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16 拒絶しなきゃ守れなかった


「クローム?」


明るい茶髪の少年は、恐る恐るといった様子で目の前の少女の名前を口にした

少年にとって、今日はあまりいい日とは言えなかった

通学途中に電柱にぶつかり、学校では抜き打ちテストがあり、大好きな女の子の前で派手に転び、家でやった宿題を持ってくるのを忘れて怒られ………とにかく散々な一日だった

そして心身共に疲れきって下校している最中、この少女に問答無用で腕を掴まれ、こうして並盛から少し離れた空座町に連れてこられるという悪夢

早く家に帰って早く寝たい


「…クローム、どうかした?」


名前を呼んでも反応がなかったため、もう一度問いかける

それでも無視されてしまい、思わず顔がひきつる

……いや、無視したというよりも…聞こえていないのかもしれない

ずっと、先ほどまで自分たちがいた公園を見つめたまま、動こうとしないクローム

引きずるようにして連れてこられた時もいつもと様子が違い、切羽つまったような…追いつめられたような表情をしていたため強く腕を振り払うことができなかった

まだ出会ってからそれほど日はたっていないが、それでも今の彼女の様子はいつもとは違うことぐらい理解できる


「………亜希……?」


「え?」


小さく呟かれた言葉――いや、名前

半信半疑、といった様子で紡ぎだされたそれは、彼女の双子の妹の名前だった


「亜希ちゃん、ってクロームの妹の…?」


「う、ん……」


誰もいない公園を、ただジッと見つめるクローム

先程のコスプレとしか思えない格好をしたオレンジ色の髪の男の姿もまた見えない

いつのまに帰ったのだろうか……頭をよぎる小さな疑問


「まるで…あの子が、泣いてるような気がして…」


まるで、助けを求められたような――悲鳴に似た声が聞こえてきた

気のせいかもしれないが、あの子の声を聞いた気がしたのだ

もう何年も会っていない、大切な双子の妹の声を


ズキン


「…亜希……」


前触れもなく、鋭い痛みを伴う頭痛がしてクロームは顔をしかめるも、公園から目をそらすことはしない

姿は見えない――だけど、その存在をクロームは確かに確信していた

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