メンバー消去番外編




小さな夏寄りの春島に上陸した私達は船番のフランキーさんを残して全員で島を探索していた。珍しくルフィは先々と進まず、私の隣にいる。先日、病気の事を打ち明けたばかりで色々心配なんだろう。
少し歩いていると小さな村があった。でも人はいないようで、古くなった家などが残っている。

「家の中に荷物もないわ………きっと島から移動したのね」

ロビンちゃんが村の中を調べてくれた。食糧難になったらしく、島を移動するしかなかったのかも…と推察も加えてくれる。

「確かに、動物も植物も全く無いな」
「食材を調達しようと思ったが無理みてェだ」
「もう少し進んでみましょう」

ゾロさん、サンジくん、ロビンちゃんの言葉にそれぞれ頷いて歩き出す。

「なまえ、辛くなったらすぐに言うんだぞ」
「うん、わかった」

チョッパーくんの言葉に頷き、ありがとうと笑いかける。昨日は頭が痛くてベッドから起き上がる事もできなかったけど、今日は調子が良いみたいだ。

「あんなに痛そうだったのに、チョッパーの薬はすげェな!」
「うん、すごいよチョッパーくん!」
「う、嬉しくねェぞ!コノヤロー!」

照れ隠しのダンスを踊るチョッパーくんが可愛すぎて無意識にニヤけてしまう。

「うおお!!すげェ!!!」
「なんだこれ!!」

チョッパーくんに目を奪われている内に、みんなは何かを見て感嘆の声を上げていた。その視線の先を見ると、そこには巨大なお城が建っていた。

「すごい!真っ白で綺麗!」
「花も沢山咲いてるわね」
「行こうぜ!!」

まるでおとぎ話の中にいるようだ。真っ白で、大きくて綺麗なそのお城にはどんなお姫様が住んでいたんだろう。そのお姫様も移動してしまったのだろうか。

「あ、ここから入れる」

大きな門の少しの隙間から入っていく。中は少し埃が被っているが陽の光で輝き、とても幻想的に見えた。中央に大きな階段があり、手すりの上にも埃が積もっていて人が住んでいないのが見てわかる。上を見上げれば天井は高く、豪華なシャンデリアがぶら下がっていた。

「中も綺麗ね。」
「掃除したらもっと綺麗だろうな。」

みんなお城の中を見渡し、それぞれの感想を呟いた。
女の子なら誰しもこんな綺麗なお城に住んで、フリフリのドレスを来てフカフカのベットで寝て……と夢見るだろう。それは私やナミちゃんも例外ではない。

「朝は執事に起こされてベッドに食事が運ばれてくるのよ」
「うんうん!スクランブルエッグを食べて、パンには執事がジャムを塗ってくれるの!」

私とナミちゃんの夢物語に呆れた目を向けているウソップくん。フランキーさんのロボの話よりは面白いと思うんだけど。やっぱり男の子と女の子は違うらしい。

「上にも行ってみない?」
「もうルフィはいねェから、行ったんだろうな。」

ナミちゃんの提案に一同は頷くけど、ルフィはすでに姿を消していた。きっとお城を探検しているんだろう。方向音痴なゾロさんがいないことには誰も触れていなかった。
二階は長い廊下が続いていて、沢山の扉が見えた。

「お宝とか残ってないかしら!」

目を輝かせる彼女とそれに同意する鼻の長い彼。

「ナミさーん!おれが全部見てきまーす!!」
「頼んだわよ!」

目をハートにさせて走り去って行った彼と嬉しそうな彼女。

「私も色々見てきていい?」
「なまえ!おれも行くぞ!」
「お宝見つけたら報告ね!」

ナミちゃんの言葉に頷いて、医者として心配らしいチョッパーくんと共に歩き出した。廊下をずっと歩いていると、まるで教会のような内装の部屋が出て来た。

「わー!すげェな!!」

少し埃は被っているけど、綺麗だった。私とチョッパーくんは部屋を見渡しながら感嘆の声をあげる。

「なまえ!チョッパー!」

突然名前を呼ばれた私達の肩はビクッと跳ね上がった。声のした方をみると、ルフィがブンブンと手を振って私達の方に走って来るところだった。

「ルフィ、どこ行ってたの?」
「んー、色んなとこ見てた」
「置いていかないでよ」

残り少ない命だから、どんな時でもルフィと一緒に居たかった。ごめんな、と拗ねる私にルフィは優しく謝った。
冒険が大好きなことくらいわかるはずなのに、悪いのは私だ。

「なァ、なまえ!」
「なに?」
「もっかい結婚式しよう」
「え!?」

先日、一味のみんなにドレスや靴などのプレゼントを貰って船上で結婚式をしたばかりだ。
こんな綺麗な教会で結婚式をするなんて夢にも思っていなかったから、驚いて声が出ない。しかもルフィから提案してくれるなんて、嬉しすぎて涙が出そうだった。

「やりたい。結婚式。」
「チョッパーあれやってくれよ、あれ!」
「牧師か?」
「そう!それだ」
「任せろ!」

チョッパーくんの前に私とルフィが向かい合わせで立つ。お互い左手の薬指にしていた指輪を一旦外して私はルフィの指輪を、ルフィは私の指輪を手に持った。

「ルフィ、なまえをずっと愛することを誓うか?」

牧師の言葉なんて覚えていなかったチョッパーくんは記憶の隅の方にある僅かな知識を振り絞って、なんとか誓いの言葉を言った。

「おう!」
「なまえ、ルフィをずっと愛することを誓うか?」
「はい。」
「誓いのキスを!」

私は頷いて、ルフィを見上げる。頬に手を添えられ、ルフィの顔がゆっくりと近づいてくるから私はそっと目を閉じた。私の頭だけ教会の鐘の音が響いていた。唇に、唇が重なって私は少し目を開けた。ルフィと目があって恥ずかしくてもう一度目を閉じる。すると唇は離れて、ぎゅっと抱きしめられた。目を開けると嬉しそうに笑うルフィがいる。

「なまえ、好きだぞ。すっげェ好きだ。大好きだ。」

耳元で囁かれ、私は頷くことしかできなかった。涙が溢れて、私も好きって言いたいのに声が出ない。

「指輪の交換だ!」

チョッパーくんの言葉に頷いて、私はルフィの薬指に指輪を通そうとするけど涙で視界がぼけてうまくいかない。手を見ていた私の顔をルフィは自分の方へと向かせ、涙が流れる頬に触れるだけのキスをした。

「ゆっくりでいい」
「んっ、うっ……ルフィ…」
「ん?」
「好き」
「おれも」
「大好き」
「おれも」

今度は私からルフィの唇と唇を重ねた。ルフィが大好きでたまらない。この気持ちは抑えようにも抑えられなかった。
ルフィは私の左手をとると、指輪をゆっくりと通した。キラキラ輝いて眩しい、どんな宝石よりも綺麗だと思う。

「あれ……涙が止まらねェ」

側で私たちを見ていたチョッパーくんが泣いているから私の涙も止まらなくなった。もうすぐ死ぬってわかっているからこそこんなにも涙が止まらないんだと思う。私は頑張ってルフィの薬指に指輪を通して、手を握った。

「ありがとう!」

どうしてここでお礼を言ったのかは私にもわからない。何に対してのお礼なのか、それもわからない。でも無意識に私は口走っていた。
私の言葉に対して、ルフィとチョッパーくんは微笑んだ。私はしっかりとこの2人の笑顔を頭に焼き付けた。生まれ変わったとしても忘れないように。

back
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -