う、うわぁっ。すごく顔が近いんだけど。目の前で私の顔をじっと見てくるルフィを見つめ返す。どうしよ、どうしよう照れる。

「なに。」

顔を背けて、冷たく言った。どうして私は素直になれないんだろう。照れるなんて死んでも言えないけれど。

「うーん、あれー?」
「だからなに。」

私の顔をみて何かをブツブツと呟いているルフィ。なにか顔に付いてるのかな、と心配になる。それにしても、私の鼓動はうるさい。どうしようもなく好きだ!ルフィが!そう言いたいのに私の口から出るのは冷たい言葉。

「用がないなら呼ばないで。」

名前を呼んでもらって嬉しいくせに、本当に性格が悪い私。ごめんね、ルフィ。だからそんな辛そうな顔しないで。私はそんなルフィを置いて逃げた。とりあえず洗面所に行こう。顔になにか付いているのかもしれない。

「あ、なまえちゃん!」
「なに?サンジ」

私のバカ野郎。もっと笑顔で返事をすればいいのに。バカバカバカ!

「メイク変わったね。」
「ナミにしてもらったの」
「すごく可愛い。」
「ありがとう。」

もしかしてルフィは私のメイクの変化に気付いていたのかもしれない。そうだと、嬉しい。なんだかニヤニヤが止まらない。

「嬉しいことでもあった?」
「まぁ。」

ついさっき、嬉しいことがありました。でもそれを表情にはあまり出さない。昔から感情表現が下手な私は冷たい子だなんて言われてきた。私も感情を表現したいけど、できないんだ。

「あ。笑ったなまえちゃん。」
「そんなに珍しい?」
「真顔に戻った。………うん、珍しい。」

鏡の前で笑顔の練習でもしようかな、と考える。そんなに笑ってないのかな私。毎日すごく楽しいのに。

「今日の昼飯はなにがいい?」
「オムライス。」

サンジは小さく笑ってから頷いた。オムライスが可愛くて美味しくて大好き。確かルフィも好きだった気がするなぁ。サンジは昼ごはんを作るのか、キッチンへと向かって行った。

「なまえ……さっきサンジとなに話して笑ってたんだ?」
「ルフィ、急に現れないで。」

びっくりしたぁ。急に目の前にルフィが現れれば誰だって驚く。小さく謝ってまた同じ質問をなげかけてきた。見てたのかな。

「昼ごはんの話。」
「おれとも昼ごはんの話しよう!」
「どうしたの、ルフィ。」

なぜ、だ。ルフィがなにをしたいのかわからない。でも話しかけてきてくれたことが嬉しかった。

「なまえが笑ってたから。」
「え?」
「笑ってほしい。」

ルフィは私に笑ってほしいんだ。でもでも、どうしよう。笑えって言われて普通みんなは笑えるのかな。

「無理。」

どうして。私はこんなに冷たいの。ルフィがまた辛そうな顔をする。違うんだよ、ルフィ。好きなんだ笑いたいんだ。

「おれのこと嫌いなら、そう言ってくれ。」

それだけ言うとルフィはどこかに行ってしまった。嫌いなわけない。好き大好き大大大好きなのに。自分で自分を殴ってやりたくなった。

「なまえー?こんなとこでなにやってんだ?」

その場でボーッと立ち尽くしていると、目の前に小さな彼がチョッパーがやってきた。ほんとかわいいな。

「感情ってどうすれば表現できる?」

難しい質問だったかもしれない。みんな当たり前に感情を表現してるから、意識なんてしたことないはず。

「顔に出さなくても!思ったことを言えばいいんじゃないのか!?」

そんなにアッサリしたものなのか。楽しいときは楽しい、悲しいときは悲しいと言えばいいとチョッパーは言う。そうすると勝手に顔にも出てくるのかな。

「ありがとうチョッパー。」
「おう!」

きっと医務室へと行くんだろう、その足取りは小さくて可愛くて思わず抱きしめたくなるほど。

「小さくて、可愛い。」

そう口に出してみた。うーん、特にいつもと変わらないと思うんだけどなぁ。とりあえずルフィに謝ろう。また冷たいことを言ってしまうかもしれない。その時はまた何度でも謝ろう。キッチンか船首にいるであろうルフィのもとへと向かった。

「ルフィ。」

そう呼ぶとピクリと肩が動いた。謝れ、謝るんだ私!!

「ご、ご………」
「どーした?」
「ごめ………………………」

なんでたった三文字が言えないんだコノヤロー!!!と叫びたくなるほど言えない私。

「言いたい。」
「なにが言いたいんだ?」

ゆっくりと近づいてくるルフィをみて、下を向く。ダメだ、ダメだ。しっかりしろ。

「ダメダメダメ、全然ダメ。」
「なまえ?」
「名前呼ばないで。」

ドキドキしてしまうから。でもルフィはまた辛そうな顔。

「違う……………呼んで。」
「なまえ。」

そう名前を呼んで腕を掴んだルフィは私をグッと引き寄せる。目の前にはルフィの鍛えられた胸板があって、鼓動がどんどん速くなる。

「なまえは嘘つきだ。」
「え?」
「冷たいくせに、心臓すっげェ速い。」

ルフィが好きだと見透かされたみたいで、嫌になって目の前の胸板を必死に押して離れようとする。恥ずかしくて死ぬ!!

「ごめ、ん。ルフィ。」

やっと口に出せた言葉は少しタイミングが違う気がするけど、もうどうでもいいや。

「ほんとは……ずっと……………好き」

どうしてこんなにカタコトなんだ。本当に私はバカ野郎だよ。告白くらい素直に真っ直ぐ伝えたかった。

「…………え。なまえ、おれのこと嫌いなんじゃねェのか?」

ん?誰がルフィを嫌いって言った?好きって伝えたはずなんだけど。また私思ってもないこと言ってた?

「だから、好きなんだって。」

好きって気持ちが溢れてきて、自然にそう呟いていた。少し冷たい口調だけど、壊れてしまいそうになるほど好き。

「おれも。おれも好きだ。」

やっと笑った。辛い顔ばかりさせてしまっていたけれどやっと私の前で笑ってくれた。嬉しくて嬉しくて頬が緩む。

「!?、なまえ!笑った!」
「チョッパーの言うとおりだ。」
「ん?チョッパー?」

言葉で表すと顔にも表れるんだ。だからもっと積極的に言葉にしていこう!そう思った。

「嬉しい。楽しい。ルフィ。大好き。」

私の思ったことを全て並べるとこの四つだった。どれも私の素直な気持ち。顔を赤くするルフィにまた頬が緩んだ私はルフィに心底惚れている。



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