学園帰還



歩きなれた山道を、小走りに進んでいく。
手には学園長に頼まれたものが入っているふろしき。その中からは少し甘い匂いが漂っている。


「全く……学園長も、カステラなんぞ1年生んでも行かせればいいものを……」


学園についたら報酬替わりにカステラを少し頂こう、と呟いていると、目的地の学園が見えてきた。
忍術学園――――忍びの卵を育てるための学び舎。儂・暁成秋椰は現在進行形でそこの用心棒兼教員補佐をしている。
それはともかく、朝出発したのにもう日が暮れかけている。
恐る恐る門をくぐると、そこにはサイドワインダーこと事務の秀作が立っていた。


「秋椰さん、おかえりなさい〜!随分と遅かったですねえ」

「うむ、カステラ屋がものすごい行列でのう……そういえば秀作、儂が居らぬ間に何か変わったことはあったか?」


秀作の持っている入門表にサインをしながら立場上一応確認のためそう問うと、予想と反して秀作は言いづらそうに少し俯いた。


「ええと……とりあえず、学園長室まで行ってください。」

「学園長室……?まあよくわからんが、どうせコレを届けるつもりじゃったし、了解じゃ」


じゃあな、と秀作に手を振って別れを告げ、学園長がいる庵へ足を向ける。
さっきの秀作の態度は果たしてなんだったのだろう。そんな疑問を残しながら、ふろしきを両手で抱える。















カステラの匂いに交じって、何か違う甘い匂いがしたような感じがした。





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