■ 因縁の対決






「おいなまえ〜、マック寄って行こうぜ!」
『ごめん私今日はパス!また今度ね!』
「あ、おい!......まさか、アイツか?」


花道に知られたら厄介だぞ、なんて騒ぎ出す大楠とチュウだけれど、もう時すでに遅しだと思う。俺の後ろで目の色変えて、教室を出て行くなまえを見つめる花道がいるわけだ。


「おっ......花道、いたのか。」
「今日、なまえは腹痛だとよ...早く良くなるといいな......。」


なんでそんなわっかりやすい嘘つくかな〜?せめてもっとなんかなかったのか...高宮の頭はマジですっからかんだ。


「嘘つくなオメーら...なまえのあの様子じゃ...あんの野猿め......!!!」


この場にいない海南の野猿こと清田を思い浮かべては恐ろしい顔をする花道。そりゃ無理もない。大切な妹を取られたってだけでも兄貴にしてみりゃ悲しいことなんだろう。それに加えてなまえの彼氏があの野猿とくればそりゃもう黙ってないだろうな。だって一番譲りたくない相手だろ?流川と互角ぐらいの立ち位置だろうな、うん。


「俺のなまえをユウワクしやがって...クソッタレ......!!!」
「ちょ、おい!どこ行くんだよ花道!」
「今日という今日は、一発ぶん殴ってやる!!」


双子の兄ってのはどんなんなのか俺には到底わからないことだけど、それでもなまえと花道は性別は違えど心底仲が良く、喧嘩どころか花道がなまえに過保護で甘くて甘くて甘くて甘やかしてばっかりで......。そりゃね?あんな可愛い子が妹だったら俺だって可愛がるしさ?そもそも桜木軍団の紅一点なんて立ち位置ですら可愛くて仕方ねーわけだよ。うん。


「待てよ花道!おい洋平!俺らも行くぞ!」
「ありゃまずい。本気だぞ......。」


大楠に呼ばれてとりあえず教室を出てみたけれどすでに花道の姿はない。急いで門を出れば、少し離れた場所で待ち合わせしている海南の野猿と、遠くから見ても上機嫌なのがわかるなまえが近距離で話しているようだった。そこへ猛スピードで向かうデカい赤頭。うわっ、速すぎる......!


「花道ー!やめとけ!なまえに嫌われるぞ!」
「そうだぞ!お前双子といえど兄貴なんだから!少しは余裕を...!あぁー!!」


大楠とチュウの叫びも虚しく、花道は二人の元に駆け寄った途端、ドンッ!と野猿を押し倒した。勢いで尻もちついた野猿はなんだかキャンキャン吠えながら花道に立ち向かっている。


「んだよ痛えな!!邪魔すんなよ赤毛猿!!」
「テメーこの野猿!なまえに近寄るな!オメーみたいなのに渡すわけねーだろうが!!」
『ねぇほんっとうるさいんだけど。花道黙って。』


俺らが駆け寄った時にはもう花道は一言でバサッと切られており、「なんで...」とか言いながら泣いている。当のなまえはというと、「信長くん大丈夫?」なんて野猿の心配に忙しい。......あ、高宮やっと到着したし。走るの遅すぎ。


「よ、洋平......なまえが取られた......。」


んなこと俺に言われてもなぁ...。


「今に始まったことじゃねーだろ。妹の大事な人なんだから少しは認めてやったらどうなんだ?」
「洋平......お前までそんなこと......」
『洋平の言う通り。ていうか別に認めてもらわなくてもいいもん。じゃあね、花道。』


さっさとデートしたいのか野猿の手を取ってスタスタ歩き始めるなまえ。花道はその場に立ち尽くし、目からは大量に涙が溢れている。


「アイツ...いつもそうなんだ...家でも俺が話してるのに...ずっと携帯ばっかいじって...」
「野猿と連絡取ってんじゃねーの?」
「たまに俺のこと...ノブナガくんって...呼ぶんだ...」
「そりゃまずいな。野猿で頭いっぱいだな。」


