遺伝子編







「はーい、それじゃ今からドリブル教えるのでー」


お手本として俺がドリブルしただけで「おぉー」なんてキラキラした目で見つめられる。うん、すごくやりづらい。


「せんせぇ!やってみる!」

「おー頑張れよー!」










普段は翔陽高校で教師として働きバスケ部の監督となった俺がなぜこんなところでちびっこ相手にバスケを教えているかと言うと地域のイベントだか何だかでついでにバスケ人口増加の為に無料スクールとかなんとか...あぁもうとにかく、小さい子相手に話したりなんて普段ねーし、むさ苦しい部員ばっかり相手にバスケやってるからもうわっかんねーのなんのって。


そんな中、先ほどからやたらと目立つ少年がひとり。


5歳くらいか?背はあまり高くないけれどドリブルがやたらとうまくてぶつぶつ独り言を言いながら真剣に取り組んでいる。そして子供用の高さで用意されたゴールにダンクまがいのことをして笑っている。


.....なかなかのセンス。


「なぁ、バスケ習ってんの?」

「...ぼくね、おうちでれんしゅうしてるの。」


なんと。家にバスケットゴールがあるなんてそりゃ羨ましい環境ですこと。


「そうなのか。上手だな。」

「あのね、せんせい。ぼくね、はなみちみたいになりたいの。」

「....はな...みち...?」


突然出てきたワードに「?」となる俺をよそに目の前のちびっこは楽しそうに「うん!」と頷いている。


「はなみちね、よくあそびにくるの。」

「...家に?」

「うん。それでね、ばすけおしえてくれるの。あきらめたら......しゅーりょー?」


途切れ途切れの言葉に俺は必死になって耳を傾ける。なんだかもうわけわかんねーけど「諦めたら終了」なんて最高にかっこいいじゃん。そのはなみち?いいよ!


「そうか...かっこいい言葉じゃん。」

「あのね、こうやって...ひだりはそえるだけ!」

「....左は添えるだけ?」


そう言って「3点シュー!」なんて遠くからボールを放ったちびっこ。やけに様になっていてさすが家にゴールがあるだけのことはある...なんて思ってしまう。


にしても、左は添えるだけなんてバスケの基礎みたいなことをちゃんと教えてくれるんだと感心していたらちびっこは続けて「あのねあのね!」なんて話しかけてくる。


「はなみちこんっなにおおきいの。」

「おぉー背が高いんだな。」


一生懸命背伸びして手を伸ばして「こんっなに」を披露したちびっこが可愛くて「大きくなれよ」と頭を撫でれば「あ!」と言う。


「それはなみちもやる!おおきくなったなっていいこいいこしてくれるの!」


へぇ...と思いながらも頭を撫で続ければ「えへへ」なんてニコニコ笑っているちびっこ。子供ってやっぱり可愛いな。癒し。育てるのは大変なんだろうけど。


俺ももう30超えたし...いい加減恋愛のひとつやふたつしねーとな...なんてバスケに関係のないことばっかり考えていたらちびっこは必死にドリブルを頑張っていた。マジでなかなかのセンスだぞ。


「いいなー!上手い!」

「えへへ...はなみちみたいになりたいっていったらね、ぱぱよろこんだんだよ!」


そこはパパみたいになりたい、じゃないんだな...なんてこの子の父親を哀れんでいたら聞き捨てならない台詞が耳に届く。


「だからぼくもはなみちみたいにあかいかみのけにしたいの。」

「赤い...髪の毛...?」


赤い髪のはなみち........


ハッとしてちびっこを見やればニコニコ笑っていた。


「もしかして、そのはなみちって...桜木花道?」

「そうだよ、せんせいもはなみちしってるの?」


ぼくのお友達だよ。なんて笑っているけれどどうして桜木と知り合いなのか俺が聞きたいくらいだよ。桜木といえばアメリカから戻ってきてすっかり日本代表常連メンバーとして今は東京のチームだかでプレーしてるはずで.....ちびっこが嘘ついてる...ようには見えないけど.....


