062
「はぁはぁ…スモーカーさん!?まさか…!!スモーカーさん!!」
たしぎちゃんが向こうの方から走ってくるのがみえる。
「わっ…海軍!?」 「おいまずいぞルフィ!海軍だ!!」 「ちょっ、私も海軍なんですけど!!」
ルフィとウソップさんの言葉に驚いて私が言っても、誰も聞いてくれなかった。
「スモーカーさん!!…胸に穴が………、……よくも!!!!」 「おいおい…よせ、そういうドロくせェのは嫌いなんだ。………ROOM……シャンブルズ。」
ローさんは、ナミさん達と同じように、たしぎちゃんとスモーカーさんになにかをした。そしてふたりは倒れたまま動かない。
「スモーカーさんとたしぎちゃんになにをしたんですか……!!」
私がキリッとローさんを睨んでも、ただ私をみてニヤリと笑っただけでなにもわからない。
「懲りねェ女だ…そう深刻になるな。」
スモーカーさんとたしぎちゃんになにをしたかはわからない。でも死んではいないみたいだ。
「ルフィ!急げ!ここはヤベェ!」 「うん!そうだおいトラ男、ちょっと聞きてェんだけど」 「研究所の裏へ回れ…、お前らの探し物ならそこにある。また後で会うだろう、互いに取り返すべきものがある。」
ウソップが急かし、ルフィが慌てて後を追おうとするが立ち止まった。ウソップはなにしてんだよ!と怒りながらルフィをみる。
「クミっ!」 「ルフィ……?」 「気をつけろよ!!」
眩しい笑顔でそう言ったルフィはウソップの後を追って行った。だから……、だから嫌なんだ。これ以上好きにさせないで。これ以上好きになったら……私は…海軍を裏切ることになる。
「撃て!!あいつ麦わらのルフィだぞ!!」 「それ所じゃありませんよ。はやくスモーカーさんとたしぎちゃんを!!」 「そうだな、クミ中将の言う通りだ!!」
――――ルフィも無事でいて。
私の言葉は届かないけど、きっとルフィはわかってくれる。その笑顔を私に向けて、当たり前だなんて言うんだろうな。
嫌だな、こういうとき、ルフィが関わったときは空腹が消えるから。私が私じゃなくなっていくみたいで、嫌なんだ。
+
建物の近くから逃げ、身を隠せるような潰れた建物の中へと入った。
「その…心臓なくて平気なのかたしぎちゃん。」 「ええ、不思議と……」 「大佐ちゃん接しづらい……」
心臓をローさんにとられたたしぎちゃんいや、体はスモーカーさん。内股のスモーカーさんがあまりにも気持ち悪くて、思わず笑ってしまうとたしぎちゃんの恰好をしたスモーカーさんに殴られてしまった。体はたしぎちゃんだから怒れない。
ローの能力でスモーカーさんとたしぎちゃんの心が入れ替わってしまったみたいだ。
「研究所の脇に隠してあった船にCCってマークが入ってた。」 「え!そんなのあったスか、スモーカー中将!!」
今だに慣れない私は、スモーカーさん入りのたしぎちゃんに動揺する。
「以前ここで使われていたものならばPH。パンクハザードと刻まれているはずだ。」
リュックから水筒を取り出し、中の温かいスープをお皿へと流し込む。こんな寒いところではやっぱり温かい物にかぎる。ズズッと飲み込むと、体が温まっていくのがわかった。
「………、……うまい。」 「なにやってんだ、てめェは。」 「すみません、続けて下さい。」
スモーカーさん入りたしぎちゃんに怒られた私は、音を立てずにスープを飲む。
「ローの裏に誰か潜んでいるとして…CCが誰かのイニシャルだとすりゃあ、一人心あたりがある。」 「………、……誰なんですか。」
私はスープを飲む手を止めてスモーカーさんに聞いた。こっちに視線を向け、口を開く。
