僕に堕ちた天使
『やっほ〜、信長!』
「あのなぁ...だから呼び捨てにすんなってば...」
仮にもお前より10個も年上なんだぞ、と言い飽きた言葉を口にする俺に「だからなに?」なんてニコニコ笑っているなまえ。
『ねぇねぇ、今度の土曜日休み?』
「休みじゃねーわ、仕事だよ。」
『なんだぁ〜...私バイトないから遊びに行こうって思ってたのに...』
アルバイトしているとはいえまだ高校生なんだから遊んでばっかいないで勉学に励んで...なんて長々と説教を始める俺の話なんて聞かずに「信長いつ休みなの?」と距離を縮めてくるなまえ。
「おまっ....、人の話聞けってば!」
『信長いっつも同じことしか言わないんだもん。』
そんなことよりいつ遊べる?だなんて目の前のコイツは俺の部屋に置いてあるベッドでゴロゴロと寝転がった。制服を着ているから転がる度に短いスカートから見えそうになる下着に俺は慌てて目を背けた。
つーか...いくら幼馴染とはいえ男の部屋で寝転がるか?普通...。しかもあんな短いスカートで...。ま、幼馴染だし歳も10個離れてるわけだし、俺相手だからいいものを......いや待てよ、だったら俺なんでこんな慌てて目逸らしたんだ?別に見たってなんとも思わねーだろ、女子高生のパンツなんか..........
『ねぇー、いつならいいのー?』
「俺は毎日仕事なんだよ。学生と違って大人は忙しいんだ!」
『なに大人ぶってんの〜?つまんないの〜...。』
正確には俺の幼馴染がなまえの兄貴で。同級生かつ隣の家に生まれた俺らは赤ん坊の頃からの仲で。それから十年経って生まれてきたなまえはコイツん家だけではなく俺ん家、そしてご近所からもアイドル並みの扱いでそれはそれは可愛がられていた。それに元々顔がいい。正直に言う、めちゃくちゃ可愛い。そのまままっすぐ育ってくれているようで、高校三年ともなればメイクやオシャレも当然覚えているようで...。くるんとあがったまつ毛はふさふさでふわふわと巻かれた髪もいい匂いがぷんぷん香ってくる。
「そんなに遊びたかったら彼氏でも作りゃいいじゃねーか。お前ならそこらへんの男すぐ捕まえられんだろ。」
『え〜?もしかしてそれって褒めてるの?私が可愛いってことだよね?』
何故だか俺の言葉ははき違えられニヤニヤと嬉しそうに俺を見つめるなまえ。なんでそうなるかなぁ...と俺がため息を吐いてもなまえはニヤニヤ笑ったままだった。
いつからだろう、コイツが高校に入ったくらいからだろうか。やたらと俺に絡んでは「信長〜遊ぼ〜」なんて調子こいたことばっかり言ってくるなまえ。確かに仲は良かった。10も離れてれば兄妹のよう、というよりももう保護者のような感覚で。小学校、中学校とコイツが大きくなるたびにその成長を感じてはコイツの兄貴と涙目になりながら語り合ったもんだ。
本気じゃないということはわかっている。特に高校三年生なんて、年上の男に魅力を感じる歳なのかもしれない。基本的に中身が大人びているなまえにとっては同じ歳の男子よりも何個か年上の男の方が合っているのだろう。そこまでは理解できる。しかし誰でもいいわけじゃないだろう。そこらへんにいる年上が俺だけだからなのか、一番近い距離にいるから絡みやすいのか手を出しやすいと思われたのか、真偽は不明だがやたらと絡んでは誘惑して来るので俺はかなり警戒していた。
コイツの成長を保護者のような気持ちで見ていたこともあるけれど、何より今でも大親友であるコイツの兄貴にとって大切な妹なのだから、そんな妹に手を出すわけにはいかないのだ。
「いい加減ニヤニヤすんのやめろ。つーか俺仕事残ってるから、ほら。出てけ。」
『えぇ〜?静かに待ってるからいいでしょ?』
「お前、いい加減に........」
