エースの形見、メラメラの実を獲得するために"コリーダコロシアム"で開かれるバトルショーに参加することになった。ルフィと私はエースの幼馴染だから参加するが、フランキーはコロシアムの外で待つことになった。
髭とサングラスをつけたルフィと、サングラスをかけただけの私は偽名を名乗った。
Cブロックで戦うルフィとDブロックで戦う私。ルフィと一緒じゃなくてよかったと心の底から思った。

「ルフ……ルーシー!負けないでよ!」
「おう!なまえもな!」

なまえって本名だから…と思いつつも頼もしいルフィの背中に手を振った。ルフィが強いのは知っているけど、Bブロックの試合を見ていたら強豪ぞろいなのがよくわかる。
Cブロックの試合を観戦していると、後ろに気配を感じて振り返るとBブロックで優勝したバルトロメオが立っていた。

「なに?」
「あっあのっ!!!」
「勝負?」
「いっ、いえ!!まさかなまえ先輩と勝負なんて!触れることすらできねェだ!!」

何言ってんだこいつ、とルフィなら言うだろう。私もそう思った。バルトロメオはくねくねと体を動かし、サイン下さいと言う。

「サインとか……ないし……」
「じゃああのっ、握手を!!」

握手くらいなら、と差し出された手を握ると手汗がすごかった。離すとバルトロメオはその場で倒れてしまう。

「大丈夫!?」
「もう、もう洗えねェ!!!」

一種の変態かな、と思うが麦わらの一味のファンだという。嬉しいが、バルトロメオは私よりも強いから何だか申し訳ない。

「ルッ、ルフィ先輩とは幼馴染なんですか!!!」
「うん、そうだよ」
「フォオオオオ!!」
「大丈夫?」
「ルフィ先輩は来てないのですか!!」

来てるけど言わない方がいいのだろうか。今あそこで戦ってるルーシーがルフィだと、説明せずに私は首を横に振った。

「そうだべか……」

ガッカリとしているバルトロメオは放っておいて、ルフィの試合を見ようと振り返るともうそこには選手がいなくて、壊れたリングが見えただけだった。ルフィが勝ったのかすらもわからない。

「ル、ルーシー…勝ったよね……」
「ルーシーってだっ、誰なんだべか!」
「その人が勝ったかどうか知りたいんだけど……」
「任せてくんろ!おれがこのおれが調べてくるべ!!!」

私がなにも言わないうちにダーッと走っていってしまった彼の背中を見送り、私は次の試合に出るために移動する。ルフィが勝ってても負けてても私が勝てばいい話だ。
そしてDブロックの試合が始まった。レベッカという女性へのブーイングが激しい中、私はとりあえず向かってくる敵を倒していた。これでもウソップよりは懸賞金は上なんだ。
そう余裕でいると、周りと人達が急に倒れ始めた。ものすごい速さで誰かに斬られている。私の目の前にきたその人は化け物のような表情で私を斬りつけた。そして私はリング上に倒れた。



ーーーーーー



目を覚ますと目の前にバルトロメオがいた。

「なまえ先輩!!!目を覚ましただべか!」
「ルフ、ルーシーは!!」
「あっちだべ!」

ルーシーをルフィってことに気がついたのだろうか。とりあえずルフィを探して負けたことを伝え、ルフィの試合結果を聞かなければならない。バルトロメオに案内してもらい、ルフィがいる場所に向かう。

「あっ、ルフィ!」
「なまえ先輩!あのお方は……」
「ルフィー!!」

いつもしているように抱きつけば、ルフィは胸の中で暴れた。いつも抱きしめ返してくれるのに、どうしてだろう。

「なまえ。」
「いつもより声が………」

ルフィは髭とサングラスを取り、私を見る。ルフィじゃない、この人は……記憶の片隅にずーっといたあの人。

「な………んで……」
「ハハッ、一気に2人に会えるとはな。」

驚きすぎて声が出ないが、涙だけは流れていた。ポロポロと零れ落ち、涙でハッキリと顔が見えない。

「い、生きてる………」
「おう、生きてる」
「サボ……?」
「おう、おれだ」
「触っていい?」
「おう。」
「抱きしめていい?」
「おう。」
「キスしていい?」
「フッ、おういいぞ。」

ガバッとサボの胸の中に飛び込んだ。死んだと思っていた彼がまさか目の前に現れるとは思ってもみなかったから、涙が止まらない。サボが、生きてる。ぎゅーっと力一杯抱きしめる。痛いと言われても気にしない。

「キスはしねェの?」
「昔はさせてくれなかったのに!」
「大人になってからしようって決めてたのに、まさかあんな事になるとはなァ」
「じゃあ、していいの?」
「おれからする。」

優しく頬に手を添えられて、ゆっくりと目を閉じた。唇に触れたそれは小刻みに震えていて、余裕に見えたサボも動揺していることがわかる。

「フフッ、嬉しい」
「お前なァ………。それよりいつもルフィに抱きついてんのか?」
「うん、昔からそうだったでしょ?」
「まだやってたのか……」
「うん!」

昔から嬉しかったり悲しかったり悔しかったりムカついたりしたらルフィに抱きついていた。それはサボと出会う前からで、今になっても続いている。

「それはもうやめてくれ」
「え!なんで?」
「ムカつくから。」
「まさか………」
「ルフィに嫉妬してんだよ。」

嬉しくってサボに抱きついた。今度からはサボにするよ、と言うと照れたように笑った。ゾロやサンジ、ウソップにもしていたなんて今更言えないけど。
私とサボは暫く抱きしめあって話していたが、バルトロメオに見られていたことに気づいて離れた。

「なまえ先輩ィイイ!おれァ、感動しただべ!」
「え?」
「ルフィ先輩のお兄様と愛し合っていたんだべな!!感動しただ!!」
「どこに感動してんだよ……」
「私達愛し合ってるの?」
「そういえば言わなきゃ伝わらねェほどなまえは鈍感だったな…」
「どういうことよ!」
「鈍感でも何でもなまえならおれは好きだぞ。」
「私も好き!!」
「愛し合っているんだべなァー!!」

そうか私達は愛し合ってるんだ。そう思うと嬉しくてニヤニヤと笑ってしまった。でも浮かれている場合じゃない、私達はやる事が沢山あるんだ。
サボがメラメラの実を取ってくれるらしい。だから私はルフィの後を追うことにする。

「気をつけてね」
「ああ、なまえもな」
「全部が終わったら、また会おうね」
「ルフィにも言わねェとな。」
「そうだね!」
「じゃあ、またな」
「うん!またね!」

最後にサボを抱きしめて、私はコロシアムから飛び出した。いつの間にか止まっていた涙がまた溢れ出し、町の人たちに変な目で見られてしまったが仕方ない。嬉しさを噛み締めながら、船長を探す。私とサボが愛し合ってって知ったらルフィはなんて言うだろう。無意識に早くなっていた足を、もっと早めてドレスローザの町を駆け抜けた。

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