初お泊まり編






『…わぁぁ!な、なにこれ…!』

「ちょっと、どうした…?!」


だって、だって…だって!


『この…あ、赤い…痕は…一体…!』

「…なんだ、そんなことか。」

『そ、そんなことって…!』


そもそも起きたらめちゃくちゃ腰が痛いし体重いし、なんなら互いに裸だし、別に忘れたわけじゃないけどさぁ…!一応それなりにパニックになるわけですよ…!時間ももうだいぶ遅いし、打ち上げついでに友達ん家に泊まることにしたはいいけどさ…とりあえずシャワー浴びようと思ったけどこの、この…この赤い痕は…!


「何?言われたいの?どうやったらつくか教えてあげようか?」

『ま、待った!ちょっと、洋平くん…!』


わかってるよ、これがその…き、キスマークだってことくらい…!だけどあまりの量の多さにビックリしたのと同時に、洋平くんに本当に、その…愛されたんだなぁ、って…そう思ってパニックになっただけであって…ちょっと、痛っ…!


「…こうやって、吸うんだよ。ほら。」

『ほ、ほら…じゃない…つけすぎだし…』

「ごめん、あまりにも可愛いから耐えきれなくて。」


そ、そんなことサラッと言うー?!なんだか、洋平くんが…変…さっきから淡々としててあっさりキスマークつけてくるし…可愛いとか言うし…なんか、一線を超えたっていう…ほんとそんな感じ…


って、何言ってんの、私は!


『お、おおお、お風呂入る…!』

「おぉ。待ってるよ。」


クスクスと笑われて急いで浴室の扉を閉めた。本当に調子狂うなぁ…それでも、思い出すのは…


『…やっぱ、かっこよかったな…』


シャワーに打たれながら思い出す。洋平くんの荒っぽい息とか、乱れた髪とか、余裕のなさそうな顔とか…直に嗅いだ匂いとか…肌同士の温もりとか…私を求めた「瞳」とか…


『…ついに、大人になった…』


キスマークだらけの体を見てそう思う。私は洋平くんとそういうことをして…大人になって…「女」として、彼に抱かれて…


何故だか出会った頃の冷たい「は?」を思い出した。「好きです」と伝えた後に「は?」と言われて「ガキには興味ない」とバッサリ切られた数年前…あれからずいぶん進歩したなぁ…ついにこんな日が、来るだなんて。













「何?泊まる?」

『さっきお風呂入る前にそうやって電話した。だから一晩、よろしくお願いします。』

「…待った。わかってて言ってるんだよね?」

『…へ?』


お風呂上がりにポカポカとした体でリビングに戻れば洋平くんは「だからさ、もう我慢しないからね、俺」と何故だが強気な態度だった。


「言っておくけど、寝かせないよ?夜も抱く。」

『ぶっ……』

「なまえちゃんのこと、抱きます。」


飲みな、ともらったお茶を口からこぼした私に見向きもせずに洋平くんはそう高らかに宣言していた。私が慌てて床を拭くも「飯作んなきゃ」とそう呟き服を着る洋平くん。パンツ一枚だった上に部屋着の短パンとTシャツを着るなりスタスタとキッチンへと歩いていく。


『…なんだか、ご機嫌だね…?』


軽く鼻歌まじりでご飯を作る洋平くん。なんだか可愛くて思わずそう声をかけた。こんな洋平くんは見たことがない。いつも年上だからかしっかりとしていて…あれ?こんなに無邪気な姿、洋平くんにあったっけ…?


「そりゃね。もう何もかも我慢しなくて済むしね。泊まってくれるみたいだし。」

『…我慢、つらかった…?』

「…うん、でももう平気。これからは今までの分もめちゃくちゃ抱く。」


洋平くんはそう言うとくしゃくしゃと私の頭を撫でた。「抱く」を連呼されてとても恥ずかしいのだけれど、こんなに頬を緩めた洋平くんを見ることができたのは良かったのかもしれない…だって、たくさん我慢させてて、つらい思いをさせていたのかもしれないと思うと…やっぱりそれは居た堪れないし…


何かに解放され、解き放たれたような彼の上機嫌さにこっちまで嬉しくなるし…


「あ、でも。ひとつだけ言うよ。」

『うん?』

「俺以外の男は、あんまり見ないでほしい。」


洋平くんの目は真剣だった。急に真面目な顔になるからビックリしてしまうけれど…彼に我慢をさせて、傷付けてしまうようなことは二度としたくないから、私も真剣に「うん」と頷いた。もう二度と隠し事はしないと、修学旅行の時に約束したのに…流川楓との接触を話していなかったのはやっぱりまずかったな…って、そう思った。


『ほんとにごめん、流川楓と会ったこと…言ってなくて…』

「いいけど、あれは流川の方に問題があったし…」

『えっ…?』

「俺と付き合ってること、流川に言った?」


確かに私は彼に伝えた。だから洋平くんに「うん、言ったよ」と返事をすれば「ならいい」と返されてしまった。再びニコッと笑いながら鼻歌まじりで料理を再開する洋平くん。相変わらず手際が良くてすでに美味しそうな匂いが漂っている。


「…っし、たくさん食べてね。この後も俺と運動しなきゃいけないしさ。」

『運動…確かに、すごくハードだった…』


私の呟きに「ごめんね」と笑う洋平くん。あまり悪気はなさそうだった。













『洋平くっ…、待っ…!』

「待たない…待てねぇ…」


ご飯を食べ終わり皿を洗い終え、さてゆっくりしようかと座った瞬間だった。待ってましたと言わんばかりに唇を奪われて、息をするのに必死なうちにベッドへと移動していた。上に乗りかかる洋平くんの瞳はやっぱり熱くて、彼が私を求めているのかと嬉しくなる…けれど…


『やっ……、よ、ようへい、くっ……』


やっぱり究極に恥ずかしい…!しかもなんでかわからないけれど、ペロペロと体の隅々まで舐められていて…なんでそんなところを…っ、!


「…俺に抱かれるの、嫌だ…?」

『違う、そうじゃない…ただ、…アッ、』


否定するなりもう話す猶予も貰えないほどに荒っぽく舐められる。次第に彼は下へと下がっていき、気付けば秘部を一度ペロッとひと舐めされてしまった。


『やっ…、やだ…、そこ…っ、』

「やだじゃない…気持ち良いって、顔してる…」


彼の宣言通り、寝かせてもらえなかったのは言うまでもない。それどころか朝日が昇る頃には服を着ていても見える位置にまで赤い痕がついていて、洋平くんは「もう俺の精子が底を尽きた」とそんな下品なことを言っては隣に倒れ込んでいた。悔しかったから洋平くんの首元に吸い付いて仕返ししてみたけどうまくつけられなくて、「何可愛いことしてんだよ」と逆に羽交い締めに合い、余計にキスマークが増えるだけであった。








欲望の爆発


(ほんとに、歩けない…)
(ごめん、マジでほんとにごめん)
(許さない、洋平くんのバカ…)
(ごめん、可愛い。もう一回言って?)








Modoru Susumu
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