俺のベッドでゴロゴロとしていたはずのなまえへと視線を向ければ何故だか目の前に立っている彼女の姿があって。は......?と声に出す前に椅子に座っていた俺の腕は思いっきり引っ張られ、高校生の女の力なんて成人済みの男の俺にとっちゃ大したことないはずなのに、椅子から引き剥がされるとそのままベッドへと倒れ込んだ。
顔面から突っ込む形となった俺が突然乱暴になったなまえに呆気をとられ固まっているとすぐさま体の向きを変えられ、グルンと半回転して目の前には天井が見えたのだった。
「痛えな.....何すんっ......!」
ベッドに仰向けになった俺が体を起こそうとした瞬間、俺の視界にはなまえが現れて、下腹部のあたりには彼女の体重がのし掛かる。
「......は?なまえ、何してんだよ?早く降りろっ!」
なんだこの状況は...なんて必死に抜け出そうとする俺の両腕は彼女に掴まれて身動きが取れなくなる。
「おい.....!いくら幼馴染だからってこんなのは......」
『信長だけだよ、そんな風に思ってるのは......』
俺を見下ろすなまえはよく見れば目に涙を溜めていてギリリと下唇を噛んでいた。
「...なまえ、とりあえず降りてくれ、ちゃんと話そう...」
『嫌だよ。いい加減にするのは信長だから。』
そう言うとなまえは一瞬にして俺に近づき、唇にはふわっと柔らかい感触。なんだこれ.........と絶望的な俺になまえは大きな目から涙をポロポロとこぼしていた。
『...いつになったら、大人として見てくれるの...?』
それは彼女の切実な願いのように思えた。普段見たこともないような苦しそうな顔で...。彼女の目から溢れた涙が俺の頬に落ちる。
「なまえ...、勘違いしてるだけだよ。年上の男なんて世の中にはごまんといる。たまたま近くにいるのが俺ってだけで...」
言い途中であった俺の言葉は再び彼女が口づけしてきたことによって遮られた。
「おいっ....、」
『黙ってよ...。信長の馬鹿...好きなんだよ......。』
今まで伝えられたことのなかった「好き」に俺の心は震えた。
『ずっとずっと...好きだったんだよ...。年上に憧れてるわけじゃない。たまたま信長が年上だっただけじゃん...。』
馬鹿.....と続けたなまえは俺に跨ったまま声を出して泣き始めた。ゴクリと息を飲んだ俺なんて彼女の視界には入っていない。
......あぁ、こんなはずじゃなかった......
『信長っ........?』
形勢逆転、俺の下で驚いた顔をするなまえはやっぱり目に涙が溜まっていて。
「...だったら、俺も本気で受け止めるよ。」
俺は年上の綺麗なお姉さんが好みだったはずだ。年をとるにつれて若い女の子に興味はあったけど...でもまだ制服を着てるような餓鬼なんて恋愛対象じゃなかったのに。
『信長っ.......』
「黙ってろ、馬鹿野郎。」
短いスカートから出る生脚。そこから伝わる体温がやけに俺を高鳴らせる。
『信長も...私のこと好き?』
「......あぁ。お前の全てに俺が責任取る。」
まだ汚れを知らない綺麗な体に俺の欲をぶちまけた。こんなはずじゃなかった。なのに心は随分と満たされて........
『信長と結婚したい。』
「もっと色気のある女になったらなー。」
『えぇ〜......これでも頑張ってるのに........』
泣かせたりはしない。もちろん全てに責任は取る。けれどもコイツの兄貴に報告するのはまだ先にしようと勝手に決めつけてはなまえにキスを落とした。
天使の首筋に赤い痕(...信長、これもっとつけて!)
(キスマーク喜ぶとか...変態かよ...)
少しだけ禁断の恋っぽく見せたかったんですけれども別に本当の兄妹じゃないし健全といえば健全のような...未成年だから一応ね...でも10個くらいならそんなに離れてないだろうと思ってしまう私......矛盾がたくさん生じてる......( °_° )28歳のノブちゃんイカス......!!