「知ってるよ。昔会ったことあるんだ。」

「そうなんだ。すごいねせんせい!」


すごいのは俺じゃねーけどなー...なんて思って笑ってたら「じゃあぱぱのこともしってる?」なんて聞かれてしまった。


「パパ?どんな人?」

「すっごくかっこいいー!すてきー!ってままがいってる。」

「ハハハ、パパとママ仲良いんだな。」


なんだよ、仲良し夫婦かよ。なんて思いながら「いい家庭環境だ」なんて先生ぶったことを考える俺にちびっこはまたしてもサラッと聞き逃せない単語を言い出すのだ。


「よーへーくんかっこいいってままずっといってるの。」

「.....よーへー?!?!」


俺の言葉にちびっこはハッとして「しってるの?」とキラッキラした目をしてくる。


「よ、よーへーって.......水戸洋平?!」

「そうだよ!せんせいすごぉーい!ぱぱのこともしってたぁー!」


わぁー!なんて拍手してくるから何故か俺も一緒になって「わー」と言いながら拍手しちゃいました。


いやいやいや!待って!水戸洋平の息子で桜木花道と友達...そりゃ合ってるわ!正しすぎるよ...ってか...


「...なまえの息子?!」

「せんせいままのこともしってるの?!」

「.........知ってるのよ.........」


もうなんだかわからない俺にちびっこはバンザーイと言いながら手を上げている。つられて俺も無気力状態で万歳すればちびっこは余計に喜んでいた......


「よーへーかっこいいでしょ?ぼくだいすきなの。」

「知ってる....めっちゃかっこいいよな....」

「でしょー!ままもかわいいの。だいすきなの。」

「知ってる....先生も大好きだよ....」

「おんなじだねー!でもままはよーへーのものだよ!」






「.......それも知ってる......悲しいよ........」












無気力状態な俺だけれどなんとか体験会を終えてさっさと家に帰ろう、やけ酒だ!と思っていた頃あのちびっこの「ぱぱー!」の声に目が覚めた。


「おー!迎えに来たぞー!」

「ぱぱー!あのね、せんせいが.......」


ちびっこがそう言って俺をさすと迎えに来た父親こと水戸洋平が「兄貴!」なんて笑っている。


「久しぶりっすね、今日はありがとうございました。」

「いやいやいや...なんつーかもう...ねぇ...」


言葉にならない使えない俺に水戸は「なまえなら元気っすよ」なんて聞いてもないことを言ってくる。


「そうかよ...」

「今日の講師兄貴だって知ってたから俺が勝手に申し込んだんすけどなまえには秘密にしてきたんで。」

「別になんでもいいよ...俺には関係ないさ...」

「なんすか、元気ないっすね。」


笑ってる水戸の隣で「はやくかえろうよー」なんて服を引っ張っているちびっこ。水戸は「そうだなー」なんて答えて俺の方を見た。


「お世話になりました。それじゃ、また。」

「おー...気をつけて帰れよー...」


俺の言葉にちびっこはこっちを見てニコッと笑った。


「せんせい、ありがとうございました!」

「..........!!」


その笑顔があまりになまえにそっくりで背筋がゾクッとしたのは誰にも言わない俺だけの秘密にしておくよ。
















遺伝子レベルで恐ろしい


(...水戸家に呪われてるわ俺....)







九条様 (*^▽^*)

この度は企画に参加していただきありがとうございました(^o^)vそして水戸くんと藤真くんの絡みをリクエストしてもらえて本当に嬉しかったです。。水戸くん大好きで他は眼中にないヒロインちゃんは私もすごく気に入っていて、水戸くんが相手だからこそ藤真くんも太刀打ちできないんだろうななんて思っていました。対峙とのことだったのですが、水戸くんのあの大人っぽい雰囲気に藤真くんのまだまだお子ちゃまな部分が完全に負けてこんな感じになるんじゃないかな...と思い描かせていただきました( ;_; )!描いてる途中も本当に楽しくて永遠と続きが描けそうです。笑
この度は本当にありがとうございました!そしてこれからもよろしくお願いします(^o^)v






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