Not Found | ナノ




12





「いいかー?この文はちょっとオクが深くてだな――…」


越智サンが何やら説明しているのだが、すべて右から左へと流れていってる

今、一護が関心を持っているのは教科書なんかではなく、佐藤だ

越智サンが喋っている内容を一生懸命ノートに書き写している姿は1学期の頃からまったく変わらない

予習・復習を欠かしたことがないらしい佐藤だからもちろん成績はいい

毎回貼り出される成績表の上から5番目までには必ず名前は載っている

十分それですごいのだが…その成績表を見る佐藤は、とても悲しそうな顔なのがずっと気になっていた


「はい、じゃあこの言葉の意味は何だ?んーそうだな、佐藤!」


『あ、はい!えっと、"騙されないように用心する"です』


"眉に唾を塗る"という慣用句の意味をスラスラと述べる佐藤


「よし正解だ。んでこの文がだな――…」


そのまま説明を続ける越智サン

だが周りのクラスメイトは少し違った



――なんでアイツが…


――何?カンニングとか?


――クスクス…



「………」


越智サンには聞こえず、佐藤には聞こえる音量で囁く人たち

……正直、あんまり気分のよいものではない

佐藤も俯いてジッと拳を握っているのが見える

いつからクラスの雰囲気がこんなに悪くなったのだろうか…

ため息が自然とでてくるというもの


「…はぁぁー」


「………何だ黒崎ー。私の授業はため息がでるほど退屈か?」


「げ…」


いつのまにかすぐ近くに越智サンが笑みを浮かべて立っていたが…その笑みはひきつっている


「退屈しないようにたっくさん宿題だしてやるからなー黒崎」


「はぁ?そりゃねぇって越智サン!」


このやり取りに笑い声がそこらしかであがり、先程までの嫌な空気は霧散していた

そのことに少しだけ安堵して…何気なく隣を見やった


『……』


佐藤はこの騒ぎにもニコリともしないで集中した様子で教科書を読んでいた

以前だったら控えめではあったものの笑っていたのに…その顔は無表情そのもの

まるで入学したての頃に戻ってしまったかのように自分の殻に閉じこもってしまっている佐藤を、一護は黙って見ることしかできないのだった



殻は自分をるため
(それが今できる唯一の自衛策)

[ 18/122 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -