人魚姫のカケラ | ナノ




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「もしかして……清継くん!?」


「噂の…旧校舎も!?」


「あぁ…行きたいと思っている」


だが行くと清継が言うと一斉に反対の言葉をあげる

危ないってーとか言っているが、協力して欲しいと頼まれると皆一斉に言葉を濁してその場を立ち去っていく

思わず笑ってしまう程希薄な人間関係だと言えるだろう。厄介そうな事柄に自ら首を突っ込みたいと思う人間なんてどこにもいない

どうやら話に上った"旧校舎"というポイントは、この学校の怪談の一つで、妖怪が出ることで有名なようだ

この中学校の真横を走る"東央自動車道"という道を挟んだ反対側にある、10年以上前から誰も近寄ることのできない――それがこの中学校の旧校舎、らしい


「今日の夜、僕はその旧校舎の中を調べようと思う。興味のある人は是非とも参加してくれたまえ」


誰が行くか、と誰もが心の中で思っていると……それを察したわけではなさそうだが、清継が勢いよくこちらを振り向いた


「奴良くん!君は名誉隊員だ!誇りに思おう!!そして瑞希さん、君は是非とも今日の探索に参加してくれるよね!?」


『は?』


「君が妖怪について多大な興味があることはもう十分分かっている!あぁ、集合場所は学校の裏手だ!」


『え、いや私参加するとは……』


「おぉっともうすぐで昼休みが終わってしまう。それでは奴良くん、瑞希さん、その他有志諸君、今日の夜楽しみにしているよ!」


HAHAHAHAと笑いながら清継が颯爽と教室から立ち去った後、アイリはポツリと小さく呟いた


『……あのガキ、殺してやろうか…』


「ヒィィィ!!お、お願いだから落ち付いてアイリさん…!」


殺気の込められた呟きをたまたま聞いてしまったリクオは必死に彼女を宥める

決して気の長いほうではないアイリにしては随分我慢したほうだと言えるが…まさか自分の友人を殺されるわけにはいかない


『なんで私がガキの探検ゴッコに付き合わないといけねェんだよ』


「こうなったらしょうがないよ…昔から清継くんは一度思い込んだら絶対に引かないもん…」


それが事実なんだと悟ったアイリは苛立たしげに舌打ちをこぼし、イライラしているのを隠すことなく自分の席に座り、その5秒後にまた寝る体勢に入る


「どうしたんだろう?瑞希さん…」


「さ、さぁ…眠かったんだよ、きっと。はは、ははは…」


カナの不思議そうな問いかけに、リクオは乾いた笑みを浮かべることしかできなかった

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