
『な、何がいいんですかもう...!』
「いつも我慢してやってんだよ」
『意味わかんないですから!』
「ありがたく思えよな、永遠に隣にいてやるんだから」


理不尽にも軽くキレられながらチャペルを後にした。別にそんなこと望んでないし!三井さんのバカ!その後ニヤニヤした友達たちと別れ、なぜかフンッとした態度をとる三井さんとも別れ沢北たちの元へ戻った。もちろん遅いって怒られたけれど。


「...なにその顔ゆでだこでも目指してるの?」
『うっわ、びっくりした...宗ちゃんいつの間に』


体育館で踊ったり歌ったり出し物する人たちを4人で楽しく見ていたら突然後ろから声が聞こえて案の定宗ちゃんが冷え切った顔でそう問いかけてきた。寒、寒すぎるよこの空気。


「フワフワして上の空って感じじゃんバカ丸出し」
『...別に普通だよ、宗ちゃんこそこんなとこで何してるの』
「信長とはぐれたから探してる途中なんだよ」


そんな時ゆでだこ見つけたから来てあげたのって言われて私そんなに顔赤いかなぁ?と思ったけどいちいち確認にトイレに行くのもだるい。


「まぁいい、それと誰かにチャペルに誘われたら断ってね」
『チャペル...?』
「そう、ふざけた噂に振り回されるなよ」


わかった?と念を押されて頷いたけど時すでに遅しだよ、宗ちゃん。



俺と行こうって言えない根性無しの俺はまだ本当の真実を知らない

(もう半分くらい永遠誓ってきたよ...)





Modoru Main Susumu
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