「右大臣様!!!」
「何事だ」
「なまえ姫様が!に、逃げました!!」
「なに!?すぐに探し出せ!!」

家来は大きく返事をして、慌ただしく部屋から出て行った。竜宮城の大広間でパーティーの準備をしていた右大臣は小さくため息をついた。盛大なパーティーだというのに、どうして逃げるのか。

「右大臣様!!!」
「今度は何だ!」
「しらほし姫様もなまえ姫様を追って出て行ってしまいました!」
「探し出せ!!!」

家来の背中を見てもう一度ため息をついた右大臣は魚人島の王であり、逃げ出してしまった二人の姫の親、ネプチューン王を探すために大広間から出た。王はきっと自ら探しに行くと言うだろう、それを止めるために行くのだった。



ーーーーー



「お姉様ー!」

今にも泣きそうな声が聞こえて、閉じていた目を開ける。眉を下げ、涙で目が潤んでいる妹が目の前にいた。

「探しに来てくれたの?」
「はい!右大臣様が探していました」
「挨拶したかったの。」

私の目線の先には母のお墓がある。毎日毎日通っていたけれど、今日が最後になるかもしれない。しらほしは手を合わせ目を閉じ、何かを語りかけている。

「もう準備は終わってた?」
「はい。後は身なりを整えるだけと右大臣様がおっしゃっていました」
「早く戻らないとまた怒られるね」

右大臣を怒らせてしまうと後々面倒くさいので、早く戻ることにした。最後にもう一度母に挨拶をして、海の森を後にした。

「お姉様は迷っておられるのですか?」
「ううん、迷ってない。でも、寂しいな。」
「わたくしも寂しいです。」

大きなしらほしを見上げる。また泣きそうになってる。でももう慰めることは出来ないかもしれない。
私はその大きな手の指を握り、優しく撫でる。しらほしからすれば、感触すら無いかもしれないのに撫でればいつも嬉しそうな顔をする。それが私も嬉しいんだ。
竜宮城について、私としらほしは一旦離れた。それぞれ別の部屋で着替えをしたりしなければならない。豪華なドレスを着せられ、髪の毛も綺麗に結い上げられる。少しの化粧をして、この島の姫らしい格好をした。

「お姉様!お綺麗です!」

しらほしの方が綺麗なんだけど……とは言わずにお礼を言った。父も兄も私を見て微笑んだ。何だか涙が出そうになったけど、耐える。

「うっ……お、お姉様……」

泣き始めてしまったしらほしの涙は大きな粒となって降ってくる。長い時間をかけて用意したパーティー会場を台無しにしないために、家来達は何とかしらほしを泣き止ませる。

「到着したらしいです!!」

家来の声が聞こえた瞬間に、ドキンと胸が高鳴った。いつ振りだろうか、来てくれたと言うことは、そういう事なんだろう。落ち着かなくて、そこら中を泳ぎ回った。
バタンッと扉が開いて、眩しい光が会場を照らした。そこから見えたのは、少し大人びた気がする私の最愛の人だった。

「なまえ!」

久しぶりに名前を呼ばれ、今まで溜めてきた何かが爆発したのか無意識に涙が溢れていた。すぐに彼に近づいて、思いっきり抱きついた。

「おかえり、ルフィ。」
「ただいま、なまえ。」

ニカッと笑うルフィは私の頬を流れる涙を優しく拭い、ギュッと抱きしめ返してくれた。
ずっとずーっとこの時を待っていた。私も立派な女王になれたと思う。ルフィも立派な海の王になった。

「仲良くするのはいいけど、私達の存在忘れてない?なまえ!」

ルフィの後ろにいたナミはより美しくなった気がする。私は全員の顔を確認して、微笑んだ。ああ、変わっているようで変わっていなかった。その事が嬉しくて、頬が緩む。
大広間でパーティーが始まり、豪華な食事や陽気な歌で大盛り上がり。そんな中、私とルフィは隅で座り私と別れてからの冒険話を沢山話した。
その時、ルフィが突然真顔になった。

