1
昼時、巡回を終えた凛は気分転換に街中の定食屋さんで昼食をとろうと、街に出た。
「凛姉!!!」
凛が呼ばれた方向に顔を向けると、万事屋一行がいた。
「こんにちは。神楽ちゃん、新八くん、銀ちゃん」
挨拶を終えた凛はすぐに違和感を覚えた。銀時がすぐに凛に話しかけてこなかったからだ。いつもならあんなに話しかけてくるのに…と思って見つめていると、また別の違和感を感じた。銀時の顔を見つめながら考え続けると、その原因を発見した。
「あ!眼が生きてるからね!」
凛は普通なら心の中に留めておくような、なかなか失礼なことを声に出して言い放った。
―――
「記憶喪失?!」
新八と神楽から説明されて、凛は驚愕する反面、納得もした。
「だから凛さんから、何か銀さんに昔話でも、聞かせてくれませんか?何か思い出すかもしれませんし」
「昔話…」
新八の頼みに、どのエピソードが良いだろうかと凛は頭を巡らせた。
「あの、こちらの綺麗な方は僕と一体どういう関係なんですか?」
「銀ちゃんの妹の凛姉ネ」
「妹?!僕に妹さんがいたんですね…凛さん…」
考え込んでいる女性と自身の関係が気になった銀時は尋ねて、自分に家族という存在がいることに驚いた。
「そういえば昔、銀ちゃんが気持ち良くしてやるって私の上に乗って」
ようやく、どのエピソードを話すか決めた凛は笑顔で話し出したが、その内容に神楽と新八は激怒し、何も覚えていない銀時を殴りまくった。
「妹相手に何やってんだァァァア!この天パ!」
「見損なったアル!このケダモノ!」
「ふ、2人とも!何に怒ってるの?私は他ただ、戦中に体が痛んで困った時に銀ちゃんがマッサージで痛みを和らげてくれたよねって話をしようとしただけで…」
2人の様子に、なぜ怒っているか分からない凛は困惑した表情で2人を止めた。総合して聞けば、兄妹の仲睦まじいエピソードなのだが、今回に関しては話す順番が悪かった。
「「え…」」
停止する2人をよそに、銀時は目を瞬いた。
「君たちは誰だ?」
―――
「力になれなくてごめんね。」
「大丈夫です。むしろありがとうございました」
凛の謝罪に対して、新八と神楽は口では大丈夫だと言うが、やはりどこか元気がなかった。
「大丈夫。銀ちゃんはちゃらんぽらんでも、必ず最後にはいつも帰って来たじゃない。銀ちゃんは私にとって家族だけど、2人にとっても家族でしょ?記憶なんてものじゃなくて、もっと根っこのところで繋がってるんだから。その絆を信じて。」
真っ直ぐ見つめてくる凛の励ましの言葉に2人は元気が出てきて、意気揚々とまた記憶探しに向かっていった。
[ 56/254 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]