最初はただの暇潰しじゃった。

たまたま屋上でサボっていたら先客で名前が居て。気付いたらその柔らかそうな唇にキスして上に跨がっていた。名前は最初は抵抗していたが、すぐに俺を受け入れた。淫乱な女だ、と思った。


「お前よくここでサボっとるじゃろ?また会ったらセックスしちゃるき、また来んしゃいよ」


名前は少し微笑んで頷いた。

それから毎日のように名前は授業をサボっては屋上に来た。俺はほぼ毎日居座っとったから自然と名前と会う回数も増え、その度に屋上で淫行に及んだ。


「あっ、ん…、ああっ、仁王…!」

「名前…、」

「あっ、もっと名前、呼んで…」

「名前…、名前!」


俺らがヤる時には必ずと言っていいほど名前は俺に名前を呼ばせる。

名前が俺に惚れてるのなんて薄々気付いていた。だからこそ毎日屋上に来るのだろう。決して俺が愛の言葉を囁く事はないのに。


「に、お、もうイっちゃ…」

「ええよ、イきんしゃい。俺も、もう限界ぜよ…」


名前の大好きなクリトリスを弄ってやればもう即効。きゅう、とまんこが締まって精液が込み上げて来るのが分かる。


「ひぁ、ん、あっ、仁王、あああっ…!」

「ああっ、名前…!」


びゅる、びゅるとゴム越しに精子を吐き出した。
名前とヤる時は絶対生でなんてしない。名前との間に子供が出来たら困るから…というのは表向きで、実際は名前の体に負担をかけさせたくなかったからかもしれん。

俺がどんなに酷い事をしようと名前は笑ってありがとう、と言った。そして次の日もまた次の日も俺に抱かれに来た。
俺はそれを見て安心していたのかもしれない。名前は俺に惚れとる、俺がどんな事をしても名前は俺から離れられない、そう思っていた。


「名前、今日は他の女連れてきたんじゃ、一緒にヤってくれんか?」

「…うん」


俺の要求はどんどんエスカレートしていった。他の女と名前を一緒に抱く事もあったし、それを名前に見させて自慰させる事もあった。俺は益々安心する事が出来た。

名前はもう俺から離れられん…





そんなある日の事じゃった。いつも通り登校して授業を受けて、たまにサボって。そんないつも通りの光景に少し違和感を感じた。


「苗字、おはよ」

「…おはよ」

「お前今日はちゃんと来てるのな」

「たまには来ないとね、さすがに」

「なぁ、このチョコレート食う?俺が作ったんだぜ。天才的だろぃ?」

「何それ、私甘いもの駄目なんだ、ごめんね」

「じゃあ次は甘くないお菓子作ってきてやるから、ちゃんと食えよ?」

「何で私が」

「いいからいいから。約束な」


丸井が名前にちょっかいを出してるのを見かけた。名前には友達が居ないから話す相手なんて居ない。だからクラスの奴らも名前に話し掛けたりはしない。

丸井は元々面倒な事には首を突っ込まんし、名前みたいなタイプの女子と話すことなんてなかった。

なのに丸井は…

俺はすぐに気付いた、丸井が名前に惚れてる、と。



正直焦った。名前は俺のモンじゃき。丸井には絶対渡さないぜよ。


「は、あ、んっ…にお…!」

「名前、もっと腰動かしんしゃい」


いつものように名前を抱いていた。最中に屋上の扉が空いた事なんて後ろを向いててもすぐに分かった。そこから丸井が出てきた事も。丸井は咄嗟に隠れて俺と名前のセックスを見ていた。

丸井、しっかり見ときんしゃい。名前が俺のモンって事、しっかり分からせてやるぜよ。


「名前…、また明日な」

「うん…」


名前はもう最初みたいに笑ってはくれなくなった。俺に抱かれる度に苦しそうな、辛そうな顔をした。
それが見てられんくなって名前を置いて足早に屋上を出た。


「ブンちゃん、のぞき見なんて趣味悪いぜよ。」


なあ、丸井はこの後どうするんじゃ?名前を慰めてやるんか?俺みたいに名前を抱くんか…?

名前は、もう…





翌日、どれだけ待っても名前は屋上には来なかった。俺が教室に居なかったら何かと理由つけて授業を抜け出してはココへ来ていたのに。

下校時刻間際、帰ろうとしたら不意に扉が開いた。出てきたのは名前…じゃった。

正直今日はもう来ないと思っていた。いつものように俺が名前に向かって手招きしたが、名前は俺の元には来てくれず、俺と距離を取って話し始めた。


「ねぇ仁王、あのね、あたし…」

「…もう屋上には来ないつもりなんか?」

「うん…」

「タバコの匂いもしないぜよ。辞めたんか?」

「うん。辞めたよ。」

「名前…、俺は許してもらえんのじゃろうか?」

「許すも何も、何も怒ってないよ。ただ…私は、私を愛してくれる人と一緒に居る事にしたの」

「俺が愛してないって、いつ言った」


名前を抱きしめた。

ずっと好きじゃった。始めは遊びのつもりだったのが、どんどんハマっていったのは俺の方ぜよ。


「名前、お願いじゃ。丸井のとこに行かんで俺を…」

「ごめん、仁王」

「名前…」

「私、ブン太と一緒に居る事にしたから…。ずっと好きだったよ、仁王。ううん、多分これからも。でも幸せになりたいの。ごめんね…」


俺と一緒じゃ、幸せは掴めんって事か。

自業自得じゃな。名前を傷つけた罰じゃ。名前を大事にしてやれなかった…俺への。

でも名前、やっぱり離してなんてやれんよ。俺は名前を愛してるから。名前はずっと俺の女じゃ。



愛しの彼女を、俺達が初めてした場所でまた押し倒した。



愛しとうよ、名前
(また俺の傍で笑ってくれんかのう)





20110222

前作の「空だけが見ていた」の続きでやんす↑←あ
不器用な仁王たんと精一杯なブンちゃんの三角関係を書きたかったんです。終わり方微妙過ぎてごめんなさい。

いや、まだ終わらないかも…?




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