「総悟の奴、大丈夫だろうか」


近藤さんは不安げに眉を顰めた。


「大丈夫に決まってっだろ。」


土方さんも、そうは言ってるが表情は険しいままだった。

最近、沖田さんの体調は余り良くなかった。
よく咳き込む姿を見た。
大丈夫か、と尋ねれば決まって彼は「土方コノヤローに移すために風邪引きやした」と青い顔で言っていた。
でも先日、ついに沖田さんは倒れてしまった。

病名は、労咳。不治の病と恐れられている病気だ。

こんなに文明が発達しても、労咳は流行っている。
こういう時だけ、天人の持つ高度な文明だとか医学が欲しくなる。


「沖田さん、夕餉です。」


「要らねー」


障子越しに聞こえる彼の声にいつものような飄々さはなかった。掠れていて、少し憂いを含む声だった。


「入ります」


スー…と障子を開けば白装束を纏う沖田さんが体を起こしていた。
その顔は苦痛に歪む。


「寝てて構いませんのに」


「失礼だろィ」


「そう思いません。夕餉、食べて下さい。元気に、なって下さい。」


私はそう告げると、レンゲに粥を一口分よそった。
湯気と一緒に粥の香りが広がる。


「あーん」


沖田さんはわざと子供っぽく口を開けた。
だから、冷まさずに粥を口に放ってやった。


「………っ〜…」


彼が悶えるという珍しい姿に、やり過ぎたかな、と思ったのと、ざまーみろと思ったのは秘密だ。
私は彼に水を差し出した。
3杯程水を飲んで、落ち着いたのか、涙目のまま彼は「いつかやり返してやらァ」と指をさして豪語した。


「その意気です。早く元気になって、………その、苛めてもらわなくちゃ。」


「気持ち悪ィ」


「うるさい!!私だって、変だと思います。でも、ダメなんです。沖田さんがいないと、ダメなんです。」


真選組も、一番隊も、私も。
そう、もう崩壊のリズムは乱せない。
軽快に刻まれる崩壊のリズムを私には止められないのだ。


「あーん」


私が俯いて、唇を噛んでると沖田さんはまたわざと子供っぽく口を開けた。