1/4
手を、引かれる。私を繋ぐ大きなその手は温かくて、少しゴツゴツしていて、そして私の手を強く握っていたからほんの少しだけ、痛かった。 「怖いの?」 そう、私が聞いたらワビスケは、シシシ、って、いつもみたいな変な笑い方をして、ちげーよ。と私の頭をくしゃくしゃにする。髪はボサボサになるけれど、これはこれで安心するから、すきだ。 ニホンの夏は暑くて日差しが痛くて、湿ってて、べとべとするのが気持ち悪い。ワビスケに貰ったタオルで汗を拭きながら、あれ、なに?と背丈の高い草が生えている四角を差せば、田んぼだよ。と帰ってきた。草はイネと言って、前に図鑑で見たのだけれど、ライスの出来る前なんだそうだ。白い艶々の粒々があんなものからできるから不思議だ。 「雲、おおきいねえ。」 上を見たら、真っ白でふわふわのもふもふした大きい雲があって、目を細めると、こっちは何もねえからな。とワビスケが懐かしそうに言った。ワビスケは、春と夏と冬、年に3回帰っているのに、それでもアメリカにいると長く感じるらしい。家っていうは、そういうものなんだ。って向こうのドキュメンタリーテレビで言っていた。 「ニュードーグモ?」 「あぁ。」 「食べたらおいしーのかな。」 「塵と水ばっかで美味くねーよ。」 私には、家族はワビスケしかいないから、あんまりピンと来ないけど、懐かしそうなのは、これから、ワビスケの本当のお家に行くからだってくらいは感付いた。 「腹でも空いたのか?」 「うん。ご飯、私の分、仲間でも家族でもないけどもらえるかなぁ?」 「バカ、ここがスラムに見えるか?」 「ううん。」 まさか。と言ったら、ワビスケは一瞬考える素振りをして、あのな、と私と繋がっていない方の手で首の後ろを掻く。口を開いたり閉じたりしているのが、魚みたいで少し笑えた。 「 今日からお前は俺の子になったんだよ吹。」 「……、ワビスケが私を生んでないのに?」 「一々細けーガキだなお前。」 「へへ、パパからの遺伝だよ。」 ニホンのナリタから、ニホンにしかないシンカンセンと電車を乗り継いでやってきたナガノのウエダ。そこの市役所からワビスケのお家に向かう畦道、いらねーとこばっか似ちまってんなぁ。とワビスケが嬉しくなさそうに言うもんだから、そうかなぁ。と首を傾げてやった。 「ワビスケと似てるとこは全部私の長所!」 真顔で指を突き付けると、きょとんとしたワビスケは、そりゃありがてえ。って笑った。 |