■ テディベアに殺される

悲(?)解釈はtwitter参照

*
「あれ?ハットリくん」

   彼が運ぶにはいささか大きすぎな気のする荷物を、やっぱりちょっと重たそうに持って開け放たれた窓から入ってくる彼――もとい鳩のハットリくんは、荷物を机へ下ろすと一声鳴いてわたしの方を見る。

   はやく開けろってことなんだろうか。

   ハットリくんが届けてくれたってことは送り主はきっとルッチさん。改めてその箱を見ると、いかにもプレゼントです、といった包装のそれが怪しさを醸し出していた。送り主が分かってるからこそ彼とプレゼント、という単語が結びつかなくて頭上に疑問符が浮かぶ。
   ていうかもしかして、びっくり箱とかなんじゃ? プレゼントよりはありえる。
   わたしがその箱をどうしようかともたもたしているうちに、ハットリくんは天井付近で旋回して、それからどこかに居る彼の元に飛んでいってしまった。

   取り残されたわたしは仕方なく丁寧に掛けられたリボンを解いて包装紙を剥き、白の箱に手をかける――
   幸いなにかが飛び出るわけでもなく、中を覗くと茶色の毛並みが愛らしいテディベアが座っていた。

「可愛い......」

    思わず声が漏れるのも仕方がないくらい可愛い、けど。彼がわたしに何かを買ってくれたことなんてなかったはずなのに。ましてや今日はただの平日。誕生日ですらない。一体どういう風の吹き回しなんだろう。
   まあ悩んでも本人がいないんだから確認のしようがない。それにこの子に罪はないし。テディベアをそっと台座から外し手に取ると思わず口元が緩む。

「んー、かわい」

   わたしだって乙女なんだ、彼からのぬいぐるみのプレゼントが嬉しくないはずがない。
   ぎゅっと胸元で抱きしめた時だった。

   ズキ!と鋭い痛みが走って息が詰まる。

「い、......ッ!」

   あまりの痛みに膝をついた足元にはぱっと飛び散った数滴の緋。
   それを見てしまって急に遠のく視界と血の気が引いている感覚、体中から吹き出す冷たい汗。

   ――テディベアに刺されたんだ。

「るっ、ちさ、」

   白い鳩は平和の象徴で、幸福を運ぶんじゃなかったのか。

   テディベアのお腹にはよく研がれた折りたたみ式の小型ナイフが仕込まれていて、こんな仕掛け、わたしがすぐ可愛いものやぬいぐるみを抱きしめることを知ってるルッチさんだからできたんだ。

   ......そっか。

   なんで、どうして、と思うよりも妙に納得している自分がいる。

   きっともう彼らに会うことはない。

   わたしにもあの純白の翼があったら、どこまでもルッチさんについていけたのかな、なんて遠のく意識の中の考え事は今更どうしようもなくて。

   ばかみたいに震える手で遠ざけたテディベアの腹からは、白いはらわたが涙みたいにぽろぽろ落ちた。


   ばいばい、不器用なルッチさん。

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