>>闇の存在、光の存在

休憩中、あまりの暑さに水を浴びようかと赤司は体育館を出て水道に向かった。そこには幼馴染の蜜柑の姿があり、少しだけ口角が上がる。近づけば、何かをブツブツと呟いている。

「ヤツらの気配が………」
「蜜柑、ドリンク作りは終わったの?」
「……アカーシ!!ヤツらが!!」

もう一度名前を呼ばれて蜜柑が赤司の方を見れば恐怖で泣きそうになった。赤司はカッターを構えていたのである。幼馴染だからわかる、これ以上話すと殺されると。

「征ちゃん、どうぞ。」

昔の様に征ちゃんと呼ぶ蜜柑に満更でもない赤司はニッコリと微笑んでドリンクを受け取った。これ以上中二病に染まらないよう、躾直さなければならない。

「ミカちんー。」
「なにかね?」
「ドリンク〜」
「危険だ。私が触れたものは闇を纏う。」
「いいから、ドリンク〜」
「危ない!!離れて!!」
「ミカちんめんどくさい〜」
「蜜柑……俺はそいつを飲むことに決めた……」

紫原と蜜柑の会話に割って入る青峰も中二病モードだ。

「なっ!?飲むのか……これを……」
「ああ、仕方ねぇ。一か八か、死ぬか強さを手に入れるか。」
「あ、“ダイッキー”………」
「今まで……楽しかった……ぜ…」
「ダイッキー!!!!!!」

ドリンクを飲んだ青峰はベンチに寝転ぶ。蜜柑の叫び声が聞こえて、何事かと一軍メンバーが集まってきた。

「蜜柑っち!?どうしたんスか?」
「何かありましたか?」
「赤司が今にもカッターを振り回しそうなのだよ。」
「はやくドリンク飲みたい〜」
「青峰くん?何があったの?」
「蜜柑、いい加減にやめろ。」

黄瀬、黒子、緑間、紫原、桃井、赤司の言葉を順に聞いた蜜柑は全員にドリンクを渡して、また中二病モードに戻る。

「ブラッドが闇の力を駆使すれば、生き返ると教えてくれた」
「俺も手伝うっスよ、蜜柑っち!!」

2人は手を握り、反対の手で青峰の手を握る。3人は繋がり、闇の力を送り続ける。

「また始まったのだよ。」
「誰か俺を止めてくれないか。今すぐにでも黄瀬と青峰を切り刻んでしまいそうだ。」
「それだけはやめて下さい、赤司君。」
「ドリンク〜」

赤司は自分を抑え、とりあえず三人に注意をしてバスケの練習に戻っていく。その背中を追うようにマネージャーの桃井と蜜柑以外が走っていった。桃井と二人になった今でも中二病を続けようとする蜜柑に近づくひとつの影……。

「アビス、緊急事態だ。」
「ブラッド!!ここは危険だわ、光の組織の“リョータ”がいる。」
「だからこうして影に隠れている。お前も隠れろ。」

水道の影に隠れる二人を引いた目で見る桃井は初めて闇田に会った。蜜柑をたぶらかした奴と赤司が怒っていたのを思い出す。

「……彼女は?」
「彼女は回復魔法を得意とした“サツキン”味方よ。」
「それは良かった、サツキン。少しの間ここで匿ってくれ。」
「“サツキン”ってなに……蜜柑、怒られるよ?」
「サツキンは逃げて!緊急事態らしい!!」

もう付いて行けない…と桃井は赤司を呼びに行くことにした。そんな桃井など知らず、闇田ことブラッドは緊急事態の内容を話す。

「光の組織がとうとう我らの基地に侵入した。」

我らの基地とは自分達の教室の事である。

「な、なんだって!?ブラッド!その怪我!!」

左手に巻かれた包帯をみて、蜜柑は大声をあげた。

「静かにしろ!気づかれる……」
「侵入者は……」
「基地の者たちを光で支配してしまった……」
「まさか……テツヤーンも!?」

2年では黒子と同じクラスなため、安否を闇田に問う。闇田は深刻な顔つきで首を横に振るだけだった。

「テツヤーンまで……。クソッ、ヤツらめ……まっ、まさか!!このバスケ部も!!」
「ああ、危険だ。テツヤーンが光の組織だと知っているのはその“リョータ”って奴だけだろうな……」

水道にやってきた他のマネージャーに変な目を向けられながら、闇田は眼帯を撫でる。

「クソッ……左目が疼いてやがる……」
「戦おう、ブラッド!!」
「アビス……戦ってくれるか……」
「もちろん!!」

闇田はどこからか出してきた(玩具屋さんで買った)剣を構える。蜜柑は近くに立て掛けてあった箒を手に持った。

「これで空から攻めましょう。乗って!」
「ああ。」

箒に跨った二人はそのまま大空へ飛び立った。(跨ったまま体育館に移動した)

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