番外編






「お疲れ様、みょうじ。」
『長谷川さん、お疲れ様です。』
「それとこれ。」


仕事終わりにデスクまで来てくれたのは上司の長谷川さんで藤真先生の友達だ。口数は少ないけれどとても頼りになる真面目な人で会社の中で唯一私の素性を知っている........あ、流川くんの彼女ってことだよ。


『なんですか?これ。』
「今日誕生日だろ、二十歳。」
『わ.......忘れてた........!』


そういえば今日......。
ありがとうございますと受け取れば「大人の仲間入りだな」なんて頭を撫でてくれた。うわっ、かっこいい.....ていうか。


こういうのって普通、彼氏にされるものじゃないのか......。


流川楓という男はとっても大胆で、今思えば誰が見てるかわからない不特定多数の人が集まる試合会場のVIP席に私を招待したり、連絡がないと思えば卒業式の日に私すら同意してないのに交際の許可を我が家に乗り込んでまで取りに来たりと、かなりの破天荒だ。


男気溢れるあの告白から1年半。交際をスタートさせたのはいいものの「まだ未成年だから」という理由で電話が月に5度程度くるほどで外ではめっきり会っていなかった。もしや「恋人」という関係になったその事実に甘えてない?!付き合えたらそれでゴール的な?実際彼女になったらめっちゃ餓鬼だし面倒くさい的な?!あぁもう!


「気をつけて帰るんだぞ。流川によろしくな。」
『あ、はい.....ありがとうございます!』


そもそも私の誕生日知ってた?去年は.....あ、そうだ。日付変わっちゃうギリギリに「おめでとう」って電話きたんだった。今日も来るのかな、少し夜更かししないといけないなぁ.....。














「ねぇ、キミ!」


トボトボと会社帰りの道を歩いていたら後ろからそんな声が聞こえてまさか私じゃないよな、なんて考えてたらガッと肩を掴まれた。いやいやもうやめて....誰よ、私は今落ち込んでて........










「やっぱり。藤真さんとこの。」
『仙道彰...........?』
「ハハ。また呼び捨て。変わってねーな。」


あ.....と謝ろうとすれば「いいよいいよ」なんて笑ってる。


いやいや!すごい久しぶりに見た、生仙道。


『あ、私もう藤真先生の生徒じゃないですよ。』
「ん?.....あ、そっか。もう高校生じゃないもんな。」
『そうですよ!餓鬼扱いしないでください。』
「ハハッ、餓鬼って.....。じゃあ今は流川の彼女であってるよね?」


.....あれ、この人なんで知ってるんだ.....?そう顔に出てたのか「有名人だよなまえちゃんは」と仙道は笑った。え?何それ?


「流川がさ、なまえちゃんが高校卒業した日にチームの偉い人に頭下げに行った話知らないの?」
『えっ..............?』
「土下座の勢いで言ったらしいよ。もう高校生じゃなくなったから付き合わせてくれってさ。」


これ世間には公になってないけどバスケット界では超有名な話だぜ?なんて言いながら私の頭を撫でてくる。


『何それ知らない......。』
「あんなに女気なかった流川がそんなこと言うもんだからみんながどれが流川の彼女なんだって大騒ぎだよ。よっ、有名人!」


いやいや、そんな風に讃えられても嬉しくないわ。だって私今日誕生日なのに....ひとりじゃん。


「...あれ?元気ねーな?」
『今日、誕生日なんですよ。』
「えー!おめでとう。.......あれ、もしかして流川から連絡無し?」


コクッと頷けば仙道さんは「あぁ〜」なんて声を出して納得し始めた。


「ま、わからなくもないよ。なまえちゃんのことよっぽど大事なんだな、アイツ。」
『誕生日に会わない理由なんて私にはわかんないですよ.........。』


そんな時、そういえば!と思い出したことがあった。この人前会った時、私のこと藤真先生の生徒だって見抜いたのに.......


