甘い日々編






「…で?その顔はどうしたわけ?」

『えへへ…えへっ…へへへっ…』

「おっと、こりゃ重症だ。」


ポロポロと落ちていくご飯粒に洋平は「ハハッ」と苦笑いを浮かべる。なまえは洋平を見つめニヤニヤと笑い洋平の用意したオムライスをこぼしながらも口へと運ぶ。緩みっぱなしの頬にはケチャップがたくさんついているが本人はそれどころじゃないらしい。


『えへへ…洋平くんが私を愛してるんだと思うとさぁ……ぐふふっ……』

「…まぁ、一応ね。」


あまりのニヤけ具合にキッパリと言い放てば「一応?!」と席を立つなまえ。ガタッと音を立てて立ち上がるなり「愛してるって言ってくれたじゃん!」と叫んでくるのだから困ったもんだ。洋平は「そうだよ、そう。だから座れ」となまえをなだめた。


『もう……えへっ、やっぱり愛してるんだね…』

「…うん、そうだよ。」


もう「そうだよ」以外の言葉は受け付けないらしい。満足そうにニヤニヤを続けるなまえの顔に手を伸ばし頬のケチャップを拭う洋平。ペロッと自身のその手を舐め「学校ではそのニヤけ顔なんとかしなよ」と彼女の緩んだ頬を心配するのだった。


『わかってる…洋平くんの前じゃなきゃこんなにならないもん…』


どうやら自覚はあるらしい。「でも俺のこと考えたらそうなるんじゃないの?」と追及すれば「あっ…」と声を上げるなまえ。こんなだらしないニヤけを他の男に見せるわけにもいかず…いや、見せてもいいのか…?でも、俺に対してのその顔ってのが知られなきゃ虫除けなんねぇしなぁ…と洋平はうーんと考え始める。


「…愛してくれる彼氏がいます、とか貼り紙貼っとくか。」


そうしよう…だなんて無謀なことを呟く洋平。なまえはよくわかっていない顔で「えへへ」と変わらずにニヤけていた。


『いやぁ…この間の洋平くんを思い出すともうニヤけずにいられなくてどうしよう…かっこよくてもう本当にさぁ…』

「なんでもいいけど……覚悟はしとけよ。」


クシャッと頭を撫でてそう言う洋平に、この間の「俺の理性があんまもたねぇんだ」という発言を思い出すなまえ。ピクッと反応し途端にニヤけた頬を元に戻し今度はみるみるうちに顔を真っ赤に染める。


『わ、わかってるよ…!』

「ふぅん?ならいいけど…その日は突然来るかもしんねぇしな…?」


完全に楽しんでいる洋平とワタワタ慌て出すなまえ。可愛い下着買っておかなきゃ…なんてあきらかオムライスを食べながら考えることではないものに脳を支配されて結局頬にはケチャップがついてしまう。


「ったく…目が離せねぇなぁ。」


そんな様子を見るなり洋平はニコニコと笑う。やっぱりなまえは可愛い。自分にとって大切な女の子であって、出来る限りの限界まで傷つけるような事はしたくない。とは言っても自分の理性が後何年も持つとは思えないが…


「18になるまでは…なんとか…な…。」


そこまではなんとか頑張ろう。まだまだ子供のうちは手を出さない。自分でそう決めたのだから守り抜く。洋平は相変わらずポロポロと米粒をこぼすなまえを見て改めてそう固く決意したのだった。













「時の流れの早さときたら……」

『えへへ、高校二年生、頑張ります!』

「この間まで中坊だったのになぁ。」


感慨深いね、と笑う洋平に「じろちゃんとクラス離れたのー」と落胆するなまえ。ピクッと肩を上げた洋平が一間置いてから「そうか、それは残念だ」と呟く。何も知らないなまえは「そうだよー話し相手がいなくなったー」と心から残念そうだ。


んだよ、アイツ…結局仲良しなんじゃねぇか…


上等だこの野郎…と拳を握る洋平の心中を知る由もないなまえは「でも新しい友達もできたー」とニコニコ笑っている。始業式を終え洋平宅に直行したなまえ。新しいクラスの名簿を見るなり「この子もこの子も話したの」と報告してくる。その報告はとても可愛くて「そうか」「よかったな」と共に喜びたい気持ちもあるのだが…


「なんだか男ばっかだな…」

『そうなの。ほら、高二の女子って何かと取っ付きにくいじゃん?』

「なまえちゃんも高二女子だろ…」


そうだけどそれとこれとは別だよ、と何故か言い張るなまえ。つまりはこうだ、女の子よりも男の友達が多くできたということだ。


「んなの、許すまじだわ…」


ぶつぶつと呟き嫉妬に駆られる洋平と「明日も楽しみだなー」と能天気ななまえ。ぽわぽわと頭の上にはお花が飛び交っていて脳内お花畑とはまさにこのことだ。


「んまぁ、ハメ外しすぎねぇように。あと、何かあったらすぐ言えよ?」

『もちろんであります!』


ビシッと敬礼をするなまえ。そしてハッとした顔をして「そうだ、あれ言ってよ!」と洋平にニヤニヤした顔でお願いするのだった。


「何?あれって。」

『めちゃくちゃ愛してる…ってやつ!』

「…あのなぁ!」


何故このタイミングなんだ…と戸惑う洋平になまえは「お願い、いい成績取るために頑張りますから!」と言い訳をつけて懇願してくるではないか。


「あーもう、わかったよ。耳貸して。」

『はいっ…』


耳元に近づき「愛してるよ」と囁けば自分で言い出したくせして「ううっ…」と顔を真っ赤にされる。言い出しといてそれかよ…その反応は本当にずるいし可愛いだけだ…と洋平は照れまくるなまえをよそにガックリと肩を落とした。


『私も…愛してる…』

「…!!」


びっくりして目を見開く洋平と「あぁー」と手で顔を覆うなまえ。「ちゃんと言いたかったの」とかなんとかボソボソと言い訳を呟いているその姿があまりに可愛くて、そして彼女の「愛してる」の破壊力に洋平は「トイレ…」とその場から立ち上がるのだった。









好きが爆発しそうです…


(マジで「愛してる」だけで勃つわ…)



慌ててトイレに駆け込んだ洋平くん…(笑)







Modoru Susumu
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