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体育祭翌日、凛は食材の買い出しに出ていた。
オールマイトが昨晩ほとんどの食材を使ってしまったからだ。

実は、昨日帰宅した凛を待っていたのは、豪勢な食事と浮き足立ちまくりなオールマイトだった。
横断幕には『体育祭プルスウルトラ!』と書いてあった。それを見ながら、いやそこはお疲れ様だろと冷静にツッコんだが。
オールマイトは凛の活躍を自分のことのように喜んでくれた。
録画した凛の活躍部分を見だした時は恥ずかしくてやめさせたかったが、彼の嬉しそうな顔を見て、まぁいいかと我慢した。

やはり嬉しさの方が優ったからた。
凛は思い出して、頬を緩めた。

「ん?」

凛は、見覚えのない店を見かけ立ち止まった。

「かっ…かわいい!!」

最近できた店なのだろうか。
凛の好みをドンピシャについていた。

何を隠そう凛は、かわいいものが大好きなのだ。甘いものも大好きだし、趣味やら何やら女子力高めなものが多い。
しかし、彼女はこれを隠していた。
女子にモテてしまうほどのイケメンすぎる過去が大きな原因だった。
やはり、世間は凛の事をイケメン王子として扱うのでこういうのは自分には似合わないと思い込んでしまっているのだ。
知っているのは、オールマイトなど凛の過去を知る本当に一部の者だけである。

凛は、周りを確認し、誰にも見られていないことが分かると店の外側に並んでいる商品を物色し始めた。

「あっこれいいな…」

そう言って彼女が見ていたのは、ヘアアクセサリーのコーナーだ。
その中でも、花の装飾品が付いたものが気になった。色も種類もさまざまでずっと見ていられた。

「まぁでも買ったところで似合わないからな…」
「八木?」

凛が寂しそうにポツリと呟くと、突然自分の名前が呼ばれ、ビクッと肩を上げ驚いた。

「とととと轟!?」

その方向を見てみると、私服姿の轟がいた。

「どっどうしてここに?」

今の姿見られてなかったか凛は気が気じゃなく、動揺してどもってしまった。

「用があってな。…そうだ八木。ちょっと付き合ってくれねぇか」

先ほどのこともツッコまれなかったから見られてなかったのだろうと判断し、凛は安堵した。
買い物も終わり、特に用事もなかったので彼女は二つ返事で了承した。

そうして轟に連れられて来たのは花屋だった。

「母への見舞い用の花を選んでもらいてぇんだ。俺そーいうのよくわかんねぇから」

詳しいことは聞いてないからわからないが、おそらく轟は一歩踏み出そうとしているのだろう。
凛は、嬉しくなり微笑んだ。

「ああ。私でよければ」

そうやって轟と吟味し、満足のいく花束を作ることができた。

「八木。ありがとな。助かった」
「いや、たいしたことない」

お互いの行く道の分かれ道まで差し掛かった。
彼の顔は緊張感に包まれており、どこか不安げだった。
凛は、轟の不安が少しでも溶ければいいと彼の手を優しく握った。

「大丈夫」

たったそれだけだったが、凛の温かい気持ちが十分伝わって来て轟は安心感に包まれた。完全とはいかないまでもだいぶ緊張感が和らいだ。

「じゃあまたな」
「っ…八木!」

離れようとする凛の手を咄嗟に轟は掴んだ。
凛は突然のことで困惑し、どうしたのだろうと疑問を浮かべた。

「…ちゃんと気持ちの整理がついたら、聞いてほしい話がある。それまで待っててくれねぇか?」

彼の表情は真剣で、断るなんて選択肢は凛になかった。

「ああ。待ってる」

きゅっと握り返した手を握り返した。
思いを込めるように。

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