言わないでいてくれたよね?多分......。


『あ、あの。』
「ん?」
『なんで藤真先生に言わなかったんですか?流川くんに口止めされたから?』
「......いや。別に俺可愛い子からかいたくなるだけで引き裂こうなんて趣味は無いからさ。」


藤真さんと違ってね、なんてウインクしながら笑ってる。..........なんだかよくわかんないけど、とりあえず悪い人じゃなさそうだなぁ.......。


「よかったんじゃないの。色々乗り越えて付き合えてさ。ま、流川もなまえちゃんのことは真剣に考えてるよきっと。寂しいんなら俺らが祝ってやろうか?誕生日。」
『俺ら....?』


私の疑問に仙道さんは辺りを見渡すと「アレ」なんて言って誰かを探し始めた。


「.....あ、いた。おーい!」


何してんだよ〜なんて声をかけた先には男の人がいて何やら女子に囲まれていた。それを頭を下げて断りこちらへ走ってくる。









あっ........!!!!













「悪い、捕まっちゃって。........あれ?誰?」

『.......さ.........沢北栄治.........っ!!!』


嘘。沢北栄治じゃん....!四天王最強の沢北栄治!やば.....生の方が数億倍かっこいいじゃん.....。


「また呼び捨て。ハハハ、この子はね俺の友達の友達みたいな感じ。」
「仙道の友達の友達?へぇ〜.......初めまして。」
『は、初めまして......みょうじなまえです......!』


可愛い名前だね〜なんて沢北栄治は笑ってる。

沢北栄治が、私に向かって....笑いかけている!!これはもはや大事件だ。すごい。実は何を隠そう四天王では断然沢北派だったんだから!いやごめんね流川くん。別にそういうつもりじゃないよ。


「今日誕生日なんだって。何歳になったんだっけ?」
『二十歳です。』
「は、はたち.....?!うっわ若い.....。10歳差?」


沢北栄治は「若いとは素晴らしい」とか言いながらしみじみしてる。なんか意外とおっさん臭い一面もあるなぁ。でもなんでアメリカにいるはずのこの人が.....?


「あ、俺沢北と仲良いの。コイツ来月から日本でプレーするんだよ。」
『えっ、そうなの?!どこのチームですか?』
「何、バスケ詳しいの?流川と同じチームだよ。流川楓わかるでしょ?」


.........わかるもなにも........。


「まだ世間には未公表だから特別に先行公開な。」


沢北栄治はそう言うと口元に人差し指を当てて「シーだぞ」なんて言ってくる。うわ、もう、やめて。貴方が同じチームに来たら流川くん大丈夫?.....いや大丈夫だよ。超強力なチームメイト....でもポジション被ってない?いやもうわかんない.....。


「バスケ好きなら観においでよ。横浜でよく試合するし近いでしょ。」
『あ、はい....ありがとうございます....。』
「仙道の友達の友達ってことは仙道の彼女ではないんだよね?彼氏いるの?」
『い、ま.......す。』


なんだ〜彼氏持ちか〜なんて沢北栄治は笑ってた。なんかもう、わかんない!!そもそもなんで私のこと「友達の友達」って紹介なのか仙道さんの考えが読めない!!


「今度仙道のチームと試合する時が俺の公式戦デビューだから。今度チケットあげるね。なんなら彼氏と観においでよ。」
『ありがとう....ございます.....。』


仙道さん隣でクスクス笑ってんのやめてくんないかな?!


『あ、私行きますね、それじゃまた......。』


またねーなんて笑う二人に手を振ってその場を離れた。もうなんだか、意味がわかりません。とりあえず流川くん、私の誕生日を覚えていてください.......。













いくら有名人でも彼の代わりにはなれない


(思ったけど四天王ってみんなイケメンだな...)
(あとは桜木花道だけだ!!制覇まで王手!)












Modoru Susumu
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