「あいつがこの島にいるというのなら色々とうなづける部分がある!!Dr.ベガパンクの元同僚、現在賞金首のマッドな野郎だ……大量殺りく兵器の第一人者……科学者シーザークラウン!!!」
聞いたことがない人物に私は首を捻ることしかできなかった。
「あの……私もちょっと気になることが。」
たしぎちゃん入りスモーカーさんが口を開いた。やっぱり内股というのが落ち着かない。
「私の記憶が確かなら近年……この辺りの海で子供たちの誘拐事件が多発していたハズです」 「誘拐事件!?」
その事件も聞いたことがない。私って全然しらないんだな。と少し反省しながらスモーカーさんを見る。中身はたしぎちゃん………やっぱり、
「やっぱり馴染めないです、たしぎちゃん。」 「仕方ないでしょ!?いったん慣れて下さい!」
たしぎちゃんに怒られた私は仕方なく黙っていることにした。
「おい、たしぎ。どういうことだ?おれァ知らねェぞ、ガキの誘拐事件なんて。」 「前締めて下さい!スモーカーさんっ!!!」
足を大きく広げて、服も胸が見えてしまいそうなくらい開けているスモーカーさんをみて、思わずたしぎちゃんは声をあげた。セクシーなたしぎちゃん可愛い。
「こっちのオープンな大佐ちゃんは見た目がいいのに中身がこええ!!」 「黙れ!!!!」
海兵たちの言葉にスモーカーさんは声をあげる。なかなか進みそうにないな、話が。
「この海域じゃあ度々海難事故の報告を受けるくらいだ。だが確かに……ガキのよく死ぬ海だとは思っていた。」 「実は通信部に出入りしてるとG-5には子供誘拐の通報が多いんです…でもそれが新聞の記事になる頃には海難事故や海賊事件、失踪事件に変わっていて…。勿論……通報が早とちりだったという事でしょうけど。なにか…可能性はなくもないようなって。」
もしかしたら……、誘拐犯がこの島にいるかもしれないってことなのか。私がそう呟くと、たしぎちゃん入りスモーカーさんが小さく頷いた。
「だが、もしそれが本当だった場合……世間に出回った記事が嘘で、G-5内部の誰かがガキの誘拐事件をもみ消したってことになる。」
G-5の中に犯人がいるかもしれない。海兵達は慌てて自分じゃないと言い合う。ざわざわとうるさく騒ぐ海兵達にスモーカーさん入りたしぎちゃんが怒鳴った。
「最初からお前らみてェなバカ、疑う価値もねェんだよ!!だがお前ら自身、海軍に妙な夢は見るな!人間が徒労を組む以上、この世に完璧な組織などねェと思え。思い込めば敵を見逃す!!見てくれに騙されるな!!」
海軍に夢はみるな、か。夢なんて見ていない、だけど夢を見ることができるような完璧な組織を作るために私は……海軍に入ったんだ。
「はい!!!大佐ちゃん!!!!」 「はぁ………、もういいお前ら。」 「大佐は私です。」 「そうだ!!見てくれに騙された!!!」
見てくれに騙されるなと聞いた直後、見てくれに騙されるなんて。そ、そんなこと私はなってない。だ、騙されてなんかない。
「スモーカーさん、でも私そこまでの自信は……」 「いいんだ。頭の隅に置いとく価値はある。どのみちおれは心臓と体をローに抑えられちまってる。島から出るわけにはいかねェ。お前ら3分の1は船でこのことを通報しにいけ。」
軍艦がないことに気付いた私はそのことをスモーカーさんに話すと、盗めと言われた。どれだけ悪いんですか、たしぎちゃん。じゃなかった、スモーカーさん。
「慎重にな…事態が大事になる前におれはてめェの心臓と体を奪い返し…この島の黒幕を暴いておく!!」
この島の黒幕……、裏で今、どんなことが起こっているのだろう。
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