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07 八城椎名 side



俺の…っていうより、俺らの知る"香月朔夜"はそれはもう恐ろしいものだった。
鬼のように喧嘩がめちゃ強く、俺が知る限りアイツは負けなしだったと思う。
だけど朔夜が入学して1ヵ月目でボスの座を下された当時のボス(名前忘れた)みたいに威張り散らして一般人に迷惑かける不良って感じじゃなくて…
こっちから手を出さない限り被害は限りなく0に近かったし、何より顔がすごかった。
何がすごいって…その整いすぎた顔が、だ
ハッキリした顔立ちで、金に染められた長めの髪がとてもよく似合う美人だった。
あれでもう少し背が高かったら男前だと女にモテまくってただろうにな。
だからあくまで"美人"という印象しか与えず、その綺麗な顔で殴っている姿はある意味場違いでもあった。

…そんなあらゆる意味で"特別"だったアイツに、俺は憧れていた。

そして親父に強制的にこの全寮制の高校に入れられ、面白くもなんともない毎日を淡々と生きてきていた。
元々バカだった俺はすぐ高校の授業についていけなくなり、ヅラによって無理やり強制勉強会が開かれたあの日に、つまらない毎日に彩がついたんだ。


――俺は香月朔夜。お前は?


トレードマークとなっていた金髪が真っ黒になってるとか、眼鏡をはめてるとか、長めの前髪であんま顔がよく見えないとか、そんなの全く関係なかった。


――俺、八城椎名。同じ中学だったんだけど…知らないかんじ?


ま、結果として朔夜は俺のこと全く知らなかった。
だけど朔夜の目の中に映りたくて、傍にいたくて必死に頑張って、やっと名前で呼んでくれるようになった。
神様も俺の涙ぐましい努力に応じてくれたのか、翌年同じクラスの同じ部屋になった時は本当に嬉しかった。

俺は朔夜のことが"好き"だ。
それもたぶん、恋愛感情のほうの"好き"。

そんなこときっと朔夜は夢にも思ってないだろうから、告げないつもりでいた。
ずっと朔夜の一番の友達でいいと思っていた。

アイツ…立花が来るまでは。

ぶっちゃけ生徒会やら倉持からを惚れさせるのはどうだっていい。好きにすればいいと思う。
だが、朔夜に手ェ出すのなら話は別だ。

だから牽制の意をこめて一緒に昼飯を食うと宣言すると、僅かながらに立花が拳を握ったのが見えて、心の底から言ってよかったんだって思ったり。
あいつ、もしかしたらただの空気読めないバカじゃないのかもしれない、とも思った。

それは後々わかることだから今はおいておく
普段めちゃくちゃ鋭い朔夜だけど、こういう色恋沙汰には興味がないせいか非常に疎い面もあり、常に俺が守ってあげなかんよな!

大勢に囲まれてイライラしている朔夜を見ながら、俺は1人そう誓ったのだった。



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