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「え、それで終わり?」
「終わりだけど」
「いやいや、そこは俺が教えてやるからとか言うところじゃないの!?」
「なんで俺がそんな面倒なことやらないといけないんだよ」
本当に嫌そうな顔をしたカナタさんに俺は肩を落とす。
まぁ確かにカナタさんが初心者に丁寧に何かを教えている姿は想像できないけど。
だけどカナタさん以外この世界で知り合いのいない俺が誰かに教えてもらうことは不可能に近い。
やはり頼み込んででもカナタさんに教えてもらおうか……そう考えていた時、俺達に突き刺さる数多くの視線に気づいた。
「……」
多くの人が、俺達を見ている。ある人は珍しいものを見たかのように、ある人は恐ろしいものを見たかのように、ある人は忌まわしいものを見たかのように……
好意的なものは本当に少なく、まるで檻に入れられた珍獣のように見られていた。
何で今まで気づかなかったのかと逆に思う程、遠慮がちに、だけど確かに見てくる。
「気にすんな」
歩いている足を止めることなく、カナタさんが呟く。
「別に何かしてくる度胸がある奴らじゃねェ。無視しとけ」
「でもなんで…」
「言っただろ。ここじゃ銀色っつーのはイケナイ色なんだよ」
自嘲するように言われ、改めて街の人たちを見回した。
俺と目があうと皆怯えたように目線を逸らし、慌ててその場から立ち去っていく。
銀髪であるカナタさんと一緒にいるだけの俺でさえあの人たちにとっては恐怖の対象なのだろうか…実際はかなり無力な一般ピーポーだけど。
「じゃあ何でカナタさんは髪を隠したりしないんだ?」
日の光が反射してキラキラと光って見える銀髪を堂々と晒しているからこういう目で見られるんじゃないのか?
「………これは俺の"誇り"なんだよ」
どこか遠くを見ながらカナタさんは小さく呟いた。
皆が嫌っていると言っていた銀色が、カナタさんにとっての"誇り"…?
「だから俺は絶対にこの髪を隠さないんだ…何があっても」
「カナタさん…」
カナタさんにはカナタさんなりのこだわりがある、ということなのだろう。
銀を"異常者"の象徴と言ったカナタさんの誇り……
俺にも何か誇れるようなものがあるのだろうか?
他人に何言われようと絶対に曲げることのできないぐらい、大事なものが…俺にはあるのだろうか?
いや、ある……俺には柚樹という大事なヤツがいる。
アイツを助けるためだけに、俺は今こうしてカナタさんと一緒にいるんだ。
「おい、ついたぞ」
柚樹のことを思い出していると、ようやくギルドとかいう目的地についたらしい。
大きな建物だがコンクリートむきだしで無骨な印象を受ける建物だ。
そのままドアを開けて中に入っていったカナタさんの後について俺もまた、ギルドへと足を踏み入れた
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