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「有里の友達〜?」
あー全力で否定したいけどできねぇー!
しかしここで否定したりしたら有里が騒ぐし、死んでも肯定はしたくない。
そんな俺がとった行動は、ザ☆聞こえなかったふり。
「あ、椎名これやる」
「げげっお前俺の皿の上に勝手に置くなよ!」
上手い具合に椎名に話しかけ、その聞こえなかったふりに真実味を加味する。
「朔夜それ嫌いなのか?」
「いや、もうお腹いっぱいだっただけ」
立花と少し話をするだけで生徒会の連中からの視線が突きささる。
特に副会長からのはもう殺気すらこもっている気がする。
それらに気づかないフリをし、半分程度残っている定食を椎名に押し付ける。
お腹いっぱいというのは嘘ではなく、こういう定食とかセットものは最後まで食べ切れた試しがない。
元々小食な俺は昼飯ぐらい抜いたって全然平気なのだが、椎名の親衛隊隊長のゆーちゃんに怒られ、渋々3食食べるようにしている。
料亭の息子だからさ、食べることにはすっげー煩いわけ。
「俺だってけっこうお腹きてるんですけど!」
「そう言わずに食べろって椎名。ほら、あーん」
ブツブツと抵抗を示す椎名に無理やり口を開かせエビフライをつっこんでやった。
なんかすっげー驚いた顔をした椎名が俺を凝視したあと、何故か嬉しそうな顔になった。
「朔夜ちゃんったらダイタンね!」
「……」
「…っあ、や、う、嘘です嘘!」
公衆の場で言い返すことのできない俺は思いっきり椎名の足を踏みつけてやった。
引き攣った顔で謝ってきた椎名に俺は天使の笑みを浮かべる。
「ほら椎名、時間なくなるんだから早く食べろって。立花もだぞ」
ぽけっとこちらを見て固まっていた立花は慌ててA定食を口に運びだした。
生徒会連中はここからいなくなる気はサラサラないらしく、ベタベタと有里にひっついている。
見ているだけでうっとーしくなるほどの溺愛ぶりにまさに空いた口がふさがらない。
生徒会連中は自身が美形であることを十二分に理解しており、それ故に汚いものや醜いものは徹底的に排除していた。
なのに見た目究極のオタクである立花をそこまで気に入るのは親衛隊の人間にとってはまさにこの世の終わりに近いだろう。
「…有里」
ギュッ
「わ、里久!?」
そしてまた、花に群がる虫の如く立花に近づいた人間が一人。
。
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