▼ 009



城へと運び込まれた一味。ルフィとアミ以外の全員が目を覚ました。町へ買い出しに出かけたり、鍛練に打ち込んだりとそれぞれの日々を過ごすなか、ルフィは三日目に目覚めた。

隣で一向に目覚めようとしないアミをルフィは見つめると、その唇に口付けた。

「なっ!!、お、おまっ!」
「な、なにやってんの!?」

その光景を見て、クルー達は驚きの声をあげる。そんな声などお構いなしに、ルフィのキスは続く。

「…………、………ん。」

ルフィが唇を離すと、アミの宝石のような赤い瞳が開かれた。

「おはよ、アミ。」
「………あれ、ルフィ………?」

アミの瞳には、笑顔で自分を見つめるルフィがうつる。

「……………目覚めた。」
「まるで、王子様のキスで目覚めるお姫様みたいね。」
「な、なにっ!?、おれは許さねェぞ、クソゴム!!!」

ナミ、ロビン、サンジは口々に言うが恋人のふたりは聞いていない。

「……、…ルフィ!!!」

アミはルフィの胸に飛び込んだ。ルフィはそんなアミを優しく包み込む。小刻みに震えるアミの肩にルフィは驚いた顔してみていた。知らない間にアミを怒らせることをしたのかもしれない、もしかしたら泣いてるかもしれない。心配になってアミを自分の方へ向かせると、顔に熱が集まるのを感じた。アミの赤い瞳は濡れていて、上目使いで自分をみつめているからだった。

「ど、どうした……?」
「無事で……無事でよかったぁ。」

アミの瞳から涙がぽろぽろと流れ出し、ルフィの胸にスリスリとすり寄った。震えたアミの声に、ルフィは胸がぎゅっと掴まれた。愛しくて愛しくて仕方ない。

そんなふたりの雰囲気にいてもたってもいられず、他のクルー達はいつの間にか部屋からいなくなっていた。食事の時間になれば呼びに来る、そう言い残して。

「わ、私……なんの役にもたてなかった。能力を使っても、私に不運が帰ってきて……結局みんなに迷惑をかけちゃう。もっと、もっと強くなりたいよ。」
「アミは、今のままでも十分強い。」
「………、……どこも強くなんかない。」

アミは顔をあげて、ルフィをじっと見つめた。その真っ赤の瞳の裏ではなにを考えているのか、ルフィにはさっぱりわからなかったが、アミを弱いと思ったことだけはない。自分に不運がふりかかるのがわかっていながら、他人のために自分を犠牲にするのは弱い人には出来はしない。

「自分をあんまり追い込みすぎんな。」
「でも………、」
「昔からそうだ。1人で悩んで、勝手に解決して、おれを困らせて。」

ルフィは呆れたように笑った。アミがバツが悪そうな顔をすると、申し訳なさそうに眉を下げた。ルフィはアミが心配で心配でたまらなかった、恋人の婚約者の自分をもっと頼ってほしかったからだ。

「ルフィも、1人で考えて1人で行動してるよ。私も連れて行ってほしいのに、冒険とか。」

アミはあんまり冒険とかしたくないと勝手に思い込んでいたルフィは、驚いて声も出なかった。いつも連れていくのを我慢していたルフィは、その言葉が嬉しくて仕方がない。思わずニヤけてしまう。

「な、なんで笑ってるの?」
「もう離さねェ!!」

ぎゅーっと強くアミを抱きしめるルフィは嬉しそうに笑うと、頭を優しくなでた。アミもそんなルフィの笑顔に笑みをもらし、素直に撫でられる手を受け止めた。

「って、また能力使ったのか。」
「だって、私にはこれしかないんだもん。」

ぷくっと膨らんだアミの頬を優しくつまむルフィは、本当に心配そうな顔をした。自分がアミを守ると誓ったルフィだが、この先の冒険で危険なことはたくさんある。その中でアミを守ることができるのか。そんなことをグルグルと考えてしまう。

「おれの目が届かねェ場所では使うな。」
「……え、」
「心配なんだよ。」

ルフィの情けない表情に、アミは慌てた。ルフィに心配なんてかけたくない、任せられるように、信じられるようになりたいアミはルフィの手をぎゅっと握った。

「ルフィ、私を信じてよ。」
「信じてる、信じてるけどよ……、」
「?、」
「アミが……、いなくなりそうで、怖い。」
「っ!!!!」

自分を信じてくれているとわかったアミは満面の笑みをルフィに向けた。そんなアミに不覚にもルフィの顔は赤く染まる。

「私は、絶対にルフィの前からいなくならない。」
「絶対だぞ、絶対。」

アミは大きく頷いて、ルフィの唇へと自分の唇を押し付けた。

「いっつも急すぎんだよ、」
「あ、照れてる?」
「照れてねェっ!!!」

照れ隠しのつもりでルフィはアミに口づけた。真っ赤な顔のルフィをアミは見逃さなかった。







アラバスタ料理を存分に堪能して麦わらの一味はビビのお城の大きなお風呂に入っていた。

「で?ルフィとは話せたの?」
「うん、おかげさまでモヤモヤはなくなりました。」

ナミはニヤニヤと笑いながら、アミを見つめる。ルフィとアミをからかうのが趣味に近いナミは赤い顔のアミをみて、嬉しそうに笑う。

「悪魔だ。」
「なにか言った?アミ?」
「な、なにも言ってません。」

ビビとナミの洗いっこを横眼にアミはルフィのことを考える。あんなに自分のことを考えてくれていたなんて、ますます好きって気持ちが大きくなったかもしれない、これが惚れ直したということなのだろう。

「ちょっとみんな!何してるの!?」

ビビの声に、膝に埋めていた顔をぱっと上げたアミは驚いた。男湯と女湯の間の壁の上からこちらを除く男たちの姿があったからだ。アミはぼんっと顔を赤くさせ、お湯に深く浸かる。

「そんなに、見たいわけ?じゃあアミの裸、みせてあげましょうか?」
「はっ!?」
「えっ!?」

ナミの言葉にアミは怒り、サンジは何度も首を縦に振る。

「おれが許さねェ!!!」

ルフィが怒って声をあげれば、ナミはニヤリと笑った。

「嘘よ、幸せパンチ!!!」

ヒラリと体に巻いていたタオルを外すナミに、男たちは鼻血を吹きだして向こう側へと落ちていった。

「1人10万ベリーよ!」
「ナミさん!!」

衝撃的なナミの行動に、ビビとアミの顔は真っ赤になる。女でも見惚れるナイスボディに顔を赤く染めないやつなどいないだろう。




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