行こうとしてる部屋から、
お菓子を作ってるらしい
いい匂いがしてる。

レイナはノックもせずに
1ミリの躊躇もなく
その部屋のドアを開けた。

「何焼いてるの〜?」

「うわっ」

叫び声を上げて、部屋の主が
何故か慌てふためく。

「ノックくらいしろよ!
いっつもレイナは勝手に…」

「小さな事にこだわってちゃ
いい男になれないよ、ヨハン」

「う、うるさいな!
レイナには関係ないだろ」

言い返すヨハンの顔は赤い。

「ぶぶっ!冗談だってば。
赤くなっちゃって、
ヨハンたら可愛いー♪」

「からかうなよ!!」

ほんとヨハンは
からかいがいがある。

…すぐ赤くなるし。

「で、何焼いてんの?」

「秘密!!」

ヨハンはそう言ってそそくさ
ドアを閉めてしまった。

閉め出されたレイナは
頬を膨らして
ドアノブに手をかけるが
鍵がかかってて開かない。

「何だって閉め出すのさ…」

聞こえないであろう、
ドアの向こうの彼氏に呟く。

もちろん返事はない。

ふてくされたレイナは
ドアの傍に座り込んだ。