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「もしもし……」

海軍の軍艦の上空で私は飛んでいる。電伝虫を片手に、目線の先にある大きいとはいえない海賊船を見た。『正義』と書かれたコートを背負うのはもう何年になるだろう。最初は憧れだったこのコートも今となればすこし恥ずかしい。

「こちら海軍中将クミ。麦わら一味の船に接近します。」

私の目と鼻の先には今話題の麦わらの一味の海賊船。電伝虫の相手はガープ中将のようで、電話だと言うのに大きな声で話すものだから耳が痛い。もう少し静かに喋ってくれないかな。こんなところも麦わらの一味の船長に似ていて、笑いがこぼれる。

『クミ!ルフィは元気か?』
「ガープさん、まだ潜入してませんよ。」

ほんと、ルフィのお爺さんだけのことはある。呆れながらもルフィとガープさんは大好きだ。ルフィとは同じ村で同じ森で育った関係でガープさんのことも『おじいちゃん』とかつては呼んでいたけれど今となっては上司のようなものだ、昔のようにするわけにもいかない。

『ちゃんと捕まえてくるんじゃぞ?あ、怪我するなよ?』
「捕まえるのに怪我はつきものじゃないですか?」
『……グー』
「寝ないで下さい。」
『寝てないぞわしは。』
「はいはい、行ってきますね」

電伝虫を切ると私は軍艦に降りたった。私が指揮をとるこの部隊はとても優秀。とのことで、色々任務を任される。主に海賊を捕まえるのだが、今まで死人は出ていない。死人が出るのはよくあることで、海賊を捕まえるのならなおさら。降り立った私をみて、海兵たちは命令を待つ。

「さ、行きましょう!」
「はい!」

私の声を聞いて、海兵達は気合いを入れ大砲などの準備にとりかかった。海賊と戦う前だと言うのに私の心はワクワクと踊っていた。それはきっと、数年間会っていなかった大切な人に会えるからで、幸せに満ちていた。

「海軍だぁ!!」

麦わら一味から声が聞こえてきた。たしか、ガープさんからあの船は空を飛ぶと聞いていたことを思い出す。飛んで行かれては、追うにも追えない。いや、私は飛べば追いつけるんだけれど、私だけでは勝ち目はない。

「とりあえず私だけでも行ってきますね。」
「またですか、クミ中将。」
「だってみんな飛べないでしょ?時間稼ぎしておきますから。」
「そうですけど。わかりました。」

私は背中に真っ白な羽を生やした。これでも私はトリトリの実(モデル白鳥)を食べた能力者。なんの能力かっていうと、ただ羽を生やして飛べるだけ。んーと、天使って呼ばれることもたまにある。強さは手に入れることができなかったけど、便利だから気に入っている。

「ルフィ―――――!!!」

上から見えた麦わら帽子。久しぶりに再会する大好きな人の名前を呼びながら、羽をおさめた。重力にまかせて私は船へと落ちていく。ルフィは上を見上げると、驚いた顔をした。

「げっ!?クミ!?」
「麦わらの一味、あなた達を逮捕します!」

地面に落下する前にルフィに抱きとめられた私は、緑の甲板に足をつけ、驚く船員たちに言ってやった。



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