056

「プォッホー!ホホホー!プォッホー!」


さきほど、新世界の海に出たばかりのサニー号。
キッチンで、電伝虫がすごい声で泣き喚いていた。


「おーい!コレなんだ?電伝虫が泣き出した!おい、どうした。腹でも痛ェのか?」


麦わらの一味、船長が驚いた声をあげる。
二年前と違い、背ものびたが、性格は相変わらずのようだった。


「バカ、そりゃ緊急信号だ!誰かが助けを求めてる!」


サンジが驚くルフィに告げる。
サンジも二年前とは違い、顎にはひげが生えていた。


「じゃあ取れば通じるか?」
「待ってルフィ!緊急信号の信憑性は50%以下よ。海軍がよく使う罠の可能性も高い。出て盗聴されれば、圏内に私達がいるとバレるわ」


相変わらず冷静に言うロビンの頭には、サングラスが輝いていた。


「さすがロビン!おいルフィ!ここは慎重に考えてから」
「もしもしおれはルフィ。海賊王になる男だ」
「早いし喋りすぎだー!!!」


少し体が頼もしくなったウソップが焦った声をあげる。
ルフィは電伝虫に出てしまった。


『助けてくれ!』


その声に、ルフィは目を見開く。


『ああ……寒い…ボスですか…?』
「いやボスじゃねェぞ、そこ寒いのか?」
『仲間達が……次々に斬られていく!…サムライに殺される!』
「おい!お前、名前は?そこどこだ」
『誰でもいいから助けて……ここは、“パンクハザード”!!!ぎゃあああああ!!!』


電伝虫の向こう側にいる人物の叫び声が聞こえたかと思うと、通信は途切れた。


「うわああああ!!やられたあああああ!!」


ウソップは脅えたような声をあげる。


「事件の匂いがするぞ!」
「やられたっつってんだろ!事件だよ!斬られたよコイツ!」


探偵面を見せるルフィに、ウソップは激しくツッコミをいれる。


「今のも演技で、罠かもしれない…」
「冷静ー!!」


冷静に言うロビンに、二年前と服装だけしか変わらないブルックが叫んだ。


「“侍”って言やあ……、ブルック」


二年間の過酷な修業がみてとれる、左目に傷をつくったゾロがブルックに聞く。


「ええ、その侍でしょう。“ワノ国”の剣士の呼び名です。ワノ国はよそ者を受け付けない鎖国国家で……、世界政府にも加盟していません。侍という剣士達が強すぎて、海軍も近寄れないだとか」
「そんな国があんのか…」
「だがワノ国じゃねェ。パンクハザードっつってたぞ!あの火の島か!?」


二年前よりごつい体になったサイボーグのフランキーが、さきほど見ていた火の島を思い出した。


「相手が子電伝虫なら、念波が届くのはせいぜいあの島との距離ね…」
「よし、今のやつ助けに行くぞ!」


ルフィはニッと笑う。そうとうご機嫌みたいだ。


「やだああああ!!」
「サムライこえええええ!!」


髪の伸びたナミと、青い帽子を新たに被ったチョッパーが恐怖の声が響いた。

















「スモーカーさん!今の……」


盗聴用の黒い電伝虫の声を聴いた、たしぎはスモーカーをみた。


「くそ…、一体どういうルートを通りやがったんだ…。確率は3分の1、普通はそのハズだが…魚人島から指針が示す3つの島は『リスキーレッド島』『ライジン島』『ミストリア島』。麦わらは必ず一番針のぶれるこのライジン島を選ぶとタカをくくってたが…」
「どの指針も無視ですねー」


クミはビスケットを食べながら、眉間に皺を寄せるスモーカーの後に告げる。


「しかしスモーカーさん!パンクハザードは4年前の自己以来、完全に封鎖された無人島です!人がいるなんて変です!」


たしぎは少し声を荒げて、スモーカーに言う。


「そうだな。現在生物が住めるような環境じゃねェハズだが。手がかりはそれしかねェんだ。移動するぞお前ら!!」


スモーカーの声に、海兵達は大きな声をあげて準備にとりかかった。


「おい、クミもやれ」
「この前まで…私先輩だったんですよ?それが今や同じ立場だというのに……。私は今忙しいんです」
「クッキー食べてるだけじゃねェか」
「ビスケットです!ビスケット!!」


クミはじっとスモーカーを睨んだ。


「はやく動け。」
「……、はーい…」


クミはビスケットを袋に詰めて、動き出した。



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