058

「嘘みてェだ…本当に島内はガスがねェ…、入口の毒ガスの量はなんだったんだ」
「おれ達を歓迎したくねェやつらの仕業だろう」


一面の銀世界。そこにはガスはなく、激しく雪が待っていた。
あまりの寒さに体が自然と震えた。
今日の夜は鍋がいいな…そんなことを考えながら、大きな建物の前に歩いていく。


「誰が住んでんだ一体!おい出てこい!」
「こんな扉、軍艦の大砲撃ちこめば開くぜスモーカーさん!へへ!」
「なにも律儀にブザー押して尋ねることねェよ!おれ達にビビってるやつなんか!」
「ここは立ち入り禁止の島だぞ!誰だろうと逮捕だバカ野郎!出てこい!!」


海兵達は騒ぐ。すると建物の扉は開かれた。


「お…、開いた。観念したか!海軍様だァ!」
「おれの別荘に…なんの用だ…白猟屋」


扉から現れたのは、王下七武海のひとり“海賊トラファルガー・ロー”だった。


「ぎゃああああああ!!!」


海兵達は驚いた声をあげる。
二年前、ルフィを助けてくれた張本人だ。


「帰ろうぜスモーカーさん!こいつとは関わりたくねェ!」
「こいつは七武海になるために、海賊の心臓を本部に100個届けた狂気の男だ!気味が悪い!」


スモーカーさんはじっとローさんを睨む。


「ここは政府関係者も全て立ち入り禁止の島だ…ロー。」
「じゃあ、お前らもだな」


ローさんは不適に笑った。









『…しもしおれはルフィ!海賊王になる男だ!………早いし喋りすぎだ!…助けてくれー…ああ寒い…ボスですか?いやボスじゃ…ザー…ザー…仲間達が次々と斬られてく!サムライに殺されるー!……ザー…ザー…そこどこだ!?誰でもいいから助けて…ここはパンクハザード…!!!ぎゃああああああ!!!』


録音した電伝虫の音を聞く。
ルフィ、今どこにいるんだろう。はやく、会いたい。


「島の名前…寒いという気候…、声の主はこの島から信号を送ったことで間違いないのでは?」


たしぎちゃんは真剣な表情で呟いた。


「麦わらのルフィは知ってるな?二年前シャボンディで起きた、天竜人ロズワード家の一件でお前とキッドと麦わらは共闘している。更には頂上戦争では赤犬に追われる麦わらをお前は逃がした……!!」
「……、要件はなんだ、緊急信号のでつぞうはお前ら海軍の十八番だろう」
「残念ながらこの通信は海軍で作った罠じゃない」
「どうだかな…おれも知らねェ。話は終わりだ」


時々感じる、ローさんからの視線。
私はただ、笑い返すことしかできなかった。


「つまらん問答はさせるな、研究所の中を見せろ」
「今はおれの別荘だ…断る。お前らが捨てた島に海賊のおれがいて何が悪い。ここにいるのはおれひとりだ、麦わらがもしここへきたら首は狩っといてやる。話が済んだら帰れ」


“麦わらがもしここへきたら首は狩っといてやる”…?


「ちょっと待って下さい!ルフィの首を狩る?……それは私が許しません」
「自由屋…、お前海軍中将じゃねェのか?そんなこと言っていいのか?」
「あなたがルフィを捕まえるのが許せないのであって、私がルフィを捕まえるんです。」


そう言うと、ローさんは小さく笑った。


「確かお前は麦わら屋の女だったか?」


ローさんは私の耳元で、誰にも聞こえないように呟いた。


「なっ!?」
「麦わら屋が自慢してたぜ?おれの女はすげーってな」
「…バカ野郎…!!!」
「顔が真っ赤ってことは、本当のようだな」


顔が真っ赤といわれ、思わず顔を背ける。


「ふっ、麦わらの女にはもったいねェな」
「え?」
「さ、用が済んだなら帰れ」


ローさんが、笑った気がした。



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