9
カシャ
「送信と…」
凛は、仮免許の写真を撮ってオールマイトにメッセージで送った。
今日は用事があって会えないと聞いていたからだ。
彼は昨日、散々授業後に激励の言葉を言い、凛よりそわそわ緊張していた。
凛は、そんなずっと支えてもらった父に早く報告したいと思ったのだ。
まぁ早く安心させたいという思いも少しあったのだが。
「おーい!轟!また講習で会うな!けどな!正直まだ好かん!!先に謝っとく!ごめん!」
夜嵐が走って近づいてきたと思ったら、言うだけ言って走り去って言ってしまった。
本当に嵐のような男である。
「こっちも善処する」
「…すぃ☆彼は、大胆というか繊細というか…どっちも持ってる人なんだね☆」
轟と夜嵐のやりとりを見ていた青山の感想はまさに的を得ていた。
「まぁ…お互いに気づけたんだ。ほぼ毎週会うわけだし大丈夫だろ」
「ああ。そうだな」
いつもそうだった。
凛が大丈夫という言葉には安心感が湧いてくる。
轟は柔らかく微笑んで彼女に応えた。
凛は帰るための移動を始めていると、緑谷が士傑の人と話しているのが聞こえてきた。
会話を聞く限り、話題は現見のことをらしい。
そう言えば彼女はどこかこの試験場にいるには違和感があった。
言うならば、合格するためにあるわけではないような。
不思議な雰囲気を持った人だったなと考えることをやめ、凛はバスへと向かった。
―――
『やっと繋がった!どこで何してる!?トガ!!』
なんと、仮免試験にいた現見の正体は火災によって返信した敵連合のトガだったのだ。
電話の相手は同じく敵連合のMr.コンプレスだった。
「素敵な遊びをしていました」
『定期連絡は怠るなよ!1人捕まれば全員が危ないんだ!』
「大丈夫なんです。私は今まで捕まらずに生きてきたので。それに有益でした。弔くんが喜ぶよ。出久くんの血を手に入れました」
彼女の持っている瓶には、血が数滴入っていた。
血は彼女の変身能力に欠かせないものである。
それ以前に、彼女の大好物なもの。
好きな血、何より気になる人の血にトガはうっとりした目で見つめた。
『それは朗報だな』
「それに凛ちゃんも元気にしてましたよ。かぁいかったです。そばにいられるようになるのが楽しみです」
口元に手を持って行き、ニヤァとトガは笑った。
凛の知らないところで、闇が忍び寄っている。
この闇が彼女を捕らえるのは、遠からずの未来に起こるかもしれない。
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