ありのままに、 | ナノ




16



「んなにひっついてくるから俺とお前が付き合ってるなんてバカな噂が流れるんだ。さっさと離れろ」


何が悲しいかな、俺はコイツとデキているという噂を流されたことがある。
こんなに距離が近い姿を何度も目撃されればそりゃあそいいう噂も流れるだろう…同性愛の巣窟なんだし。
さすがにゆーちゃんたち椎名の親衛隊の奴らも怒るかと思ったら、むしろかなり喜ばれた
これからも八城様を宜しくお願い致します!と泣きながら言われた時、俺は慌てて全否定した。
誤解が解けるとなんだか可哀そうな目で彼らが椎名を見ていたが、今だに何でなのかは分らない。
そのあと数日間、やけに椎名が落ち込んでいた理由もな。
まぁ気分屋なところがある椎名だから、少し経てば元に戻ってたけど。


「はーなーれーろー!」

「えー?俺と朔夜の仲じゃん」


グギギギと椎名を押し返そうとするも中々離れてくれない椎名。
こんな廊下でこんな姿を見られたらまたあの悪夢再来だ…それだけは阻止しなければ!


「いい加減に…っ」

「な、な、何してんだお前らー!!」


男の大事な部分を足で蹴り上げようとしたのと、耳ざわりな声が聞こえてきたのはほぼ同時だった。
ピタリと抵抗を止めて、声がしたほうを見る。


「こんなところで抱き合ってるんじゃねーっ!!」

「なんだ、立花かよー」


そこにいたのは顔を真っ赤にして怒鳴っている立花だった。
食堂にいた金魚のフン…もとい取り巻き共は何故かおらず、珍しく1人でそこにいる。
俺は力を込めていた足を元に戻し、根暗っぽい真面目くんの仮面をかぶる。


「立花…どうしてここに?」

「食堂で朔夜たちが突然帰っただろ?それで俺、探しに来たんだ!」

「そうなんだ…ごめんね。でもわざわざ探してくれなくてよかったのに…」


嫌味っぽくなく、でもさりげなく迷惑だと告げてみるも立花の表情は変わらない。


「朔夜あんま大勢の人がいるの苦手って言ってただろ?だから気分でも悪くなったんじゃねぇかと思って…」


お、案外常識あることも言えるじゃないか、立花。
まさか立花の口からそのような言葉が出るとは思っておらず、俺は目を瞬かせる。
だが、そう思える頭があったなら、嫌だと言った時点で諦めればよかったんだが。


「俺なら大丈夫だよ。立花は生徒会の人たち待たしてるんだろ?もう行って大丈夫だから…」

「そーそー。朔夜には俺がいるからさ。安心してくれていーよ」

「、椎名にばっか任せるわけにはいかないだろ!俺にだって頼れよな!」


……なんか、もしかしなくても椎名と立花って仲悪い感じ?
人類皆友達を地でいってる立花がびっみょ〜につっかかってるのを見て、挑発的な笑みを浮かべた椎名を見て、俺はその結論に至る。


「俺、別に大丈夫だけど…」

「朔夜はいーから黙ってて」

「う…」


笑っているのに笑ってない顔で見られ、俺は黙って頷いてしまった。



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