「なまえは、変な男に引っかかってなかったか?」
「それがね、ルフィがあまりにも遅いから……」
「!?、その男誰だ。おれがぶっ倒してやる。」
「違うの!最後まで聞いて?」
「わかった」
「ルフィの帰りが遅いからね、父がお見合い話を持ってきたの。魚人島で1番お金持ちの家で、これでもっとこの島が発展するからって。」
「ま、まさか………」
「でもちゃんと断ったよ?しつこかったけど……」

ルフィはムッとした顔をした。私がこの話をしたのは、ルフィのこういう顔を見たかったからだなんて言えないけど。あからさまに嫉妬するから、頬が緩んでしまう。

「約束しただろ?変な男に引っかかるなよって」
「うん、引っかかってないよ。でもまだルフィの気持ち知らないもん」

まだ私たちは両想いじゃない。好きと伝え合っていなかった。それは再会した時まで言わないと決めていたからだった。

「じゃあ、言うぞ?」
「うん。」
「なまえ。」
「なに?」
「大好きだ。」

ただ好きと言ってくれるのかと思えば、大好きだと言って満面の笑みを見せたルフィ。私も予想以上に顔が熱くなって、照れてしまった。

「顔真っ赤だ!」
「もう……笑わないでよ!」
「ししっ!次はなまえの番」
「わ、わかった。」
「よし、来い!」
「ルフィ。」
「ん?」
「大嫌い」
「え!?」
「うそ、大好き!」

そう言ってルフィの胸に飛び込んだ。大好きで大好きで、ずーっとルフィのこと考えていた。ルフィが新聞に載る度に寂しさと嬉しさで胸が苦しかったのを覚えてる。会えない寂しさと、ルフィが成長していく嬉しさ。

「これからはずっと一緒に居ようね。」

ルフィの胸から顔を上げると、ルフィは真っ赤な顔を必死に隠そうとしていた。

「顔真っ赤!」
「照れるけど、嬉しいなこれ。」
「ふはっ、そうだね!」
「なァ、なまえ。」
「なーに?」
「行きたい島あるか?」
「うん、いっぱいあるよ」

地上なんて未知の世界で、まだどこにも行ったことがない私はどこから行けばいいのかわからない。ルフィはニカッと笑う。

「全部連れてってやる!おれの知ってるとことか知らないとこ全部!」
「何年かかるかな?」
「死ぬまでかかるかもしれねェ」

死ぬまで一緒、という意味で捉えていいのだろうか。

「ずっと一緒にいような。」

私の心を読んでいたのか、と疑うような台詞に大きく頷き、触れるだけのキスをした。
たとえ危険が多くても、2人でなら乗り越えていける気がする。

そして次の日の朝、準備していた荷物を持って魚人島から出るために船に乗り込む。

「お姉様!!ヒッグ!ううっ」
「絶対にまた帰ってくるから。そんなに泣かないで、しらほし。」
「ぜっ、絶対に帰って来て下さいね!」
「うん。しらほし、魚人島をよろしくね。」
「はい!」

泣いているしらほしの指を抱きしめ、キスをした。下を向けば泣いてしまうから大きなしらほしを見上げて耐える。

「またね、しらほし。」

見送りのために来てくれた沢山の島民達に手を振って魚人島から離れる。しらほしや父、兄の姿が見えなくなった瞬間に私の瞳から涙が溢れた。

「なまえはおれが守ってやるから。絶対にまた帰って来られる。」
「あり…がとう……ルフィ。」

ルフィがポンポンッと優しく私の背中を叩いてくれたおかげで涙は収まってきた。

「いつまでも泣いてちゃ、始まらないもんね。」
「なまえのそういうとこ好きだ」

ルフィの言葉に照れながら、見えてきた地上の光に胸を高鳴らせた。これからの冒険に期待を寄せ、大きく深呼吸した。

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