『うぉ!?脱落者120名!1人で120人脱落させて通過した!!』

通過者第1号の放送に凛は、そろそろ続々通過者が出ることを予想し気合いを入れ直した。

「八木の個性は基本1つの鎧につき1つの性能しか備わってない!複数の個性で畳み掛けろ!!」

炎、水、雷など複数属性の個性が一斉に凛に向かってきた。

「確かにな。…だが、それ以上のスピードで動き、剣を届かせてしまえば問題ない。換装!天輪の鎧」

引き出せる力の上がった鎧たち。
天輪の鎧でも十分、避けることができた。

「これでどうだ!!」

別の者たちが攻撃を避ける凛に別方向から近づき、今度は至近距離で攻撃を当てようとした。

「そして、私の剣術が上がっていないとは考えなかったのか」

凛は、全攻撃を文字通り斬り捨ててしまったのだ。
攻撃をしかけるどころか、彼女の剣を前にしたら通りもしない。
そんな状況に皆唖然としてしまった。

「今度はこちらからいく。天輪・流星の剣!」

凛は、複数の剣を流星のように四方八方に舞わせて彼らのコスチュームごと、地面に刺し動かないよう固定した。
そして、流れるようにそのままボールを当てたのだ。

『通過者2人目!!これから続々ときそうです』

目良の放送に皆は大丈夫かと凛は心配しながらも、指示に従って控え室に向かった。

「あの!雄英の八木さんですよね!体育祭見てました!変身する個性かっこいいっス!すごかったっス!」

控え室に入ると早々、試験前に円陣に参加してきた士傑の夜嵐が大きな声で話しかけてきた。
自分より先にいたということは、1人目の通過者はこいつだったのかと相澤の『強いぞ』と言っていた言葉を思い出していた。

「特にあの剣をたくさん舞わせている鎧が羽とか生えててかっこいいっスね!俺アレが1番好きっス!」

先程からべた褒めしてくる夜嵐に凛ももちろん悪い気はしなかった。

「ああ。ありがとう。夜嵐も120人も脱落させたってすごいな」

「いや〜テンションが上がっちゃって!好きなヒーローはやっぱり父親のオールマイトですか!?」

テンションが高い夜嵐との会話はそのまましばらく続いた。と言っても、ほとんど夜嵐が一方的に話しかけてそれに凛が相槌を打っているだけだったが。
通過者がどんどん控え室に集まり半分を超えたところで、先ほどまで笑顔で話しかけてきていた夜嵐が突然暗く鋭い顔をした。

「夜嵐?」
「すみません!八木さん!そろそろ失礼します!この後も頑張りましょう!」

そそくさと去っていく夜嵐と入れ替わるように現れたのは、轟だった。

「凛。早かったな」
「まあな。クラスの皆はまだみたいだな。心配だな」
「ああ」

凛の心配そうな顔に轟も同意した。
そして、轟はこの部屋に入った時に気になったことを凛に尋ねてみることにした。

「そう言えば凛。さっき話してた奴…」
「夜嵐のことか?朝会った」

彼女の返答に轟はコクッと1回頷いた。

「あいつ俺のことをよく思ってねえような顔で見てたんだが、何か俺のこと話してたか?」

轟の答えに普通なら考えすぎじゃないのかと言うところだが、実際その表情を目の前で見た凛は彼が尋常じゃない感情を抱えているように感じた。

「いや…特に何も…。…焦凍。本当に見覚えないのか?」

凛の問いに轟は眉間にシワを寄せて、考え込んでしまった。
表情が晴れない様子を見るに本当に心当たりがないようである。
しかし、凛は不安を拭い去ることができなかった。
夜嵐は轟を見たあの一瞬だけ、体育祭前の轟と同じ目をしていたからだ。深く暗い炎の。


―――


八百万、蛙吹、障子、耳郎も無事に通過し、残りのA組の面々が来ないかヤキモキしていると、緑谷、爆豪、麗日、切島、上鳴、瀬呂が控え室に入ってきた。

「皆さん!よくご無事で!心配していましたわ」
「ヤオモモー!ゴブジよゴブジ!つーか早くね皆!?」
「俺たちもついさっきだ。八木と轟が早かった」
「爆豪も絶対もういると思ったけど、なるほど!上鳴も一緒だったからか」
「はぁ!?おまえちょっとそこなおれ!」

どんどん集まってくるA組にいつも通りの明るい雰囲気がそれを実感させてくれる。
A組はこれで12人。アナウンスでは残り10枠。対するA組の残りは9人。
この事実は、個性を知られ不利な状況にいるA組が全員通過できるか不安にさせた。
しかし、ここから怒涛のA組ラッシュが始まった。

『100人!今埋まり!終了!です!ッハーーーー!!』

「おォォオ〜…しゃぁぁあああ!!」
「スゲェ!こんなんスゲェよ!!」
「雄英全員一次通っちゃったあ!」
「とりあえずはこれで一安心だな」

あの狭き門の中、全員無事通過できてA組は沸き立った。
誰もが笑顔に包まれ、凛も放送を聞いた瞬間思わずガッツポーズをしていた。


『えー100人通過者の皆さん。これご覧ください』

放送が入り、先ほどまで自分たちが戦っていたフィールドが映し出された。
何が映されるのか不思議に思ってみていると、突如爆音を轟かせてフィールドが破壊された。
莫大なお金をかけてるはずのフィールドをなぜ壊す!?と誰もが驚愕した。

『次の試験でラストになります!皆さんはこれからこの被災現場でバイスタンダーとして救助を行ってもらいます』

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