■ 海南





『うわぁ?!ごっ、ごめんなさいっ...』

開会式直後俺は試合も無いしのんびり飲み物でもと自販機に向かってたら角で人とぶつかった。どうやら相手は女の子だったらしい。ヤバイヤバイと思って手を差し出したら遠慮気味に握ってくれてなんか安心した自分がいた。触りたく無いとか思われなくてよかった...ホッ。

「すみません!大丈夫でしたか?」
『私が前方不注意で...すみませんでした』

ペコペコッと頭を下げられて見上げられる形で目が合ったわけだがなんとまぁ!超可愛いじゃないですかぁぁあ!上目っぽく見ないで...俺そういうの慣れてないっす...!

(じっ、神さーん!こんな時にいないなんて!)

この場にいるはずのない神さんの名を呼びながら離れるタイミングを伺っていると彼女の方から声をかけられたわけだ。

『もしかして、海南大の清田くんですか?』
「えっ...そうっすけど...」
『あぁやっぱり。身体能力が高い、調査済みです』

メガネなんてかけてないのにメガネをクイっとする仕草をされて思わず吹き出した。何?!可愛すぎないか?!

『えっ...なんで笑うの』
「す、すみません、つい...マネージャーさんすか?」
『そうです!いろんなチームの注目選手をチェックしてきたの』
「ほぉ...海南大はこの清田信長ってことすね」
『そう、あと牧くんと神くんもね』

おぉ!優秀なマネージャーさんっすね。よくわかってらっしゃる。

『あと神奈川は流川くんにもチェックしてるよ』
「流川?!あんなの敵じゃねぇっすよ!」
『確かに湘北に勝ってるもんね...さすが海南』

カッカッカ...話がわかるお方だ。どこのマネージャーかは知らないけどこんなに美人でこんなに仕事が出来るなんて羨ましい限り。うんうん、いいマネージャーをもったなぁ。

「おーい信長!こんなとこに...」
「あ!神さん!聞いてくださいよこちらのマネージャーさんが...」
「ちょっと信長、失礼なこと言ってないよね?」
「え...?」

マネージャーさんと目が合うとヒィッと一瞬神さんが物怖じしてその後ウチの1年が失礼を...なんてペコペコ頭を下げ始めた。あれ?どうしたんだ神さん?

『そんなことないよ!神くん顔上げて!』
「いやいや、飛んだ失礼を...」
『私が前見てなくてぶつかっちゃったの』
「ええっ?!お怪我はないですか?」

神さんが慌て出すとマネージャーさんは大丈夫だよーなんてポワッと笑っている。なんだ?何者なんだ?

「あの、失礼ですけど、どちらのマネージャーさんで...?」
「バカ信長!」
「痛ッ!神さん痛いっすよ...!」

目の前のやりとりを見てふわふわ笑ってるけどその言葉を聞き俺は背中が凍ったわけだ。

『秋田の山王工業だよ』
「秋田の山王...さんの...さっ、山王工業?!」
「声がでかいよ信長!」

バシッと叩かれたけどそんなの今は痛くもない。えぇ?!このゆるっとしてふわっとした人が山王のマネージャー?!うそぉ?!こんな美人が山王にいたの?えぇ...すげぇ...

『あ!牧くんだ!おーい!』
「...誰かと思ったらなまえじゃないか」

あれ、牧さん知り合いすか?と思ったらそういえば去年山王と戦ってるじゃんウチ。しかもコテンパに負けてるらしいじゃん...うぇぇ?!なんかやばいことしたんじゃねぇの俺...?!そんなとこのマネージャーさんに軽口叩いたぞ...

「元気だったか?今年は負けないからな」
『ヒェェェ怖いよ牧くん、また黒くなったね』
「そうか?サーフィン控えてるんだがな」

自分の肌を見ながら呟く牧さんを見てクスクス笑っている。やっべ信じらんねぇ...こんなふわっふわで山王のマネージャーが務まるもんなのか?疑問だ。

「こんなとこにいたピョン」
「ゴラァ!ひとりで出歩くなと言ってるだろ」
『痛ッ...河田ひどいよ...』

その後ゾロゾロやってきた男たちを見て俺は血の気が引いたわけだ。ヒェェェ!山王だ!河田だ!深津だ!......沢北もいる!

「何してんすかなまえさんいつもチョロチョロして...」
『ごめんね沢北、怒んないでよ』
「いやぁ怒ってねぇっすよ、可愛いな...あ、違う心配なんです」

ウゲッ?!沢北もでっれでれじゃねぇかよ...気持ち悪い...すぐさま大男たちにササッと囲まれて一瞬で見えなくなったマネージャー。あれ?どこ行ったんだ?声は聞こえるけど...

「牧、ウチのマネージャーが失礼した」
「いいんだ河田、今年は負けないからな」
「よく覚えておくよその言葉」

二ヒッと笑った河田に俺は鳥肌が立ちそうだった。牧さんはこんな人たちとも知り合いなんだなぁ...やっぱり尊敬に値する。すげぇ人だぜ...

『清田くんまたねぇ!対戦する時はお手柔らかにね!』

どこからかそんな声が聞こえてハイ!と返事したら一斉に王者山王に睨まれたわけである。ウエェ、俺なんもしてねぇよ、怖いから!頼むからそんなにみんなして睨むな!!







なるほど大事にされてるわけね、わかったわかった

(わかったから睨むなよー!!!)








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