「「「凛様〜!!」」」

客席から黄色い歓声が女の凛に上がった。
ほとんどが雄英の女子生徒だった。

『入学当初から真摯な対応にすでにファンクラブ設立!男よりモテるイケメン系女騎士!羨ましいぜ!ヒーロー科 八木凛! 対
2位・1位と強すぎるよ君!同じくヒーロー科 轟焦凍!』

凛は、轟の目を見てはっとした。
今までで1番、暗い激情の炎を宿していたからだ。

『START!!』

「悪ィな」

轟いは開始早々、会場を覆うほどの巨大な氷を出した。
会場中の誰もが唖然とし、この試合は終了したと思った。

パキン…ドカァァァン!!

氷にヒビが入ったと思ったら、見事に何当分にもされ崩れ去ったのだ。
そして、何か早いものが轟に迫って来た。
轟は咄嗟に氷を手に纏わせそれを受け止めた。
中から飛び出して来たのは、氷帝の鎧を纏った凛だった。

「確かに私は関係ない。でも…そんなの知るか!ただ私は、お前のそんな顔見たくないだけだ!」

「くっ…」

凛は、そのまま横に一閃し、轟は氷を足場にし回避した。
轟はそのまま凛が近寄らないよう遠距離攻撃に徹して、凛はそれを剣で防衛した。
フィールド上を派手に使って、拮抗した状態が続いていた。

「はぁはぁ。何でそんな顔してるんだ…。なんでそんな苦しそうな顔をしてるんだ」

「何もしらねぇ奴が首突っ込むんじゃねぇ!」

轟が激昂し、攻撃を繰り出した。
しかし、凛はそれを再び剣で斬り捨てる。

「ちゃんと自分を見ろ!お前はお前じゃないか!?轟!」
「っ……うるせぇ!」

かなりの時間を氷帝の鎧をつけた状態で費やした。
今の凛の剣術そして、氷帝の鎧の力を引き出す力では轟と互角の勝負しかできない。
ならいたずらに長引かせて許容範囲を迎えるより、早めてしまうリスクがあってもあの鎧を使うべきかと凛は考えた。
それに轟の方も動きが鈍くなってる。
恐らく体についている霜…あれが轟の弱点と凛は確信した。そして同時に左を使えば克服できるものだとも思った。

「換装!黒羽の鎧!」
「ぐっ……!」

轟の出した氷が全て斬られた。
先ほどまでの拮抗した状態が崩されたのだ。

なぜなら、凛の攻撃力が大幅に上がったからだ。
そう、それこそがこの鎧の能力。
だからこそ、許容範囲の時間が早まってしまう。

そこから先は轟が防戦一方で、完全に押されていた。

しかし、凛は、活動許容範囲が迫っていた。そして轟自身もこれ以上長引かせると不利になっていくことに気がついていた。

お互いに次の攻撃がおそらく最後だと力を込めた。

「はああああああ!!」
「あああああああ!!」

轟は最初に見せた巨大な氷を出し、凛はそれに思いっきりぶつかっていった。
凛の剣とぶつかった瞬間、氷がすごい勢いで崩れ去り、フィールドが土煙で見えなくなった。

見えるのは、お互いだけだった。
攻防を制したのは、凛だった。
そのまま彼女は轟の元へ走り抜け、その剣が自分を捉えたと轟は思った。

しかし、痛みはいつまでも轟を襲ってこなかった。
代わりに、温かなものに自信が包まれるのを感じた。

それは轟にもきちんと見えていた。
凛が剣が届く直前に換装を解き、そのまま優しく轟を抱きしめたのだった。

「…お前は誰のものでもない。ーーーーー」

「っ……」

凛はそのまま轟の横にずれていき、静かに地面に倒れていった。

その瞬間、ようやく会場の土煙が晴れた。
ミッドナイトが凛の様子を見て許容範囲を超えたと判断した。そして、凛がキャパを超えるとどうなるか知ってたミッドナイトはさりげなく個性を発動した。

『八木さん…行動不能。轟くんーーー…二回戦進出!!』


本当は騎馬戦で、凛を誘いたかった。
凛に、クソ親父との事話してしまいたかった。
あの抱きしめられた時の温もりに、すがりついて泣いてしまいたかった。
あのまま身を委ねてしまいたかった。

しかし、そうしてしまえば長年貯め続けたこの恨みが、劇場が全て消えてしまいそうで、目的が揺らぎそうで…轟は運ばれていく凛から目をそらした。


『なりたい自分になっていいんだ』

先ほど凛に言われた言葉…昔誰か大切な人にも似たようなことを言われた気がした。
今はもう思い出せない。

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