06
「……私が勝手にうろうろしてたのがいけなかったのね。ごめんなさい…白梅さん」
名前を呼ばれただけでまた勝手に手が動こうとするも、零にまだ腕を掴まれているせいでそれは不可能だった
「それと…庇ってくれてありがとう、優姫さん。"いいコ"ね…ホント好きよ……私、知ってるわ…貴女みたいなコの血はとても美味しいの…」
首筋に軽く指を添えて言われた言葉に優姫はゴクリと喉をならす
やはり吸血鬼に首を押さえられているのは気分のいいものではないだろう
「仲良くしてね…優姫さん、白梅さん…」
クスリと笑い、まり亜はその場を離れた
恐らく寮に戻るのだろう…その姿が完全に見えなくなってから、茜は全身から力を抜いた
「…ねぇ、どうしたの?茜…さっきのまり亜さんに…」
『別に…大丈夫よ…』
「大丈夫って…だってさっき、零に止められてなかった茜……」
『大丈夫だって言ってるでしょう!?』
イライラしたように叫ぶと優姫の肩がビクつく
それに気づいていながらも、今の茜に誤魔化せる程の余力はない
『ごめんなさい…でも本当に何でもないの。少し気が動転しただけ…もう部屋に戻るわね、私…』
これ以上ここにいたら優姫をもっと傷つけてしまいそうで、足早にその場を立ち去った
ずっと護られてきた優姫を前にして、今は笑っていられれる余裕はない
「……どうしちゃったんだろ、茜」
「……」
徐々に小さくなっていく茜の背中を見ながら小さく呟いた優姫の言葉を聞きながら、思い出すのは先ほどのやり取りだ
――私はね、どうしても自分の手で決着をつけたい吸血鬼がいたから、かな
――零にも、いるでしょう?絶対に自分で殺してやると心に決めてる吸血鬼が…
「…零?」
「……いや…なんでもない」
もしかしたら、茜は自分と同じ"奴"を探していたのだろうか……?
答えの出ない問いを胸に抱きながら、茜が去っていった方向をただ見ている零だった
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