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 母親は病気で死んだ。
 父親は僕たちを残してどこかへ消えた。
 この夏、弟と僕は、きっと死ぬだろう。


〈きらきらプラネタリウム〉

 父親がいなくなったのは夏休みに入る少し前の事だった。普段から育児放棄して酒浸りのダメ親父で、僕たちに手を上げないことが唯一の救いだった。家を空けることも何度かあったが、翌日には何事もなく帰ってくるから、今回もそうなのかと思っていた。
 父親が帰らなくなって2、3日経って、僕はようやく不安を覚えた。真っ先に思ったのは食事の心配だ。今はまだ冷蔵庫に食べ物もあるし、米も残っている。昼も学校の給食がある。
 いざとなったら、貯めていたお小遣いを使ったって構わない。
 でも、いつまで?小学生の弟と、中学生の僕とで、いつまでそんな生活を続けられると言うのだろう。
 父親もすぐ帰ってくるさと楽観視しても、すぐに、でも……とか、まさか……と言った想像が頭に浮かぶ。弟の手前、大丈夫だと口にするが、本当は不安しかなかった。

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