05
大助が戸惑っているのがよく分かる
「ち、ちょっと、緒里!どこ行くのよ?」
「え…緒里くん?どうかしたの?」
それに気づいた純と、純の声を聞いた千莉が後ろを振り返る
「こいつは体調が悪い。保健室に連れていく」
「はぁ?」
あっけにとられた声を出す大助
それもそうだろう、大助はいたって健康そのもので体調が悪いわけがない
それが分かった純が引き留めようとするも構わず緒里は大助を連れて教室を抜け出した
転入初日でまさかサボるだなんてきっと想像だにしてなかっただろう…藍羽としてはご愁傷様としか言いようがない
しかしあの緒里という少年…きっと、ただの少年じゃ、ない
それを言えばあの大助だって…
――これは、調べるしかなさそうだ
緒里の態度に不満を露わにする純と心配そうな表情をしている千莉から目をそらし、前を向く
そしてゆっくりと目を閉じ……俯いた状態で、目を開けた
その目は標準的なこげ茶色ではなく…妖しく光る、金色(こんじき)色
その状態でまた一回瞬きをすると、その瞳はもとの色に戻っていた
それと同じタイミングで、窓の外に一匹の蝶が現れた
――人間界ではありえない、金と銀の色彩を持った一匹の蝶が…
ひらひらと舞うように飛びながら徐々にその蝶は屋上へと向かっていく
屋上には保健室に行ったはずの大助と緒里、そして見たことのない少年の3人がいて、それぞれ真剣な表情をして話しこんでいた
教室にいながら、藍羽は実際にそこにいるかのように何もかも知ることができている
大助も緒里も、有夏月という少年も虫憑きだということ…大助は千莉を監視するために特環から派遣されてきたということ…この町で"浸父"が度々発見されているということ等々…全てを
「…藍羽」
『――何ぃ?』
意識を集中させていると後ろから純に話しかけられ、一端意識をココに戻す
「緒里が薬屋くん苛めてないか気になるから、ちょっと様子見てくるね」
『りょーかい』
その後千莉が体調不良を訴え、それに純が付き添うというカタチで教室を出て行ったのを見て、また藍羽は意識を蝶に戻す
そう、こんなこと普通の人間にできるわけがない
藍羽も、虫憑きだった
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