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「上手だ、アカセ」
「ん、あ、はあ……」
 先を舐められ、穴を抉られる。こみ上げるものを感じてそのまま身体を弛緩させると、何物にも変え難い解放感は快楽的だ。
 その日僕がシエンの手のひらに吐き出したのは、黄色味の強い淡い緑色の宝石だった。
 この前に作ったのは濃い緑のエメラルドグリーン色だった。同じ混ぜ色でも、今回出来たのは新緑のような柔らかい緑で、やり方によって違いがあるのだと知る。
 とは言え、ちょっと恥ずかしいのには変わりがない。結局僕が排出しなければならないわけだし。
 僕がそんな恥ずかしさに悶えてベッドでごろごろしていると、シエンが後ろから抱きすくめてちゅうちゅうとついばむようなキスをした。
「ん、あ、シエン……?」
  優しくて甘いキスは僕を惑わせる。シエンにとって僕は宝石を作るための贄でしかないだろうに、僕はそれ以上の感情を抱いてしまいそうだった。
「そろそろ発情期が来そうだ」
「えっ、発情期って千年に一度なんじゃないの?」
「そう、今がその千年に一度」
「そ、そうなんだ」
 なんて都合の良い話。でも、だからこんなにキスをしてくれるのかな。
 身体中に降り注ぐキスも、優しい瞳も、そのせいなのかもしれない。
「ドラゴンに発情期がくると、その体液は全て、少しだけ変化する」
「そうなんだ? ちょっと価値が上がるのかな」
「それもある」
 いつもの無表情が少し微笑んで見えた。僕もいつのまにか、シエンのカネ主義が移っていたらしい。
「口を開けて、アカセ」
 言われるまま口を開く。シエンの指が唇を撫でて、顎を固定した。
「ん……っふ、あ……」
 くちゅくちゅと音を立てて舌を絡め合う。喉を通る二人分の唾液はもう慣れたけれど、今日のは少し甘くて重い気がした。
 クチュ、と名残を残して唇が離れていく。
 情熱的なキスに、僕の心臓はいつもより速い。
「発情期のドラゴンの体液は全て、媚薬の効果をもたらす」
「え……」
 どういう意味だ?
 理解できない僕の唇を、シエンの指がふに、と押した。
 ただそれだけなのに、僕は身体の奥が熱くなってくるのを感じた。
 それはきっと、始まりに過ぎない。

to be continued...


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