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「ダメじゃないよ」
 衛士さんの腕が優しく、力強く僕を抱き寄せる。とくん、とくん。衛士さんの、いつもの鼓動が肌を伝って感じる。
 僕は目頭が熱くなって、涙が溢れてくるのを感じた。
 夢でも幻でもない衛士さんがそこにいる事を確かめる為に見つめると、衛士さんの顔がそっと近付く。
 唇に唇が触れて、僕たちは息継ぎも忘れて、静かにキスをした。
 触れて重ねるだけの、愛おしさを口移しで与える、優しい優しいキスだった。



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