四つ子とお姉ちゃんと
ある穏やかな日曜日。
リビングで寛ぐ末っ子ユーゴのもとに、些か飽きれた様子の姉、なまえが迫ってきた。
『ちょっとユーゴ!』
「ん?どうした、なまえ姉ちゃん?」
『どうした、はコッチの台詞!これ、何かな?』
「んん?……げっ」
これ、と言われて見たものに、ユーゴは思わず悲鳴を上げていた。
なまえの手に掲げられていたのは、数冊にも及ぶ学習ドリルだったのだ。
とはいえ、それはもう使われることの無い…古い学習ドリル。
それだけならば問題は無いのだが…このドリル、途中から白紙なのだ。
「ユーゴお前、そんなに溜めてたのか…」
「本当にバカだよねぇ」
ユーゴが取るよりも早くドリルを取り、パラパラと中を確認したのは、同じくリビングで寛いでいた三男の遊矢と次男ユーリである。
遊矢はある意味驚き、ユーリはなまえ同様呆れた様子。
『これ終わるまで、デュエル禁止ね』
「そりゃ無いぜなまえ姉ちゃん!」
「自業自得だろう」
なまえよりやや遅れてリビングに入ってきた長男ユートこそ、ユーゴのために溜めた学習ドリルを発掘した張本人である。
なまえと共に掃除をしていた時、彼が明日古紙回収があることを思い出したことが、そもそもの発端だった。
この際、いらない雑誌の他に、もう見ることのないであろう教材類も出してしまおうと考えていたのだが……ユーゴの机で、それはサルベージされてしまった。
ごちゃごちゃとした、教材の墓場と化した机から、引っ張り出した気分はまるで《幻影騎士団クラックヘルム》。
まさかの白紙のページに、自身(精神面)がコストとしてゴリゴリ削られていった。
ライフゼロ寸前のユートに気付いたなまえは、その原因を早急に引き離し、ユーゴ本人に直接突き出すと、白紙を埋めるように言い渡したのだ。
ここで捨てないのが、お姉ちゃんの使命!…と、思っていたのだが…
「なまえ姉ちゃん…」
『っ、』
いかんせんこの姉、弟に滅法弱い。
目を潤ませ、シュンとした様子。いつもハツラツとした姿からは想像出来ない声色で名前を呼ばれてしまっては…捨てられた子犬に縋られている光景がなまえには見えている。
…というより、なまえにだけ見えている。
『……一冊終わったら、一回デュエルしていいよ』
「いよっしゃあ!直ぐ終わらせてくる!」
ユーリと遊矢の手から学習ドリルをひったくると、ユーゴは駆け足でリビングを飛び出していった。
その背を三人の兄は呆れながら見送る。
「…ユーゴって本当にバカで単純。なまえ姉さんは甘いし」
「ま、まぁ、それは二人のいい所でもあるし…」
「なまえ姉さんのフォローは兎も角、ユーゴのフォローまでする必要は無いよ遊矢」
「ユーリの言う通りだとは思うが……それより、あいつ一人で終わるのか?」
「「……あ」」
予想通り、兄三人に泣き付くまで、あと……。
End
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我が家での一面より。
タイトルのまま。
2017.5.11
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