辺りもすっかり暗くなり、凛は銀時に真選組の屯所まで送ってもらっていた。

「あそこがもう門だからここまででいいよ。銀ちゃんの素敵な家族を紹介してくれてありがとう。…今日たくさん出会ったたくさんの人たちが万事屋の本質なんだね。今でもこれからもああして守って繋がって行くんだね。銀ちゃんはやっぱり昔も今も変わってない!私が大好きなお兄ちゃんのままで安心した。」

凛は満面の笑みで銀時の方を向きながら言った。

「え?大好き?!心のメモリーに録音にするからもう一回!もう一回言って!」

「ふふふ」

「笑顔も可愛いけど!もう一回!頼むよー凛ちゃーん」

銀時は全然関係のないことに食いつき出したが、凛は見えていた。銀時の耳が若干赤くなっているのを。

「えっ、、、!」

2人でふざけあっていると、凛は突如手首を後ろにグイッと引っ張られ、背中が何かに当たるのを感じた。驚いた凛は手首を掴み自分と密着するものを見た。




―――数分前

仕事で屯所を出ていた土方は、やっと帰宅しようとしていた。すると目の前に見覚えのある人物が見えていた。凛である。

篠崎か。あいつ非番だったし、出かけてたのか。と思っていると、凛が1人でないことに気がついた。しかもその人物は土方も知る人物だった。
急に黒いモヤモヤしたものが土方の中で広がり、気づいたら凛の手首を引っ張り、自身の方に引き寄せていた。

「おい、お前。何で篠崎と一緒にいる」

凛は自身に密着している人物に驚きの声をあげた。そして土方だとわかると、ドキッと胸が高鳴るのを感じた。

「ひ、土方さん!」

「はー?何で凛と一緒にいるのに大串くんの許可なんているんだよ」

銀時は突然妹との楽しい時間を邪魔され、憤慨し、鋭い表情を浮かべる土方に突っかかった。

「俺は篠崎の上司だ。」

「何でプライベートまで仕事の上司が関与すんの?パワハラ?ブラック企業ですかコノヤロー」

「なんだと!テメッ」

2人の喧嘩がますますヒートアップしていくのを止めようと凛は慌てて声をかけた。

「土方さん!落ち着いてください!銀ちゃんも煽らないで!土方さん。この人、私の兄なんです。兄だと言うのが遅くなってすみませんでした。」

兄と聞いた瞬間、土方はさっきまでの黒いモヤモヤが少し薄らいだのを感じた。

「兄…いや似てなさすぎだろ」

「あーもうそのくだりいいから。6ページ前で既にやっているから。読者飽きてるから。空気読め。」

「そんなの俺が知るかぁぁあああ!」

2人がまた性懲りもなく第2回戦を始めようとしたので、凛は刀に手をかけながら、黒い笑みを浮かべた。

「2人とも。そろそろ黙らないと、明日には二頭身になりますよ?」

「「は、はい…」」

彼女の黒い笑みが危険なことはお互い知っていたので、2人は冷や汗をかきながら休戦した。

「じゃあ凛も送り届けたことだし、そろそろ帰るわ。」

「うん。気をつけてね。」

「じゃあな。」

銀時はそう言い、凛の頭をぽんぽんと軽く撫でて帰っていった。

見送った後、凛は土方の方を向いた。

「土方さん。私たちも行きましょう。」

2人は肩を並べて歩き始めた。

2人は無言で先ほどのことを考えていた。

男は、さっきまでの感情を武州にいた頃に感じたことがあると思ったが、そんなはずはないと、見て見ぬ振りをした。

女は、先ほどの胸の高鳴りが何なのかちっとも見当がつかないでいた。驚いただけなのかなと最終的には片付けた。彼女はその感情の名前をまだ知らない。


しかし、確実に同じ想いが2人の中で芽吹きはじめていた。

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