チュウがそんなこと言うもんだから、光の速さで花道に頭突きされて、俺が目を向けた時には地面にうずくまっていた。あれれ、痛そうだ。


「あぁ、......やっぱり、腹立ってきた......!!」
「え?なんで?ここは引き下がるべきだろ花道!」
「そうだぞ花道、せっかくのデートなんだからそっとしておこうぜ?」
「うるせー!洋平までそんなこと言うな!俺は負けない!」


途端に元気になってその場を走り去る花道。慌てて追いかければあっという間に二人に追いつき、繋がれた手を引き裂くようにして間に割って入っていた。うわぁ、嫌な兄貴だわ...。


『なっ?!なんなの?!本当に...!』
「なまえ目を覚ませ!こんなののどこがいいんだ教えてくれ!」
『こんなのって何?!信じらんない!』
「おい野猿!テメーどんなキタネー手をつかってなまえをユウワクしたんだ?!」
「あのな赤毛猿!人聞き悪いこと言うなよ!好きになってもらえるように努力したんだよ!わかったか!!」


野猿が大声でそう怒鳴れば花道は途端に大人しくなり一点を見つめたまま固まった。


「......おい、どうしたんだよ?急に静まると怖えーんだけど...?」


心配になったのか野猿がそう問い掛ければ花道は何故だか再び目から涙を溢れさせてふるふる震えている。


「好きなってもらえるように...努力...野猿...お前もカタオモイだったのか...」
「まぁそりゃ...。つーか何だよ?気持ち悪いな、泣くんじゃねーよ!」


何故だかその言葉が胸に響いたらしい花道は「ハルコさんの為に努力を惜しまない天才でいなければ...」なんてボソボソ呟いている。しかし途端にハッとして再び野猿の方を向く。すっかり涙は引っ込んでいる。


「って...!!いかんいかん、キレイな言葉に惑わされるところだった!!」
「ハァ?」
「おのれ野猿...こうやっていろんな言葉でなまえを混乱させたんだな......!!」
「なんでそうなんだよ!だから俺だってなまえちゃんの為に...」
「なまえちゃんとか言うな!!俺のなまえだ!!」
「うるせーな赤毛猿!!俺のだ!俺のなまえちゃんだ!!」


......いつまで続くんだこれ。
ハァ、とため息混じりになまえの方を見やれば、俺らの紅一点はなんだか顔を赤く染めて野猿を見つめている。そして何やらボソボソと呟いていて......。


『”俺の、なまえちゃん”......ヤバイかも。』
「ああぁ!!なまえなんだそのオトメみたいな顔はぁぁあ!!」


そんな様子に気付いた花道がまたあーだこーだ叫び始めて騒がしいけれどなまえはもはや野猿の声以外シャットアウトして届かないらしく、目の前の花道には目もくれず野猿をジッと見つめている。その様子に気付いた野猿が不思議そうに笑いかければボボボッとさらに顔が赤くなり完全に”恋”している乙女の顔になった。いや、可愛い......。最高に可愛いんだけど何その顔。こんな顔させるのが野猿だなんて...確かに少しだけ妬けるかもしれねーな。


『ふふっ、行こっ、信長くん。』


まるで俺らは空気にでもなったかのような扱い。

さらに上機嫌になったなまえが野猿の手を取り歩き出す。もう誰も邪魔なんて出来ない程幸せなオーラを振り撒いて。花道はそんな二人の後ろ姿を見ながらその場に立ち尽くしていた。どんな顔で見てるのか不思議に思い、また涙でも出てんのかと面白半分に覗けば、あまりにも柔らかく、そして優しく、でもどこか寂しげな兄の顔をした花道がいたから、どことなく安心して見て見ぬ振りをしておいた。












兄の心は複雑なのです。

(...洋平、俺、......)
(わかってるよ、花道。お前少し大人になったな。)
(やっぱり野猿許せねーから潰してくる!!)
(......あ、あれ?)




楽しいリクエストありがとうございました(^o^)v!上手く書けてるか不安です( ;_; )( ;_; )感想もらえたら嬉しいです!!




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