プロローグ


2月28日

高校一年、冬


「・・・・・・ごめんな・・・」


少年の頬に白い花が落ちる。

それは少年の体温であっと言う間に溶けて、涙と混ざり雫となって頬を伝う。

冷たく寂しく降り積もり、辺りを覆うそれは、少年の悲しさを一層させる。


その年はなかなか雪が降らず、クリスマスもお正月も昨今より寒くなく過ごしやすかった。

しかし今日は街も一面銀世界で、初雪にはしゃぐ子供達や車を動かすため除雪をする主婦、雪のため電車が遅れ苛立ち

を隠せないサラリーマンなどと昨日とは全く別の世界に来ているような気分になる。

「なんで今日に限って」皆口々にそう言う。

しかし、少年だけは違った。

誰も居ない静寂を保つ墓地でただ、ただ言葉を紡ぐ

「・・・ごめん・・・守れなくてごめん・・・・・・弱くてごめん・・・ごめんっ・・・」

「神谷」と記された墓前で立ち尽くす少年はやがて力尽きるかのようにその場に座り込み、泣くのをやめ零れていた涙を拭

う。

血が滲むほどきつく拳を握り締め、少年は胸に誓う



「ちー・・・俺は、真面目に生きるよ・・・そんで、お前が成りたかったものに絶対なってやる、だからお前は――」




2月28日

少年――花岸飛鳥16歳の誕生日。

降りしきる雪の中で、決意の眼差しを姿亡き親友――神谷千広の墓前に笑顔と共に向ける。



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