小説 | ナノ



【LOST CHILDREN】
※ヒロインは子どもファイター設定


久しぶりに、乱闘の予定がない者が集まって森へと遊びにやってきた。
私は特に興味はなかったのだが、保護者のメンツが足りないからと姫たちに押し切られてしまった。まぁ、たまには修行を離れて息抜きするのも悪くない。

「大変!」
「?」
昼食を終えて間もなく、ゼルダが慌てた様子で私の所に走ってきた。何事かと顔を見ると、動揺が顕著に表れている。

「いったいどうしたんだ」
「なまえが…なまえの姿が見えなくなってしまったんです!」
「なに…?」
「ついさっきまでは確かにピカチュウたちと一緒に遊んでいたのですが…少し目を離した間に…!」
自分なりに必死に探していたのだろう、説明しているゼルダの息が上がっている。

「森の奥に行ったのかもしれないな。あそこは危険だ、私が探してこよう」
「お願いします…私たちもこの辺りをみんなで探してみますので」
「わかった。見つけたらすぐに戻る」
ゼルダと別れ、森の奥へと進むことにした。この奥には綺麗な湖や花があったり、珍しい動物がいたりするのだが、モンスターが出ることも少なくない。

「波導を使うか…」
草を掻き分けながら、波導の力でなまえの存在を感知することに集中することにした。すると、私の位置からかなり離れた場所にかすかな反応があった。

「だいぶ遠いな」
それなりの距離を覚悟して、足を早める。 無事だと良いんだが…。


しばらく走り続けていたら、一気に開けた場所に出た。とても澄んだ泉だ。たくさんの動物たちに囲まれるようにして、探していた人物がそこには居た。

「なまえ!」
「あ、ルカリオー」
声を掛けると、動物たちの頭も同時に私の方を振り向く。普段なかなか見ない動物ばかりだ。
なまえはというと、特に驚いた様子もなく私を見て笑って手を振っている。

「お前、こんな所で何をしているんだ」
「この子がね、お母さんとはぐれて困ってたみたいだから、一緒に探してたの」
「この子…?」
見れば、なまえの目の前で小鹿が親に甘えて擦り寄っている。動物と心を通わせることができるなまえは、放っておくことなど出来なかったのだろう。

「しかし、迷子を構って自分まで迷子になっていては元も子もないだろう」
「え、あたしって迷子なの?」
「帰るぞ。皆、心配している」
「そっか…。うん、えーっと…」
皆の場所に帰ろうと促しても、なまえはその場を動く素振りを見せない。
不思議に思って見詰めると、気まずそうな顔で何か言葉を探しているようだ。嘘を吐くのが世界で一番苦手ななまえのその様子で、何となくわかった。

「何処だ」
「…え?」
「何処を怪我したんだ」
「えっと……あ、足…ひねっちゃって…」
近くにしゃがんで問い詰めれば、観念したのか泣きそうな声が返ってくる。高い所から飛び下りた時に転びそうになった小鹿を庇ったらしい…なまえらしいというか、なんというか…。

「ほら」
「え?」
「早く乗らないと置いていくぞ」
「あ、うん…!」
背中を向けて乗るように促したら、おずおずとなまえは私に負ぶさる格好になった。見てみると、その足首が少し腫れている。戻ったら湿布を貼ってやらねばな。

「……ルカリオ」
「なんだ?」
「…怒ってる…?」
「少しな」
歩き出した私の背中から、か細い声が聞こえてくる。いつもの元気と笑顔は成りを潜め、しょんぼりとした様子だ。
私が少し語気を強めると、なまえは黙りこんでしまった。

「だが、それ以上に無事で良かったと思っている」
「……ごめんね」
「次からは一人でフラフラするのは禁止だ。何処か行きたいなら言うと良い。私が一緒に行こう」
「…うん!」
言いたいことを最後まで口にしたら、なまえの声が格段に明るくなる。首に回された腕にギュッと力がこもって、背中に頭を擦り付けられる。

「ねぇねぇルカリオ!あそこにウサギがいるよ!」
「今はダメだ」
「えぇー…」
「帰ってその足を手当てしないとな」
「うん…。じゃあ、今度また来ようね」
「ああ」
いつの間にかすっかり普段通りの声に戻ったなまえを窘め、皆の所へと足を進める。ゼルダはなまえの怪我を見て発狂しそうだな…。
デートだね!などという言葉を聞いて私の胸が高鳴ったのは、また別の話だ。




13.09.28
1800番キリリク「迷子のヒロインを探すルカリオ夢」
凄く楽しく書けました(^-^)


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