「で、八木ですが精神力、苦手な遠距離相手にも自分のフィールドに持っていけるテクニック、はっきり言って現段階の課題はありません。今までの成績から見ると、彼女は仲間がいるほど、強くなる傾向があります。なので、今回は1人でやらせようと思います」

おお、ほんと凛ちゃんのことをよく見てると、相澤の言葉にオールマイトは思った。

「対戦相手なのですが、今まで一点突破型の遠距離と戦うことはありましたが、全方向からの細かい遠距離を経験したことはありません。その初めての状況にどう立ち向かえるか。外部からそれに適したプロヒーローを呼ぼうと思います」

「異議なし!」

こうして、OKサインの出たホークスが凛の対戦相手として決まったのだった。


―――


「換装!飛翔の鎧」

制限時間30分は、鎧の種類によっては許容範囲を超えてしまう厳しい時間である。
門の前に立つホークスに、凛は、初撃が大事だと思い速さで近づき、フェイントをかけカフスをかけようと決めた。

「そんなんじゃ俺は捕らえられないよ」

猛スピードで近づく凛は、横からの気配を感じすぐに避けて止まった。
彼女のいた地面には羽が数枚刺さっていた。
しかもそれだけではない。気づいたら羽に全方向囲まれていた。

「それだけ?来なよ。ヒーロー」
「くっ…!」

次々と襲い掛かってくる羽に凛は、防戦一方となった。
しかし、そんな中でもきちんと彼女の頭は冷静で得られる情報を得ようとしていた。

ホークス自身は重りをしているため、本来のスピードは出ていない。
しかし、飛んでいる羽は重りなんて関係ないのだ。
羽を打ち返して分かるが、この羽自体にパワーはあまりない。ただ厄介なのがこのスピードだ。
このスピードは今の私の力で引き出せる飛翔の鎧よりも早いと凛は直に感じた。
さすが速すぎる男である。

この羽がある限り、脱出ゲートに行ける確率はかなり低く、それよりは隙をついてカフスをつける方がまだマシだ。
ただ、マシなだけ。どうするか…凛は、必死に思考を巡らせた。

「よそ見しててもいいのかな」

はっと振り向くと猛スピードの上、広範囲の攻撃が迫っていた。

「換装!天輪の鎧!」

凛は咄嗟に、換装し複数の剣を舞わせて攻撃を相殺した。
しかし、1回凌いだからといって、攻撃はやまない。
このままではエンドレスにこの状況が続く。
まずは一旦この囲まれた状況から脱出して、体制を立て直すべく、凛は動いた。

「はぁ…はぁ…換装!明星の鎧」
「つっ…!」

明星の鎧の効果である光を発した。
突然光るとはホークスも思わず、目が眩んだ。
凛はその隙に一旦離れ、建物に身を隠した。

『報告だよ。条件達成。最初のチームは轟・八百万チーム!』

「はぁ…はぁ…さすがだな」

凛は一回深呼吸して、目を開いた。
作戦は決まった。

ホークスの弱点は力技、そして重りのせいでホークス自身の機動力はかなり低い、この2点だ。

「換装!巨人の鎧」

凛は、投擲と腕力を高める鎧を装着しホークスの前に立った。

「おっ!すごいの持ってるじゃん」

そう凛の手には彼女の背を優に何倍も越す巨大な槍が握られていた。

「蜻蛉切!!」

彼女は思いっきり横に何度もなぎ倒した。
すると、ホークスの羽がそのパワーに負けて押し流れていく。

視界がひらけた!ここしかない!

凛は、思いっきり蜻蛉切をホークスに向かって投げた。
しかし、それはホークスに当たらない位置に飛んでいき彼は余裕で避けた。

「当てずっぽうじゃ当たらないよ」
「換装!飛翔の鎧」

最初と同じでスピード勝負で向かって来た凛にもちろんホークスは背中に残ってる羽で応戦しようとした。

「ん?これは…」

しかし、壁に刺さっている蜻蛉切の柄の部分が羽を引っ掛けて、出すのが一瞬で遅れた。

「はぁぁぁあああ!」

ガチャン!!

『八木凛。条件達成』

「やった…はぁ…はぁ…」

凛は、試験が無事に終わったことに安心し、疲労感から尻餅をついた。

「やるね。最後の作戦は驚かされたよ」

そう言いつつも、ホークスは息も切らさず、羽にも余裕があり、手加減されていたことがわかり凛は悔しく思った。

「いえ、まだまだです。これからもっと精進します」

凛の言葉にホークスはカラカラと満足げに笑った。

「ははっ。楽しみにしてるよ。またね、凛ちゃん」

彼の立ち去っていく背中を見ながら、あれ…下の名前?と疑問に思ったが、認めてくれたのかなと、最初は訝しげに思っていた直感というものを凛も信じたくなった。
また会える日まで。

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