▼ 006

メリー号に戻ってきた一味のところにエースも追いついてきた。あまりの礼儀正しさに本当の兄弟なのかと疑うクルー達をよそに、ルフィとエースとアミの三人はつかの間の再開を楽しんでいた。そこでルフィとアミは今エースが“白ひげ海賊団”にいることを知る。

「“海賊王”にならせてやりてェ。」

とエースがいうほどすごい男なのだと、アミは納得した。そして別れ間際にエースは白い小さな紙きれをルフィとアミに渡す。その紙きれがまた三人を引き合わせるらしい。

「そいつを持ってろ!ずっとだ!」

その言葉は、弟と初恋の相手を思いやる兄の愛情に満ちていた。




「できの悪い弟を持つと……兄貴は心配なんだ……しかもアミを任せるとなると話は別だ…おめェらもコイツにゃ手ェ焼くだろうがよろしく頼むよ……」

エースはメリー号の近くに止めてある小舟にのりこんだ。

「え、もう行っちゃうの?」

アミは寂しそうに呟いた。

「んな顔すんなよ、諦めきれなくなるだろ」

エースはポンポンとアミの頭を優しく叩いた。アミの目はみるみるうちに涙目になる。

「それにお前らに会いにきたのはコトのついでなんだ。おれは今“重罪人”を追ってる…最近“黒ひげ”と名乗ってるらしいが、もともとは“白ひげ海賊団”の二番隊隊員。おれの部下だ。」

部下が重罪人…?とアミは疑問におもう。

「海賊船での最悪の罪……奴は“仲間殺し”をして船から逃げた」

仲間を殺す。それほど重い罪はない。今まで航海してきた仲間を殺すということは、今までの航海の思い出も殺してしまうということ。残酷で悲しいことだ。

「隊長のおれが始末をつけなきゃならねェってわけだ。そんなことでもねェ限りおれはこの海を逆走したりしねェよ。」

エースの海賊団はもっと先の海にいる。そう思うとなんだかアミはわくわくした。

「次に会うときは海賊の高みだ。」

エースとルフィはニヤリと笑い合う。

「エース待って!!」
「ん?」

ちゅっとリップ音が響く。アミはエースの頬にキスをした。

「あっ!!!アミ!!!」

ルフィは怒ってアミを引き寄せる。エースは頬をピンクに染めて少し嬉しそうに笑うとお礼を言って、小舟を動かす。ルフィとアミは大きくエースに手を振った。

そしてメリー号で次の目的地へと向かっている間、少しの時間ができた。ルフィはアミの手をとると、船頭へと向かった。

「アミ………、二回もエースにキスしたろ。」

ルフィはいつもよりも低い声でアミに言った。そうとう怒っている。

「ぶ、無事でいてほしいから……、」
「アミが無事じゃねェだろ。」
「ルフィが守ってくれるでしょ……?」
「ッ、…………、…それに、アミは他のやつにキスするとこなんて見たくねェんだよ。」

ルフィは無理矢理アミの唇にキスをする。何回も何回も噛み付くようにするキスはあまり気持ちがこもっていない。

「ル、フィ……んっ…」
「妬かせんなよ。」
「ごめん……でも…、これが私の能力なの……、口にするのはルフィだけなんだよ?」
「口じゃなくても、アミの口がどっかに触れることがいやなんだ。」

またアミにキスをするルフィは、こんなにヤキモチをやく自分に一番腹が立っていた。アミの能力なんだ……、仕方ないと、何度も自分に言い聞かせる。

「わりィ…、」

ルフィはアミを離すと、そのまま男部屋へと向かった。アミの赤い瞳からは涙が溢れていた。

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