05




「おやおや、揃いも揃って…」



骸と呼ばれた人はクスクス笑うと、持っていたファイルを掲げて言った。






「彼女は普通の一般人ですよ」

「なら…なんであんなところに、」

「それは、彼女も『商品』の一つだったからです」

『しょ、うひん…』





ああ、やっぱり……





「やっぱり…売られそうだったんだな」

「ディーノさん!」





なまえの気持ちを代弁したのは、金髪の男の人。
(それにしても、本当にいつから居たんですか。まったく気が付かなかった…)




というか、この人…





ちらつく金髪には、見覚えがあった。
あの倉庫で意識を飛ばす寸前に見た金色は、確かにこの色だったハズ…

印象に残っていた情報が『金髪』ということしかなかったなまえは恐る恐る聞いてみた。



『あ、あの、私を…助けて、くださった方、ですよね?』

「ん、まーな。…あん時のこと、気にしない方がいいぜ」






眩しい笑顔が一転、真剣な面持ちで頭を撫でられる。
とても照れ臭い…赤ちゃんといい、私の頭は撫でやすいんだろうか…

それ以前に、あの時『正義のヒーロー』やら『王子様』やらと考えていたのを思い出したのと、本当に王子様みたいだなと思ったなまえは、顔を羞恥の色に染める他なかった。




「目が覚めたみたいで、安心したぜ」

『そういえば、私…どのくらい寝てたんでしょうか?』

「ざっと3日ってとこだな」

『み、3日!?どうしよう、仕事「なまえ、それはもう意味のないことですよ」っぇ…?』

「どういうことだ、骸?」





ほんわかした雰囲気と笑顔に安心したのも束の間。
自分の寝ていた時間の長さ、突然の名前呼び、そして……






『意味が、ないって…』

「みょうじなまえさん。今の貴女は、存在しないことになっている」






突きつけられた事実に言葉を失った
それは、あまりに理解しがたい…
でも、心のどこかで納得していた
.

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