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.....東の海『フーシャ村』
「この船出でもうこの町へは帰って来ないって本当!?」 「ええ!?そうなの!?」
当時7歳の幼いルフィとアミは港でシャンクスと会っていた。
「ああ、随分長い拠点だった。ついにお別れだな、悲しいだろ」
麦わら帽子をかぶって、ルフィとアミをみつめるシャンクスは少し寂しそうだ。シャンクスの言葉にアミは眉をさげて悲しそうに頷いた。そんなアミとはうってかわってルフィは笑顔で答えた。
「うん、まぁ悲しいけどね。もう連れてけなんて言わねェよ!自分でなることにしたんだ海賊には」 「どうせ連れてってやんねーよー」
シャンクスは舌を出しながらアミの頭を優しく撫でてルフィに言った。アミの赤い瞳からは涙が溢れ出していた。
「お前なんかが海賊になれるか!!」 「なる!!おれはいつかアミと一緒にこの一味にも負けない仲間を集めて!!世界一の財宝をみつけて!!海賊王になってやる!!」
ルフィの言葉を聞いて、アミを撫でていた手を止めたシャンクスは被っていた麦わら帽子を手に取った。
「ほう…!!おれ達を越えるのか……じゃあ…この帽子をお前に預ける」 「!!」
シャンクスは長年かぶってきた麦わら帽子をルフィへとかぶせた。ルフィの目からはぽろぽろと涙が落ちている。アミはその光景をじっと見つめていた。いつの間にか涙は止まっている。
「おれの大切な帽子だ」 「………!!」 「いつかきっと返しに来い…立派な海賊になってな」
シャンクスはそれだけ言うと、背を向けて自分の船と仲間の元へと歩いていく。その背中は大きくて、揺れる赤い髪はいつまでたってもアミの頭の奥のほうへと焼き付いている。アミは泣き喚きながら去っていくシャンクスを見送った。
それから10年後、17歳となったふたりはシャンクスがいる広い海へと旅立った。
「やー、今日は船出日和だなー、アミ」 「そうだねー」
首にはお揃いのネックレス。ふたりは恋人同士、いや結婚を約束した仲になっていた。ふたりはフーシャ村をでて小舟ひとつで海をさまよう。近海の主も10年鍛えた技で倒したルフィは海賊王になると高らかに宣言した。順調かと思ったふたりの目の前には大渦。絶対絶命の大ピンチだった。
「……ルフィ、樽に隠れて!」 「なに言ってんだよ」 「…好きだよ」
アミの顔は真剣で、その真っ赤な瞳は真っ直ぐルフィへと向けられていた。そんなアミの表情にこんな状況にも関わらずルフィはときめいてしまっている。
「Angel Kiss」
アミはそう呟くと、ルフィの唇へと触れるだけのキスをしてから樽のふたを閉めた。ルフィはわけがわからず、一瞬頭の中が真っ白になった。そして大渦へとのまれていった。
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